村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十二章 ナヴィとグローリア案内所

186.仕事量

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 勤務日二日目。

 ナヴィは日が昇る前に起床し、仕事着に着替え、エントランスへと向かっていた。

「結局昨日寝たのは午前三時……何とか八割方片付いたけど……それでも八割だった」

 あの量を一日でこなしているレミアって何者なの……?

「おはようナヴィ」

「ヴィ、ヴィオネさん」

 ヴィオネットは暴発した寝癖のままナヴィに肩を組んだ。

「どうしたぁ、挨拶がねぇな? 新人は元気がねぇとな」

「お、おはようございます」

「おう、おはよう。どうしたんだナヴィ、目元にでっかい隈なんか作って」

 不敵な笑みを浮かべながらナヴィに問いかけるヴィオネット。

 この人……分かっててこんなことを。

「いえ、何でもありません。それでヴィオネさん。今日のあたしの仕事は?」

「は、まだ残ってんだろ? それをやれよ」

「いえ、それが終わったらです、あと二割ほどで終わりそうですので」

 ヴィオネットは目を見開いた。

「……あの量をほぼ一日で……?」

「へ? 何か言いましたか」

 寝不足のためふらふらとしているナヴィにはヴィオネットの呟く声は聞き取れなかった。

「ふ、まぁいい。今日も昨日と同じだ。今日の分はすでにお前の横に書類を入れた箱を置かせてもらった」

「あの……同行は?」

「……この仕事がこなせるようになってきてからだ」

「そうですか……あたし頑張りますね、それでは失礼します」

 ナヴィは体を左右に振らしながらデスクへと向かっていった。

 そしてそのデスクの前に立った瞬間にナヴィは震えだした。

「どういう神経してるのかしらあの人。、まだ終わってないって言ったのに……」

 昨日の量の倍はあるじゃない……。

「あはは、意地でもあたしに仕事をさせない気みたいね、ヴィオネさんは」

 ヴィオネさんがどんなこと考えてんのかは知らないけど、昨日で仕事の容量は掴んだ。

 このくらいもう少し慣れれば一日で終わらせられる。

「腹が立ってしょうがないけど……やるしかない。時間に一刻の猶予もない」
「さぁ、やってやるわよ」

 こうしてあたしが仕事をすればするほど、書類の数がインフレしていく生活が一週間ほど続いていった。


 とある日の深夜。
 レミアは夕食を取り終え、ヴィオネットの部屋へと向かっていた。


 ナヴィさんが来てから一週間ほどでしょうか。

 ナヴィさんにとってはあわただしい日々が続いていますがナヴィさんが入ったことにより格段に私と姉様の仕事がやりやすくなった。

 けど、それはあくまで私たちだけ。ナヴィさんが受付や案内、同行を行ってしっかりと三人で仕事を分担して雑務を他の方に任せればグローリア案内所は更に万全の体制になるはず。

 それをしない姉様になにかお考えが。

 そんなことを考えながらレミアはヴィオネットの部屋の戸をノックした。

「姉様、レミアです。今お時間よろしいでしょうか」

「レミアか、あぁ。入れ」

「ありがとうございます。失礼します」

 ヴィオネットは椅子に腰かけており、まるでレミアが来ることを知っていたかのようにお茶が出されていた。

「あぁ、まぁ立ち話はなんだ。茶でも飲みながら話そうぜ」

「……」

「ナヴィのことだな?」

 自分の考えが見透かされていたことに驚くレミア。

「え……?」

「そろそろかなとは思っていたが、まさかレミア、お前から先に来るとはな」

「姉様、では私がこれから何を聞きたいかも…」

「ある程度……な」

 ヴィオネットは一度自分で入れたお茶に口を付け一息吐き、レミアに話を振った。

「それで要件を聞こうか」

「えぇ。ナヴィさんに対しての姉様の対応がどうも納得がいきません、あのままあずっと同じ仕事をさせるつもりですか?」

「あーそれはあいつ次第だな」

「それでは私たちのお店的にも宝の持ち腐れです。もっとちゃんと働かせてあげるべきなのでは。ナヴィさっもきっと何かが得たくてここに来たわけなんですし」

「あぁ、その通りだ」

「……それだけですか」

「ほかに言いようがないからな」

 ヴィオネットの適当とも取れる返答に対し怒りがこみ上げたレミア。

「それじゃナヴィさんがかわいそうじゃ!」

「これを見ろ」

「!?」

 ヴィオネットは顔を近づけたレミアの前に数枚の書類を突き付けた。

「これは……」

「ここ一週間でナヴィが分析してまとめた俺たちの同行の記録だ」

「一枚目は初日、七枚目が最後……」

 ナヴィのまとめたその書類一枚一枚をじっくりと読み込んだ。

「……ナヴィさん」

 レミアの書類を持っていた手が小刻みに震え始めた。

「怖くなったか?」

「そんな……仕事量は毎日毎日増えているはずなのに」

 クオリティが落ちていないどころか、日が経つにつれて分析の幅やレベルが上がっていってる……?

「あぁ、それに今日与えた仕事量はお前のナヴィが来る前からこなしていたノルマと同じだ」

「……」

 レミアの開いた口は塞がらず言葉も出てこずにいた。

「こいつは紛れもなく天才だ」

「……天才」

「だが、天才だからこそあいつは大きな失敗をしている」

「天才だからこその失敗……ですか」

「あぁ……レミア。今日はここまでだ、また今度この話をしよう」

「え、ちょっ姉さん。まだ話は」

「時期に教えてやる、しばらくそのまま待っとけ」

 ヴィオネットは押し出すような形でレミアを部屋の外へと出した。

「ふー、まぁ少々手荒だがこのくらいでいいんだよな。スーザン」

 机の上に置かれていたスーザンからの手紙にヴィオネットは視線を向けた。
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