村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編

120.『ガイド』 ブラン・ゴードン

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 ダリウスはブランに背中を向け、フィールドへと上がっていく。

「あぁ、ダリウス……どうして……こんなに尽くしたのに……教えてくれ、マーラ。僕はどこで間違えた……」




 僕には案内人のとしての才能がある。

 そう思い始めたのは数年前クラスが上がり、ガイドになってすぐのことだった。

「ブランさん。この前はありがとう! 助かったよ」

「いえ、僕はただマップの説明をしただけで……」

「いやいや細かく色々説明してくれたからダンジョン探索がはかどった」

「それは良かったです! またのご利用お待ちしてます!」

 そう言いながら俺は案内所を後にする冒険者に笑顔で手を振った。

「ふぅ、今日もハードだったなぁ」

「いい調子じゃない。ブラン」

「マーラ、お前が言うな。同僚の中では同行の依頼数トップじゃないか」

「私は戦闘技術、ブランはここでのマップ解析や案内、得意なことが違うだけだよ。そういうブランは受付の中じゃトップじゃない」

「そうかもな。だが俺も今絶賛特訓中だ。そのうちこの案内所でトップを取ってやるからな」

「お、言ったなー? そういうのはまず私に勝ってから言ってもらおうじゃない」

「うるさい! これからだよこれから。相変わらず女のくせに力だけは怪力並みだな」

 他にも同僚がいたが、このマーラとは村人時代からの古い付き合い、幼馴染のようなものだった。

「「……」」


「ねぇ、ブランこのまま頑張ってたら『スーパーアドバイザー』になれるかな」

「マーラ、あほなお前は分からないが俺は必ずなるぞ」

「あ、またアホって言った!」


「大丈夫、なれるさ、必ず。いや二人でなるんだ。『スーパーアドバイザー』に」

「えぇ。そうね」

「そして二人で……」

「え?」

「あ、な、何でもない……」

「どうしたの? ブラン。顔が赤くなってるわよ?」

「な、なってない! 仕事に戻る!」

「なにー? 私と二人で何だってー?」

「にやにやしながら近づくな! いいからお前も早く仕事に戻れ! 一時間後また同行なんだろ」

「もー分かってるよぉ。じゃ、また帰りにね」

「あぁ」

 ガイドになってからは自分自身の仕事の幅が広がり、充実した生活を送ることができていた。マーラとの時間もかけがえのないものとなっていた。


 けれど、そんな日々も長くは続かなかった。

「なぁ兄ちゃん。マップの説明はよく分かったが最後なんて言った?」

 うわ、こういうチンピラタイプは苦手なんだよな。

「あのですから、非常に申し上げにくいのですが、冒険者様のパーティーの総合レベルを考慮すると、このダンジョンの推奨レベルには到達していません。ですので、このダンジョンの探索は時期をずらして別の場所でレベルを上げてから……」

「あ? 俺たちが弱いって言いたいのか?」

 机を叩くなよ……壊れるだろ。

「あの、そういうわけではなくて……こちらとしましては冒険者様の命を第一に考えた結果でのご案内となっておりますので……」

「ちっ、話の分からねぇ兄ちゃんだな。おい、そこの嬢ちゃん」

「え、私ですか?」

「マーラ!」

「あんた、最近巷で有名な戦闘技術に定評のあるマーラさんだろ」

「は、はぁ」

 マーラ、帰ってきてたのか。

「金はある。だからあの嬢ちゃんの同行を希望する」

「な、そ、そんないきなり!?」

 こいつら正気か!

「ブラン。私は大丈夫です!」

「でも、このダンジョンはいくらマーラが強くても……」

「うん。何とかなるわよ。ね、おじさんたち?」

「あぁ、俺らにもちゃんと作戦があってだな!」

 そんなことさっきまでは言ってなかったじゃないか。

「ほら、冒険者様を信じましょ。思慮深いのはいいことだけど、ブランのは良くない癖よ」

 お前のその根拠もないのに信用するところが心配なんだよ。
 まぁ、でも俺も少しばかり警戒しすぎていた。マーラみたいに俺も冒険者をもう少し信用してもいいのかな。

「……わかりました。ではマーラの同行ですとこのお値段になります」

「流石兄ちゃん。助かるぜぇ」



「ちょっと、マーラ。こっちにこい」

「え、ブラン? ちょっと腕引っ張らないで」

 俺は一度マーラと裏の控室で話をした。

「許可は出したが正直危険だ。明らかにダンジョンのレベル設定を彼らは間違えている」

「うん。でも私を入れたら大体そのくらいになるんでしょ? だからあなたも許可を出した」

「そうだけど……それはあくまでも彼らが実力をしっかりと発揮できた場合の話だ。あいつらがそういう人間には見えない」

「ふふ。心配してくれるのは嬉しいけど。ブラン。私も案内人なのよ。どうしてあなたが許可を出すのかしら?」

「……それは……」

「ん?」

 このタイミングは絶対に違うのに……抑えろ、抑えろ俺……。

「お前が俺にとって一番大切な人だからだ! あっ」

「え……今なんて……」

「い、一回で分かれ! 二回目は言わない!」

「えーなんでよーすごく嬉しいのに……」

「え、ちょ、マーラ?」

 マーラは恥ずかしくて背を向けた俺の背中に抱き着いてきた。

「帰ってきたらまた聞かせてね」

「……あぁ。約束だ。絶対に帰ってくるんだぞ」

「うん。ありがとう。行ってくるよ」

 マーラはそこからすぐに武装をし直し、案内所の出口に立った。


「準備はできたかい嬢ちゃん」

「えぇ、今日中には終わるダンジョンです。張り切って参りましょう!」

「じゃあな兄ちゃん。すぐ帰ってくるぜ」

「……行ってらっしゃいませ」

「ブラン。仕事片付けて待っててね。すぐ戻るから!」

 相変わらずいい笑顔をしてるな。マーラ。

「あぁ!」

 しかし、俺が大好きだったその笑顔を見たのはその日が最後だった。
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