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第十二章 ナヴィとグローリア案内所
185.不遇な扱い
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「お前は当分俺らの同行した記録の解析と書類整理だ」
「そんなヴィオネットさん……なんであたしが。そんなの他の案内人でもできるじゃないですか!?」
少しでも早くここの上級冒険者達と同行をして強くなっていかなきゃいけないのに、やることが内職なんてやってらんない。
「あ? じゃあその他の案内人でもできることがてめぇにはできねぇっていうのか?」
「何ですって……なめないでください。こんな雑務あたしがやる必要はないって言ってるんです」
「ふん。自惚れんな。ここでは俺がルールって言ったろ。お前の価値は俺が決める。自分の尺度で測るんじゃねぇ」
「……」
ナヴィの拳に力が入る。
「何だ、まだなんか文句あんのか? あ?」
この人また顎を突きあげてあたしを見下すように……。腹立ってしょうがないけど言ってることはその通りだわ。
「っく。失礼しました」
書類整理も同行の記録解析も爆速でやればきっと同行をやらせてもらえる。ならすぐにでも始めてヴィオネットさんに認めてもらうほうが良さそう。
「それであたしはどこで仕事を……?」
「わかりゃいいんだよ、ほらお前のデスクはあそこだ、好きに使え」
「え? 受付のすぐ近くのデスクですけど……」
「あぁ、そこしかねぇんだ。少し狭いが俺の目も届くしな」
「はぁ」
この人やっぱりあたしを警戒しているのかな。まぁいいや、すぐにでも同行させてもらえるようにバリバリ働いてやろう。
「あぁ、まとめてもらう書類は全てデスクの上に置いておいたからすぐに始めてもらって構わねぇよ。一応普段はレミアがやってくれてたからその例を見ながらやれば大丈夫だぜ」
「はい。分かりました」
と、まぁデスクに座ってみたわいいものの……。
「まじ……? 何この数……」
デスクが見えなくなるほどの書類の山……こんなのうちの一日分の十倍は数があるじゃない。
「あの、ヴィオネットさんこれってあたしは何日で仕上げれば……」
「そこにあんのは一日分だ。レミアの裁量だが優しいレミアは初日だからって少なくしてくれたそうだぜ」
「こ、これを……一日で?」
「できねぇならレミアに言って少なくしてやることもできるが」
「……」
ヴィオネットさんがそんなことさせるはずない。あたしの性格を知っていてわざとこういう言い方をしているんだ。
「いえ、やります。一日でやってみせます」
その言葉を待っていたかのようにヴィオネットはにやりと笑い。皮肉めいた言い方でナヴィに言い放つ。
「ふっ。いいねぇ。じゃあ頑張ってくれたまえ。『王都公認の天才上級ガイド』さん。あ、あと俺のことはヴィオネでいいぜ。なげぇしな」
「……はい、ヴィオネさん」
とにかく結果で見せていくしかない。この量ならきっと簡単な分析とまとめ方でいいはず。
天才って言われたあたしよ。公認でもない同い年のレミアにあたしが情報処理で負けるなんてない。
ナヴィは顔をぱんぱんと両手で叩き仕事にとりかかろうと、一度レミアの分析の例の書類に目を向けた。
「……嘘でしょ……。レミア。あんた何者なの……?」
額に大量の汗をかき始めていたナヴィの様子をレミアは受付をしながらもちらちらと視線を向ける。
「なによこれ、あたしが公認の一次試験で満点合格した内容と同等レベル……いや、それ以上……?」
ナヴィもレミアの方に目を向けた。
「あっ……」
目があっちゃった……。
二人ともすぐに目を逸らした。
「レミアのあの目って、ナヴィさん大丈夫かしらって憐みの目だったわね……完全に」
ったく。世界は広いって痛感させられるわね。それに同い年でこんなすごい子がいるなんて……。
「やってやろうじゃないの、このくらいあたしに掛かれば一瞬よ」
ナヴィは腕をまくり上げ仕事に取り掛かった。
とは意気込んだものの。
「あーんもう全然終わんないじゃない!!」
「「うおっ」」
受付に来ていた冒険者がナヴィの叫び声に驚いた。
「あ、ナ、ナヴィさん!? 大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさい。全然、全然大丈夫だから、す、すみません……」
朝から始めてもう夕暮れ時、まだ半分も終わってない……。
「おーおーやってるねぇナヴィ」
「う、ヴィオネさん」
ナヴィの頭に胸をずしりと乗せるヴィオネット。
「重たいです」
「あれー朝の意気込みはどうしたんだ? それじゃ明日の朝までかかっちまうぜ?」
「……言われなくても分かってます。これからスパートをかけていきますから」
「あっそ、俺は夕飯食ってもう寝るから、あとは頑張れよー」
ヴィオネットはナヴィに背を向け手を振った。
「は!? なんで、このまとめた書類すら見てもらえないの? どうなってんのあの人」
「あ? なんか言ったか?」
ナヴィの方を振り向きぎろりと睨む。
「あ、いえ、何でもありません」
「ならいい」
ヴィオネさんはそのまま自室へと戻っていった。
「はー初日からこれかぁ」
「ナヴィさんお疲れ様です。これコーヒーです」
「あ、ありがとうレミア」
「あまり無理なさらないでくださいね、私もその量に慣れたのは最近の話ですから」
「うん、ありがとう。でももう少しやるわ。あなたに少しでも追いつけなきゃね、同行も早くしたいし」
「同行……ですか」
レミアは険しい顔でナヴィを見つめていた。
「え……?」
「あ、いえ。さ、もうすぐ夕飯ですからそれまで頑張って下さいね!」
「うん。ありがと!」
こうしてナヴィのグローリア案内所での初日の勤務が終了した。
しかし結局その日の日付が変わるまで仕事をこなしたもののノルマの半分もこなせていなかった。
そして翌日。
ナヴィのヴィオネットによる不遇な扱いは更にエスカレートしていくことになる。
閉じる
「そんなヴィオネットさん……なんであたしが。そんなの他の案内人でもできるじゃないですか!?」
少しでも早くここの上級冒険者達と同行をして強くなっていかなきゃいけないのに、やることが内職なんてやってらんない。
「あ? じゃあその他の案内人でもできることがてめぇにはできねぇっていうのか?」
「何ですって……なめないでください。こんな雑務あたしがやる必要はないって言ってるんです」
「ふん。自惚れんな。ここでは俺がルールって言ったろ。お前の価値は俺が決める。自分の尺度で測るんじゃねぇ」
「……」
ナヴィの拳に力が入る。
「何だ、まだなんか文句あんのか? あ?」
この人また顎を突きあげてあたしを見下すように……。腹立ってしょうがないけど言ってることはその通りだわ。
「っく。失礼しました」
書類整理も同行の記録解析も爆速でやればきっと同行をやらせてもらえる。ならすぐにでも始めてヴィオネットさんに認めてもらうほうが良さそう。
「それであたしはどこで仕事を……?」
「わかりゃいいんだよ、ほらお前のデスクはあそこだ、好きに使え」
「え? 受付のすぐ近くのデスクですけど……」
「あぁ、そこしかねぇんだ。少し狭いが俺の目も届くしな」
「はぁ」
この人やっぱりあたしを警戒しているのかな。まぁいいや、すぐにでも同行させてもらえるようにバリバリ働いてやろう。
「あぁ、まとめてもらう書類は全てデスクの上に置いておいたからすぐに始めてもらって構わねぇよ。一応普段はレミアがやってくれてたからその例を見ながらやれば大丈夫だぜ」
「はい。分かりました」
と、まぁデスクに座ってみたわいいものの……。
「まじ……? 何この数……」
デスクが見えなくなるほどの書類の山……こんなのうちの一日分の十倍は数があるじゃない。
「あの、ヴィオネットさんこれってあたしは何日で仕上げれば……」
「そこにあんのは一日分だ。レミアの裁量だが優しいレミアは初日だからって少なくしてくれたそうだぜ」
「こ、これを……一日で?」
「できねぇならレミアに言って少なくしてやることもできるが」
「……」
ヴィオネットさんがそんなことさせるはずない。あたしの性格を知っていてわざとこういう言い方をしているんだ。
「いえ、やります。一日でやってみせます」
その言葉を待っていたかのようにヴィオネットはにやりと笑い。皮肉めいた言い方でナヴィに言い放つ。
「ふっ。いいねぇ。じゃあ頑張ってくれたまえ。『王都公認の天才上級ガイド』さん。あ、あと俺のことはヴィオネでいいぜ。なげぇしな」
「……はい、ヴィオネさん」
とにかく結果で見せていくしかない。この量ならきっと簡単な分析とまとめ方でいいはず。
天才って言われたあたしよ。公認でもない同い年のレミアにあたしが情報処理で負けるなんてない。
ナヴィは顔をぱんぱんと両手で叩き仕事にとりかかろうと、一度レミアの分析の例の書類に目を向けた。
「……嘘でしょ……。レミア。あんた何者なの……?」
額に大量の汗をかき始めていたナヴィの様子をレミアは受付をしながらもちらちらと視線を向ける。
「なによこれ、あたしが公認の一次試験で満点合格した内容と同等レベル……いや、それ以上……?」
ナヴィもレミアの方に目を向けた。
「あっ……」
目があっちゃった……。
二人ともすぐに目を逸らした。
「レミアのあの目って、ナヴィさん大丈夫かしらって憐みの目だったわね……完全に」
ったく。世界は広いって痛感させられるわね。それに同い年でこんなすごい子がいるなんて……。
「やってやろうじゃないの、このくらいあたしに掛かれば一瞬よ」
ナヴィは腕をまくり上げ仕事に取り掛かった。
とは意気込んだものの。
「あーんもう全然終わんないじゃない!!」
「「うおっ」」
受付に来ていた冒険者がナヴィの叫び声に驚いた。
「あ、ナ、ナヴィさん!? 大丈夫ですか?」
「ご、ごめんなさい。全然、全然大丈夫だから、す、すみません……」
朝から始めてもう夕暮れ時、まだ半分も終わってない……。
「おーおーやってるねぇナヴィ」
「う、ヴィオネさん」
ナヴィの頭に胸をずしりと乗せるヴィオネット。
「重たいです」
「あれー朝の意気込みはどうしたんだ? それじゃ明日の朝までかかっちまうぜ?」
「……言われなくても分かってます。これからスパートをかけていきますから」
「あっそ、俺は夕飯食ってもう寝るから、あとは頑張れよー」
ヴィオネットはナヴィに背を向け手を振った。
「は!? なんで、このまとめた書類すら見てもらえないの? どうなってんのあの人」
「あ? なんか言ったか?」
ナヴィの方を振り向きぎろりと睨む。
「あ、いえ、何でもありません」
「ならいい」
ヴィオネさんはそのまま自室へと戻っていった。
「はー初日からこれかぁ」
「ナヴィさんお疲れ様です。これコーヒーです」
「あ、ありがとうレミア」
「あまり無理なさらないでくださいね、私もその量に慣れたのは最近の話ですから」
「うん、ありがとう。でももう少しやるわ。あなたに少しでも追いつけなきゃね、同行も早くしたいし」
「同行……ですか」
レミアは険しい顔でナヴィを見つめていた。
「え……?」
「あ、いえ。さ、もうすぐ夕飯ですからそれまで頑張って下さいね!」
「うん。ありがと!」
こうしてナヴィのグローリア案内所での初日の勤務が終了した。
しかし結局その日の日付が変わるまで仕事をこなしたもののノルマの半分もこなせていなかった。
そして翌日。
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