187 / 262
第十二章 ナヴィとグローリア案内所
187.ナヴィとヴィオネット
しおりを挟む
ナヴィがグローリア案内所に来てから二週間が経った。
「ヴィオネさん。こっちの書類まとめ終わりました」
ヴィオネのデスクの前に笑顔で立つナヴィ。
「あ、まだ午後三時だぞ? 残ってる仕事あんだろ、途中経過はいいからさっさと……」
「いえ、全て終わりました」
「何だって……?」
ナヴィはにやりと笑い自分の背中で隠していた書類が大量に入った箱の山をヴィオネットに見せつけた。
「……見せてみろ」
「はい。どうぞ」
その後残りの勤務時間の全てを使いヴィオネットはナヴィのまとめた書類をチェックした。
「……ふむ、いいだろう」
「そ、それじゃあ、案内人の仕事に……!」
「違う」
「え?」
「ノルマを達成したことに対しての話だ」
「……それはどういうことですか?」
「お前が二週間やり続けた書類に目を通したがどれも不完全だ。バックルームに手直しが必要なところにチェックを入れておいた書類が数箱溜まっている。明日以降はノルマをこなしつつそれも改良して俺に見せろ」
「……」
ヴィオネットの対応に不服そうな顔を前面に出すナヴィ。
「何だ?」
「あたしはいつになったら仕事をさせてもらえるんですか」
「お前が今やっている仕事は仕事ではない雑務だと?」
「はい。あたしはこんなことをやるためにここにきたんじゃないんです」
「……お前の希望なんか知るか。今日はもう閉店時間だ。締め作業に取り掛かれ」
そういうとヴィオネットはナヴィの前から立ち去ろうと椅子から立ち上がる。
ナヴィはそれを止めようと両手を広げた。
「ちょっと待ってください!!」
「何度も言わせんな。ここでは俺がルールだ」
ヴィオネットはナヴィの腕を強く払いのけ自室へと戻っていった。
「……くそ!!」
ヴィオネットの口癖のように毎日言われていた言葉を聞き腹を立てるナヴィ。
「ナ、ナヴィさん……どうかしましたか? どんって机を叩く音が聞こえましたが」
「あ、ご、ごめんレミア」
「もし私で良ければ話聞きますよ」
「ありがとうレミア……じゃあお言葉に甘えて」
締め作業が終わった二人はエントランスのカウンターでコーヒーを飲みながら話していた。
「そうですか、ナヴィさんもサーティーンプリンスターの襲撃に……」
「えぇ、その時にいたあたしの妹や従業員の子を守り切れなかったの」
「だから力を付けたい……ということですか?」
「うん。このままじゃダメな気がしてね。とにかく今はあたし一人だけでもサーティーンプリンスターを、ミモザを倒せるぐらいにはならないといけないの」
「なるほど……」
「だからヴィオネットさんが今あたしに課しているノルマはあたしにとっては不必要なもの。早く受付とか同行とかしないと時間の無駄になっちゃう……」
「そうですか……」
なるほど。姉さまの言っていたことが何となくわかった気がします。
「レミア、あたしどうしたらいいのかな?」
不安そうな顔をしながらレミアに問いかけるナヴィ。
「私はナヴィさんではないのでよく分かりませんが、私たちは案内人です。冒険者ではありません」
「え……そんなことは分かってるけど……」
「あ、そ、そうですよねごめんなさい。私なんか変なこと言っちゃって」
「あはは、レミア時々人格が変わってるんじゃないかって口調になるよね、機械的というか感情がないというか」
「すみません。そんなつもりはないんですが……」
「ふーん」
「と、とにかく明日は忙しいので明後日辺りに私からも姉さまにナヴィさんの話を振ってみます。もしかしたら気分屋の姉さまですから、案外さらっと待遇を変えてくれるかもしれないですしね」
「とてもそんな風には見えないけど……」
「まぁ……私でも時々姉さまの考えてることが分からなくなる時がありますからね」
「そうなんだ、姉妹なのに……」
「はい、ただ一つはっきりと言えるのは、姉さまはあぁ見えて非常に思慮深いお方です」
「思慮深い……」
「ナヴィさんの仕事も姉さまが与えた仕事です、ですから今やってることも無駄じゃない、かもしれないです」
「かもじゃだめじゃない!」
「あはは、そうですよね」
苦笑いをしながらヴィオネットのフォローをするレミアとそれに対してつつくナヴィのやり取りは夜が更けるまで行われていた。
次の日の正午。
ナヴィはこの日のノルマをすぐに終えて休憩に入ろうとしていた。
「よーし、これで大方ノルマは片付いた!」
「あのーすみませーん」
あ、冒険者だ!
ナヴィは周りをきょろきょろと見渡した。
それに今はレミアもヴィオネさんも受付をしていて人手が足りていない。
これはチャンスだ。ここで一気に対応の良さを店内にいる冒険者様らにアピールして仕事をもらうんだ!
「あ、只今こちらで!」
「あ、少々お待ちを。その子は新人だから受付はできねーんだ」
ナヴィの近くで受付をしていたヴィオネットが横やりを入れた。
「え、でもこの方胸のタトゥーが三個の上級ガイドですよね?」
そうだそうだ! ヴィオネさんにもっと言ってやれ!
「あと数分待てばアドバイザーの俺が直々に受付してやれるが?」
「えっ、まじですか! お願いしまーす!」
「くっ……」
「すまんな、出来の悪い上級ガイドを持ったのでどうしても対応が遅れてしまって。さぁ、仕事に戻れナヴィ」
「……いい加減にしてください!!」
ナヴィの怒鳴り声がエントランス中に響き渡った。
「ヴィオネさん。こっちの書類まとめ終わりました」
ヴィオネのデスクの前に笑顔で立つナヴィ。
「あ、まだ午後三時だぞ? 残ってる仕事あんだろ、途中経過はいいからさっさと……」
「いえ、全て終わりました」
「何だって……?」
ナヴィはにやりと笑い自分の背中で隠していた書類が大量に入った箱の山をヴィオネットに見せつけた。
「……見せてみろ」
「はい。どうぞ」
その後残りの勤務時間の全てを使いヴィオネットはナヴィのまとめた書類をチェックした。
「……ふむ、いいだろう」
「そ、それじゃあ、案内人の仕事に……!」
「違う」
「え?」
「ノルマを達成したことに対しての話だ」
「……それはどういうことですか?」
「お前が二週間やり続けた書類に目を通したがどれも不完全だ。バックルームに手直しが必要なところにチェックを入れておいた書類が数箱溜まっている。明日以降はノルマをこなしつつそれも改良して俺に見せろ」
「……」
ヴィオネットの対応に不服そうな顔を前面に出すナヴィ。
「何だ?」
「あたしはいつになったら仕事をさせてもらえるんですか」
「お前が今やっている仕事は仕事ではない雑務だと?」
「はい。あたしはこんなことをやるためにここにきたんじゃないんです」
「……お前の希望なんか知るか。今日はもう閉店時間だ。締め作業に取り掛かれ」
そういうとヴィオネットはナヴィの前から立ち去ろうと椅子から立ち上がる。
ナヴィはそれを止めようと両手を広げた。
「ちょっと待ってください!!」
「何度も言わせんな。ここでは俺がルールだ」
ヴィオネットはナヴィの腕を強く払いのけ自室へと戻っていった。
「……くそ!!」
ヴィオネットの口癖のように毎日言われていた言葉を聞き腹を立てるナヴィ。
「ナ、ナヴィさん……どうかしましたか? どんって机を叩く音が聞こえましたが」
「あ、ご、ごめんレミア」
「もし私で良ければ話聞きますよ」
「ありがとうレミア……じゃあお言葉に甘えて」
締め作業が終わった二人はエントランスのカウンターでコーヒーを飲みながら話していた。
「そうですか、ナヴィさんもサーティーンプリンスターの襲撃に……」
「えぇ、その時にいたあたしの妹や従業員の子を守り切れなかったの」
「だから力を付けたい……ということですか?」
「うん。このままじゃダメな気がしてね。とにかく今はあたし一人だけでもサーティーンプリンスターを、ミモザを倒せるぐらいにはならないといけないの」
「なるほど……」
「だからヴィオネットさんが今あたしに課しているノルマはあたしにとっては不必要なもの。早く受付とか同行とかしないと時間の無駄になっちゃう……」
「そうですか……」
なるほど。姉さまの言っていたことが何となくわかった気がします。
「レミア、あたしどうしたらいいのかな?」
不安そうな顔をしながらレミアに問いかけるナヴィ。
「私はナヴィさんではないのでよく分かりませんが、私たちは案内人です。冒険者ではありません」
「え……そんなことは分かってるけど……」
「あ、そ、そうですよねごめんなさい。私なんか変なこと言っちゃって」
「あはは、レミア時々人格が変わってるんじゃないかって口調になるよね、機械的というか感情がないというか」
「すみません。そんなつもりはないんですが……」
「ふーん」
「と、とにかく明日は忙しいので明後日辺りに私からも姉さまにナヴィさんの話を振ってみます。もしかしたら気分屋の姉さまですから、案外さらっと待遇を変えてくれるかもしれないですしね」
「とてもそんな風には見えないけど……」
「まぁ……私でも時々姉さまの考えてることが分からなくなる時がありますからね」
「そうなんだ、姉妹なのに……」
「はい、ただ一つはっきりと言えるのは、姉さまはあぁ見えて非常に思慮深いお方です」
「思慮深い……」
「ナヴィさんの仕事も姉さまが与えた仕事です、ですから今やってることも無駄じゃない、かもしれないです」
「かもじゃだめじゃない!」
「あはは、そうですよね」
苦笑いをしながらヴィオネットのフォローをするレミアとそれに対してつつくナヴィのやり取りは夜が更けるまで行われていた。
次の日の正午。
ナヴィはこの日のノルマをすぐに終えて休憩に入ろうとしていた。
「よーし、これで大方ノルマは片付いた!」
「あのーすみませーん」
あ、冒険者だ!
ナヴィは周りをきょろきょろと見渡した。
それに今はレミアもヴィオネさんも受付をしていて人手が足りていない。
これはチャンスだ。ここで一気に対応の良さを店内にいる冒険者様らにアピールして仕事をもらうんだ!
「あ、只今こちらで!」
「あ、少々お待ちを。その子は新人だから受付はできねーんだ」
ナヴィの近くで受付をしていたヴィオネットが横やりを入れた。
「え、でもこの方胸のタトゥーが三個の上級ガイドですよね?」
そうだそうだ! ヴィオネさんにもっと言ってやれ!
「あと数分待てばアドバイザーの俺が直々に受付してやれるが?」
「えっ、まじですか! お願いしまーす!」
「くっ……」
「すまんな、出来の悪い上級ガイドを持ったのでどうしても対応が遅れてしまって。さぁ、仕事に戻れナヴィ」
「……いい加減にしてください!!」
ナヴィの怒鳴り声がエントランス中に響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。
かの
ファンタジー
孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。
ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく
かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。
ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!?
俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。
第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。
「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」
信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。
賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。
様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する!
異世界ざわつき転生譚、ここに開幕!
※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。
※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる