120 / 262
第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編
120.『ガイド』 ブラン・ゴードン
しおりを挟むダリウスはブランに背中を向け、フィールドへと上がっていく。
「あぁ、ダリウス……どうして……こんなに尽くしたのに……教えてくれ、マーラ。僕はどこで間違えた……」
僕には案内人のとしての才能がある。
そう思い始めたのは数年前クラスが上がり、ガイドになってすぐのことだった。
「ブランさん。この前はありがとう! 助かったよ」
「いえ、僕はただマップの説明をしただけで……」
「いやいや細かく色々説明してくれたからダンジョン探索がはかどった」
「それは良かったです! またのご利用お待ちしてます!」
そう言いながら俺は案内所を後にする冒険者に笑顔で手を振った。
「ふぅ、今日もハードだったなぁ」
「いい調子じゃない。ブラン」
「マーラ、お前が言うな。同僚の中では同行の依頼数トップじゃないか」
「私は戦闘技術、ブランはここでのマップ解析や案内、得意なことが違うだけだよ。そういうブランは受付の中じゃトップじゃない」
「そうかもな。だが俺も今絶賛特訓中だ。そのうちこの案内所でトップを取ってやるからな」
「お、言ったなー? そういうのはまず私に勝ってから言ってもらおうじゃない」
「うるさい! これからだよこれから。相変わらず女のくせに力だけは怪力並みだな」
他にも同僚がいたが、このマーラとは村人時代からの古い付き合い、幼馴染のようなものだった。
「「……」」
「ねぇ、ブランこのまま頑張ってたら『スーパーアドバイザー』になれるかな」
「マーラ、あほなお前は分からないが俺は必ずなるぞ」
「あ、またアホって言った!」
「大丈夫、なれるさ、必ず。いや二人でなるんだ。『スーパーアドバイザー』に」
「えぇ。そうね」
「そして二人で……」
「え?」
「あ、な、何でもない……」
「どうしたの? ブラン。顔が赤くなってるわよ?」
「な、なってない! 仕事に戻る!」
「なにー? 私と二人で何だってー?」
「にやにやしながら近づくな! いいからお前も早く仕事に戻れ! 一時間後また同行なんだろ」
「もー分かってるよぉ。じゃ、また帰りにね」
「あぁ」
ガイドになってからは自分自身の仕事の幅が広がり、充実した生活を送ることができていた。マーラとの時間もかけがえのないものとなっていた。
けれど、そんな日々も長くは続かなかった。
「なぁ兄ちゃん。マップの説明はよく分かったが最後なんて言った?」
うわ、こういうチンピラタイプは苦手なんだよな。
「あのですから、非常に申し上げにくいのですが、冒険者様のパーティーの総合レベルを考慮すると、このダンジョンの推奨レベルには到達していません。ですので、このダンジョンの探索は時期をずらして別の場所でレベルを上げてから……」
「あ? 俺たちが弱いって言いたいのか?」
机を叩くなよ……壊れるだろ。
「あの、そういうわけではなくて……こちらとしましては冒険者様の命を第一に考えた結果でのご案内となっておりますので……」
「ちっ、話の分からねぇ兄ちゃんだな。おい、そこの嬢ちゃん」
「え、私ですか?」
「マーラ!」
「あんた、最近巷で有名な戦闘技術に定評のあるマーラさんだろ」
「は、はぁ」
マーラ、帰ってきてたのか。
「金はある。だからあの嬢ちゃんの同行を希望する」
「な、そ、そんないきなり!?」
こいつら正気か!
「ブラン。私は大丈夫です!」
「でも、このダンジョンはいくらマーラが強くても……」
「うん。何とかなるわよ。ね、おじさんたち?」
「あぁ、俺らにもちゃんと作戦があってだな!」
そんなことさっきまでは言ってなかったじゃないか。
「ほら、冒険者様を信じましょ。思慮深いのはいいことだけど、ブランのは良くない癖よ」
お前のその根拠もないのに信用するところが心配なんだよ。
まぁ、でも俺も少しばかり警戒しすぎていた。マーラみたいに俺も冒険者をもう少し信用してもいいのかな。
「……わかりました。ではマーラの同行ですとこのお値段になります」
「流石兄ちゃん。助かるぜぇ」
「ちょっと、マーラ。こっちにこい」
「え、ブラン? ちょっと腕引っ張らないで」
俺は一度マーラと裏の控室で話をした。
「許可は出したが正直危険だ。明らかにダンジョンのレベル設定を彼らは間違えている」
「うん。でも私を入れたら大体そのくらいになるんでしょ? だからあなたも許可を出した」
「そうだけど……それはあくまでも彼らが実力をしっかりと発揮できた場合の話だ。あいつらがそういう人間には見えない」
「ふふ。心配してくれるのは嬉しいけど。ブラン。私も案内人なのよ。どうしてあなたが許可を出すのかしら?」
「……それは……」
「ん?」
このタイミングは絶対に違うのに……抑えろ、抑えろ俺……。
「お前が俺にとって一番大切な人だからだ! あっ」
「え……今なんて……」
「い、一回で分かれ! 二回目は言わない!」
「えーなんでよーすごく嬉しいのに……」
「え、ちょ、マーラ?」
マーラは恥ずかしくて背を向けた俺の背中に抱き着いてきた。
「帰ってきたらまた聞かせてね」
「……あぁ。約束だ。絶対に帰ってくるんだぞ」
「うん。ありがとう。行ってくるよ」
マーラはそこからすぐに武装をし直し、案内所の出口に立った。
「準備はできたかい嬢ちゃん」
「えぇ、今日中には終わるダンジョンです。張り切って参りましょう!」
「じゃあな兄ちゃん。すぐ帰ってくるぜ」
「……行ってらっしゃいませ」
「ブラン。仕事片付けて待っててね。すぐ戻るから!」
相変わらずいい笑顔をしてるな。マーラ。
「あぁ!」
しかし、俺が大好きだったその笑顔を見たのはその日が最後だった。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる