村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十二章 ナヴィとグローリア案内所

187.ナヴィとヴィオネット

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 ナヴィがグローリア案内所に来てから二週間が経った。

「ヴィオネさん。こっちの書類まとめ終わりました」

 ヴィオネのデスクの前に笑顔で立つナヴィ。

「あ、まだ午後三時だぞ? 残ってる仕事あんだろ、途中経過はいいからさっさと……」

「いえ、全て終わりました」

「何だって……?」

 ナヴィはにやりと笑い自分の背中で隠していた書類が大量に入った箱の山をヴィオネットに見せつけた。

「……見せてみろ」

「はい。どうぞ」

 その後残りの勤務時間の全てを使いヴィオネットはナヴィのまとめた書類をチェックした。

「……ふむ、いいだろう」

「そ、それじゃあ、案内人の仕事に……!」

「違う」

「え?」

「ノルマを達成したことに対しての話だ」

「……それはどういうことですか?」

「お前が二週間やり続けた書類に目を通したがどれも不完全だ。バックルームに手直しが必要なところにチェックを入れておいた書類が数箱溜まっている。明日以降はノルマをこなしつつそれも改良して俺に見せろ」

「……」

 ヴィオネットの対応に不服そうな顔を前面に出すナヴィ。

「何だ?」

「あたしはいつになったら仕事をさせてもらえるんですか」

「お前が今やっている仕事は仕事ではない雑務だと?」

「はい。あたしはこんなことをやるためにここにきたんじゃないんです」

「……お前の希望なんか知るか。今日はもう閉店時間だ。締め作業に取り掛かれ」

 そういうとヴィオネットはナヴィの前から立ち去ろうと椅子から立ち上がる。

 ナヴィはそれを止めようと両手を広げた。

「ちょっと待ってください!!」

「何度も言わせんな。ここでは俺がルールだ」

 ヴィオネットはナヴィの腕を強く払いのけ自室へと戻っていった。

「……くそ!!」

 ヴィオネットの口癖のように毎日言われていた言葉を聞き腹を立てるナヴィ。

「ナ、ナヴィさん……どうかしましたか? どんって机を叩く音が聞こえましたが」

「あ、ご、ごめんレミア」

「もし私で良ければ話聞きますよ」

「ありがとうレミア……じゃあお言葉に甘えて」



 締め作業が終わった二人はエントランスのカウンターでコーヒーを飲みながら話していた。

「そうですか、ナヴィさんもサーティーンプリンスターの襲撃に……」

「えぇ、その時にいたあたしの妹や従業員の子を守り切れなかったの」

「だから力を付けたい……ということですか?」

「うん。このままじゃダメな気がしてね。とにかく今はあたし一人だけでもサーティーンプリンスターを、ミモザを倒せるぐらいにはならないといけないの」

「なるほど……」

「だからヴィオネットさんが今あたしに課しているノルマはあたしにとっては不必要なもの。早く受付とか同行とかしないと時間の無駄になっちゃう……」

「そうですか……」

 なるほど。姉さまの言っていたことが何となくわかった気がします。

「レミア、あたしどうしたらいいのかな?」

 不安そうな顔をしながらレミアに問いかけるナヴィ。

「私はナヴィさんではないのでよく分かりませんが、私たちは案内人です。冒険者ではありません」

「え……そんなことは分かってるけど……」

「あ、そ、そうですよねごめんなさい。私なんか変なこと言っちゃって」

「あはは、レミア時々人格が変わってるんじゃないかって口調になるよね、機械的というか感情がないというか」

「すみません。そんなつもりはないんですが……」

「ふーん」

「と、とにかく明日は忙しいので明後日辺りに私からも姉さまにナヴィさんの話を振ってみます。もしかしたら気分屋の姉さまですから、案外さらっと待遇を変えてくれるかもしれないですしね」

「とてもそんな風には見えないけど……」

「まぁ……私でも時々姉さまの考えてることが分からなくなる時がありますからね」

「そうなんだ、姉妹なのに……」

「はい、ただ一つはっきりと言えるのは、姉さまはあぁ見えて非常に思慮深いお方です」

「思慮深い……」

「ナヴィさんの仕事も姉さまが与えた仕事です、ですから今やってることも無駄じゃない、かもしれないです」

「かもじゃだめじゃない!」

「あはは、そうですよね」

 苦笑いをしながらヴィオネットのフォローをするレミアとそれに対してつつくナヴィのやり取りは夜が更けるまで行われていた。


 次の日の正午。

 ナヴィはこの日のノルマをすぐに終えて休憩に入ろうとしていた。

「よーし、これで大方ノルマは片付いた!」

「あのーすみませーん」

 あ、冒険者だ! 

 ナヴィは周りをきょろきょろと見渡した。

 それに今はレミアもヴィオネさんも受付をしていて人手が足りていない。
 これはチャンスだ。ここで一気に対応の良さを店内にいる冒険者様らにアピールして仕事をもらうんだ!

「あ、只今こちらで!」

「あ、少々お待ちを。その子は新人だから受付はできねーんだ」

 ナヴィの近くで受付をしていたヴィオネットが横やりを入れた。

「え、でもこの方胸のタトゥーが三個の上級ガイドですよね?」

 そうだそうだ! ヴィオネさんにもっと言ってやれ!

「あと数分待てばアドバイザーの俺が直々に受付してやれるが?」

「えっ、まじですか! お願いしまーす!」

「くっ……」

「すまんな、出来の悪い上級ガイドを持ったのでどうしても対応が遅れてしまって。さぁ、仕事に戻れナヴィ」

「……いい加減にしてください!!」

 ナヴィの怒鳴り声がエントランス中に響き渡った。
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