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第九章 王都公認 案内人適性試験 最終試験 準決勝編
127.ブランとダリウス
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「ということで、決勝は明後日の正午、十二時からになります。何か質問はありますか?」
サテラとダリウスの試合が終了し一時間、決勝進出した案内人のナヴィとケビンが執務室に呼び出され、スーザンからトーナメント決勝戦の説明を受けていた。
「いえ、私は」
「俺も大丈夫だ」
「ありがとうございます。理事長からは何かありますでしょうか」
「あぁ」
スーザンの横で机に肘をついて口の前で手を組んでいたブレビンスが、話始める。
「まずナヴィさん。息子のことでは迷惑をかけてしまったね」
「ブレビンスさん。いえ、スーザンさんからの話を聞いてああなってしまうのも少し納得しましたし……それに、私は特に何も……」
「ふふ、まぁそう思ってるのならそれでいい。とにかくあいつの父親として礼を言わせてくれありがとう」
「はい」
ブレビンスの真剣な表情から発せられる感謝の言葉をナヴィはあまり理解できずに飲み込んだ。
「ではお二方とも、改めて決勝進出おめでとう。今年の準決勝はレベルが高くどちらの試合もとても見ごたえがあった。ナターシャちゃんの<バーサーク>。そしてサテラちゃんの<ウインディアフォースフィールド>どちらも本人たちだけでは出し切れない力を十二分に引き出し、勝利を掴んだ」
「それは私達の頑張りではなく、あの子たちが頑張ったからです」
「まぁ同感だ」
「ふふ、謙遜が過ぎますぞ二人とも。では私からは一点だけ注意喚起として申し上げたいことがあります」
「注意喚起……ですか?」
ブレビンスさんの顔つきが変わった……。また真剣な表情に。
「はい。二人があの子たちに教えたスキルや魔法はどちらも強力なものです。それを体ができきっていない彼女らが長時間使うとどうなるかはあなた達も想像できますよね。特にケビンさん、分かっているとは思いますがあの<バーサーク>使いすぎると……」
「あぁ重々承知している」
「なら良かったです。とにかく、トーナメントの勝利ももちろん大事ですが、あの子たちに無茶だけはさせないようにだけ、理事長として心からお願い申し上げます」
「では二人とも、今日はゆっくり休んでくれたまえ。明後日またここで会えるのを楽しみにしていますぞ」
「あぁ」
「はい、失礼します」
ナヴィとケビンはそのまま執務室を退出した。
「はぁー疲れたぁーこういう真剣な話は苦手なんだよスーザンちゃん」
ブレビンスは大きなため息とともに机に突っ伏した。
「理事長のあんなに真剣な表情初めて見ました」
「それは大げさな!」
「それよりも今年の試験は豊作でしたね、先ほどの二人はもちろん。ルナさんもそうですし、それに……」
「ブランか……」
「良かったんですか? あの二人に私から息子さんの話をしてしまって」
「あぁ、あいつがこうなってしまったのを知ってもらえればただのくそ野郎じゃないって見方を変えてもらえるかなと。ただの親ばかによる世話心だよ」
手元に置いてあったコーヒーをぐいっと飲んだ。
「ですけどブランさん。大丈夫でしょうか……」
「どちらに転ぶかは分からんがきっと今回のナヴィさんたちとの試合で感じたことは沢山あっただろう。あいつにとってのターニングポイントになるのは間違いないだろう」
そういうとブレビンスは執務室の窓から外を眺めた。
「ほら、今がその時だ……」
「え……?」
ブレビンスが眺めた窓の外からは、コロシアムを出て自分の案内所に帰ろうとする大荷物を持ったブランの姿があった。
「あ、あの、ブランさん。待ってください!」
「……その声、ダリウスか」
帰ろうとしていたブランの後ろからダリウスがそれを走って追いかけてきた。
「はぁはぁ。あの、もう帰ってしまうんですか……?」
「……あぁ、俺の試験はもう終わった。王都にいる理由ももうない。お前はどうして俺を追いかけてきたんだ?」
「まだ終わってから何もお礼も言ってなかったので……それにあのサテラとの試合の最期の声掛け」
『ダリウス! 上だ!』
あの時の……か。
「あの言葉はちゃんとブランさんの声だった……」
「何言ってるんだ。その前からもずっと俺はお前に声を掛けてきただろ」
「違うんです! あの声は今までの声とは違った。僕だけのことを思って出してくれた声でした……」
またこいつは訳の分からないことを言って……。
「……あの余計な声賭けがなければお前はまだ勝機があった。変な声を掛けてすまなかった」
「そうじゃないです! 僕、あの時のブランさんの顔も声もきっとこの人は今まで色んなことがあってああいう指導になったんだなって感じました。じゃないとあんな心配そうな顔とか、僕を本気で助けようという声は出ませんから……」
「……本当にお前ら兄弟は頭がおかしいんじゃないか……?」
それまでダリウスを見ていたブランが振り返り足を動かした。
「……ブランさん短い間でしたが、あなたのおかげで強くなれました。あなたのおかげで自分が何をしたいのかもわかりました。本当に、本当にありがとうございました!」
ダリウスはその場で深くお辞儀をした。
その顔を下に向けたダリウスの前に一枚の名刺サイズの紙が地面に刺さった。
「……これは」
「まったく。これだから冒険者は嫌いなんだ」
ダリウスはその紙を抜き裏面を見た。
「ブランさん…これは……」
「俺の働いている案内所の住所だ。困ったら来るといい」
ダリウスの目からは大量の涙があふれだした。
「ブラン……さん」
「またな」
そのままダリウスに背中を向けブランは自分の案内所に向かって歩き出した。
「終わったな。これからのあいつはまた一段と成長するだろうな」
「そういえば、ブランさんを試験に推薦したのって理事長でしたよね?」
「あ、ばれちゃった?」
「バレバレです。推薦書の筆跡が理事長そのものでしたよ」
「あはは」
「こうなるのもいつもの勘で分かっていたんですか?」
「さぁ、どうだろうね」
とぼけた顔をしてスーザンに笑顔を見せるブレビンス。
「まったく……さぁ、仕事はまだたくさん残ってます。仕事に取り掛かりますよ」
「えぇ、スーザンちゃんもう少しお茶しよーよ!」
「結構です。早く仕事を」
我が息子ブランよ。最後にはちゃんとパートナーになれたではないか。
強くなれ、お前ならまた這い上がってこれるぞ。
サテラとダリウスの試合が終了し一時間、決勝進出した案内人のナヴィとケビンが執務室に呼び出され、スーザンからトーナメント決勝戦の説明を受けていた。
「いえ、私は」
「俺も大丈夫だ」
「ありがとうございます。理事長からは何かありますでしょうか」
「あぁ」
スーザンの横で机に肘をついて口の前で手を組んでいたブレビンスが、話始める。
「まずナヴィさん。息子のことでは迷惑をかけてしまったね」
「ブレビンスさん。いえ、スーザンさんからの話を聞いてああなってしまうのも少し納得しましたし……それに、私は特に何も……」
「ふふ、まぁそう思ってるのならそれでいい。とにかくあいつの父親として礼を言わせてくれありがとう」
「はい」
ブレビンスの真剣な表情から発せられる感謝の言葉をナヴィはあまり理解できずに飲み込んだ。
「ではお二方とも、改めて決勝進出おめでとう。今年の準決勝はレベルが高くどちらの試合もとても見ごたえがあった。ナターシャちゃんの<バーサーク>。そしてサテラちゃんの<ウインディアフォースフィールド>どちらも本人たちだけでは出し切れない力を十二分に引き出し、勝利を掴んだ」
「それは私達の頑張りではなく、あの子たちが頑張ったからです」
「まぁ同感だ」
「ふふ、謙遜が過ぎますぞ二人とも。では私からは一点だけ注意喚起として申し上げたいことがあります」
「注意喚起……ですか?」
ブレビンスさんの顔つきが変わった……。また真剣な表情に。
「はい。二人があの子たちに教えたスキルや魔法はどちらも強力なものです。それを体ができきっていない彼女らが長時間使うとどうなるかはあなた達も想像できますよね。特にケビンさん、分かっているとは思いますがあの<バーサーク>使いすぎると……」
「あぁ重々承知している」
「なら良かったです。とにかく、トーナメントの勝利ももちろん大事ですが、あの子たちに無茶だけはさせないようにだけ、理事長として心からお願い申し上げます」
「では二人とも、今日はゆっくり休んでくれたまえ。明後日またここで会えるのを楽しみにしていますぞ」
「あぁ」
「はい、失礼します」
ナヴィとケビンはそのまま執務室を退出した。
「はぁー疲れたぁーこういう真剣な話は苦手なんだよスーザンちゃん」
ブレビンスは大きなため息とともに机に突っ伏した。
「理事長のあんなに真剣な表情初めて見ました」
「それは大げさな!」
「それよりも今年の試験は豊作でしたね、先ほどの二人はもちろん。ルナさんもそうですし、それに……」
「ブランか……」
「良かったんですか? あの二人に私から息子さんの話をしてしまって」
「あぁ、あいつがこうなってしまったのを知ってもらえればただのくそ野郎じゃないって見方を変えてもらえるかなと。ただの親ばかによる世話心だよ」
手元に置いてあったコーヒーをぐいっと飲んだ。
「ですけどブランさん。大丈夫でしょうか……」
「どちらに転ぶかは分からんがきっと今回のナヴィさんたちとの試合で感じたことは沢山あっただろう。あいつにとってのターニングポイントになるのは間違いないだろう」
そういうとブレビンスは執務室の窓から外を眺めた。
「ほら、今がその時だ……」
「え……?」
ブレビンスが眺めた窓の外からは、コロシアムを出て自分の案内所に帰ろうとする大荷物を持ったブランの姿があった。
「あ、あの、ブランさん。待ってください!」
「……その声、ダリウスか」
帰ろうとしていたブランの後ろからダリウスがそれを走って追いかけてきた。
「はぁはぁ。あの、もう帰ってしまうんですか……?」
「……あぁ、俺の試験はもう終わった。王都にいる理由ももうない。お前はどうして俺を追いかけてきたんだ?」
「まだ終わってから何もお礼も言ってなかったので……それにあのサテラとの試合の最期の声掛け」
『ダリウス! 上だ!』
あの時の……か。
「あの言葉はちゃんとブランさんの声だった……」
「何言ってるんだ。その前からもずっと俺はお前に声を掛けてきただろ」
「違うんです! あの声は今までの声とは違った。僕だけのことを思って出してくれた声でした……」
またこいつは訳の分からないことを言って……。
「……あの余計な声賭けがなければお前はまだ勝機があった。変な声を掛けてすまなかった」
「そうじゃないです! 僕、あの時のブランさんの顔も声もきっとこの人は今まで色んなことがあってああいう指導になったんだなって感じました。じゃないとあんな心配そうな顔とか、僕を本気で助けようという声は出ませんから……」
「……本当にお前ら兄弟は頭がおかしいんじゃないか……?」
それまでダリウスを見ていたブランが振り返り足を動かした。
「……ブランさん短い間でしたが、あなたのおかげで強くなれました。あなたのおかげで自分が何をしたいのかもわかりました。本当に、本当にありがとうございました!」
ダリウスはその場で深くお辞儀をした。
その顔を下に向けたダリウスの前に一枚の名刺サイズの紙が地面に刺さった。
「……これは」
「まったく。これだから冒険者は嫌いなんだ」
ダリウスはその紙を抜き裏面を見た。
「ブランさん…これは……」
「俺の働いている案内所の住所だ。困ったら来るといい」
ダリウスの目からは大量の涙があふれだした。
「ブラン……さん」
「またな」
そのままダリウスに背中を向けブランは自分の案内所に向かって歩き出した。
「終わったな。これからのあいつはまた一段と成長するだろうな」
「そういえば、ブランさんを試験に推薦したのって理事長でしたよね?」
「あ、ばれちゃった?」
「バレバレです。推薦書の筆跡が理事長そのものでしたよ」
「あはは」
「こうなるのもいつもの勘で分かっていたんですか?」
「さぁ、どうだろうね」
とぼけた顔をしてスーザンに笑顔を見せるブレビンス。
「まったく……さぁ、仕事はまだたくさん残ってます。仕事に取り掛かりますよ」
「えぇ、スーザンちゃんもう少しお茶しよーよ!」
「結構です。早く仕事を」
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