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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編
126.兄弟
しおりを挟む『準決勝第二試合勝者、ナヴィ、サテラペア!』
「やっぱり決勝の相手はサテラになったな」
「はい。相手にとって不足無しです」
救護室のモニターで試合を観戦していたケビンとナターシャ。
「それにしても最後のあの技、すごかったですね」
「あぁ、見たことない技だ、それにこれは難しいことになったぞ……」
「難しいこと?」
「サテラのあの技は最後の大技が主の能力ではない、多分本来の能力はあの半球状になっている風のフィールドの時だ」
「あ、それってつまり、あたし達はサテラの能力のほとんどを知らない状態で決勝戦に臨むってことでしょうか……?」
「その通りだ、おまけにこっちはロイとの戦闘でほとんど手の内を晒してしまった」
「確かに、<バーサーク>もかなり深いところまで見せてしまいましたからね」
額に汗をかくケビンに対しナターシャの口角は上がっていた。
「お前なんで笑ってるんだ?」
「いえ、何となくです。自分でもよく分からないんですけど、決勝の舞台で、それもサテラと戦えるなんて、体がうずうずしていてたってもいられません……」
「それは武者震いだな。でも今日は安静にしておけ。明日からまた特訓だ」
「はい! ケビンさん! ってそれにしてもあんな攻撃直で受けて大丈夫だったのかしらダリウス」
「う、うぅ、サテラ……? 僕、負けたのか……」
「そうよ『今日は』ね」
サテラの攻撃を受け意識が朦朧としていたダリウスの前に手が差し伸べられていた。
「サテラ……」
ダリウスはサテラの手を掴み起き上がる。
「正直今日何度負けるかと思ったか。ダリウスあなたおっかないわよ」
「いやいや、最後にあんな奥の手見せたサテラが言うか」
「あはは、それもそうね」
「サテラ、次は負けない。俺はこの武器でもっと強くなる」
「えぇ、私だってもっともっと強くなるんだから」
繋いだままの二人の手に力が入り、差し伸べられた手とそれを掴んだ手は自然と固い握手へと変わっていった。
サテラはそのままナヴィに笑顔で手を振った。
「ナヴィさーん!」
「サテラちゃん! おめでとう!」
ナヴィもそれに手を振り返す。その後観客席にいたハンナやエンフィーにも手を振ろうとしたナヴィは何かを見つけた。
「ん? あの姿、というかあのコートどこかで……」
気のせいかしら……。
「ナヴィさん」
「うわっ! サテラちゃん!? ちょっと、近くで見ると傷だらけなのがよく分かる……早く救護室に行くよ」
「あ、そういえばいたたた、アドレナリンが出ててさっきまでほとんど痛みを感じてなかったみたいです」
フィールドから降り出口へと向かうサテラとナヴィ。その姿をダリウスはただただ見つめていた。
「サテラとナヴィさん。いいペアだったな。僕も戻ろう……あれ、ブランさんがいない……? どこに行ったんだろ」
その頃ブランはダリウスをフィールドに置いて先に控室へ戻ろうと廊下を歩いていた。
「君がブラン・ゴードンだね。先ほどの試合を見せてもらったよ」
「……誰だ 角に隠れてないで出てこい」
「あぁ、すまなかったね」
一人の男が曲がり角から姿を現した。
「お前は……」
セミロングのブラウンの髪、白銀のコート。鋭い眼光。そうか……。
「勇者テリウス……」
「勇者はやめてくれ、俺もただの冒険者だ」
「なぜ俺の前に来た」
神妙な面持ちでテリウスを見つめるブラン。
「弟が世話になったから、その礼をと思ってな」
「は……礼だと」
こいつは馬鹿か、俺がダリウスにどれだけの仕打ちをしたのかわかっているのか……?
「あぁ、礼だ。ブラン、君がダリウスにどんなことをしたのかは大方知っている。ダリウスの試合前の傷だらけの姿を見ていればな」
ちっ。やはり知られていたか。
「その腹いせで俺をここで殺そうと?」
この距離なら俺がテリウスを殺せる。こいつの大剣はこんな狭い廊下で振るうことはできないからな。あいつが大剣に手を掛けた瞬間、俺の腰に見えないように差している短刀でお前の胸を貫いてやる。
ブランは左腰に手を当てた。
「何をしている。そんなに殺気立って。誰も君を殺そうなんて思ってないよ。さっきから言ってるだろ。礼だって」
「だからその礼が俺を殺す……は、お前何してるんだ」
なんでこいつ頭下げてやがる。
「弟を強くしてくれてありがとう」
「……は、お前何言ってんだ」
「君のしたことは分かってる。けど、多分それはダリウスが強くなりたいと願ったからだ。君がそのために全身全霊を尽くしてダリウスのサポートをしてくれていたんだろ?」
こいつ、本当に勇者か、お人よしにもほどがある……。
「現にダリウスは君のおかげで見違えるほど強くなった」
「お前……馬鹿じゃねぇのか」
「きっと君はパートナーとなってから生活の全てをダリウスに捧げてくれたんだろ。ダリウスの戦いからそれが組み取れた」
なんで。んなわけねぇだろ。俺がダリウスに……なんて。
「だから、ダリウスを強くしてくれてありがとう。そして願わくば、君のその非凡な才能を正しく使ってくれるのであれば、これからもダリウスをよろしく頼む……」
「お前、本当に馬鹿じゃねぇのか……なんで」
なんで俺泣いてんだ……。
「てめぇが……、てめぇがちゃんと見ねぇから。ダリウスはこんなことになったんだろ!」
「あぁその通りだ。すまない」
「これからはちゃんと弟を見てやれ、手伝うかどうかはダリウス次第だ」
「……あぁ」
マーラ。愚かな俺はもう一度案内人として再起できるのだろうか。もしそのチャンスがもらえるなら、俺はお前みたいに『冒険者に寄り添った案内人』になれるようにやってみようと思う。
もう少し、もう少しだけ上で見ててくれ。マーラ。
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