村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十二章 ナヴィとグローリア案内所

192.才能の壁

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「インターハイ陸上女子 100m走 第一位 北大路ナミ」

「「「うおぉぉぉぉ!」」」

「はぁ。はぁ。勝った! 優勝だ」

 これでお父様にいい報告ができる。

「さっすが北大路財閥のご令嬢だよな。金持ちで運動神経もいいとかそんなのありかよ」
「まーなでも今年は不作らしいぜ。オリンピックの強化指定選手の選考も今年の三年生からは選出されないとか」
「確かに一位だが歴代の記録と比べると、なぁ」
「他の年ならいいとこ三位とかだろ」

「「くすくすくす」」

 なんだこいつら。
 あたしが何かしたっていうの?

「うわすっげ、また北大路が学年トップだ!」
「主要五教科で点数は四百九十点。総合一位、何だけど……」
「各教科の順位はどれも二位とか三位とかだな。一位が一つもないぞ」
「まぁそれでもすげーんじゃねーの」
「テストなんて暗記ゲーだろ。友達もろくにいないお嬢様は勉強と陸上しかやることが無いんだから忙しい俺らと違って勉強が友達ですって感じだろ」
「それにこういうなんでもできる奴より一教科だけ百点とかっていう尖ったやつが案外学者とか研究職で花咲かすんだよ」

「「くすくすくす」」

 あたしよりも下の奴らのただの僻みだ。気にするな。こいつらに向けようとしている怒りを勉強で、陸上で発散しろ。

 そうすればあたしは誰にも負けない。

 今日の夜はお父様が帰ってくるし色々と報告しよう。

「お父様、先日のインターハイ無事に優勝することができました」

「そうか」

「え……?」

「なんだ」

「え、い、いや。あ、あと本日テストの成績の張り出しがあり無事に総合一位を取ることができました」

「そうか」

「総合一位、だけか」

「……」

「ふ、そんなことで話しかけてくるな。北大路の名を継ぐものだ。それぐらいは容易にやってもらわないとな」

「……」

「話はそれだけか」

「……はい」

「では私は部屋に戻る」

「……はい」


 あたし北大路ナミは人よりもたくさんの才能を授かった。

 と思っていた。

 幼少期からの父の厳しい教育方針の下で鍛え上げられ、周りにいる子たちと圧倒的な差をつけていった。

 小学生の頃から塾やピアノのコンクール、激しい競争社会の中に放り込まれ一位以外は許されない。

 あの頃はそれでもよかった。上手くなる実感が手に取るようにあったから。それに小学生の頃は才能よりも努力でどうにかなる分野が多かった。

 けど。中学生になってそれが一気に逆転した。

「ピアノ部門ジュニアの部 優秀賞 北大路ナミ!」

「え……」

「そして最優秀賞は。佐藤大地!」

「よっしゃー! あの北大路に勝ったぞー!」

「「うぉぉぉぉぉ!」」

「……そんな」

 生まれも育ちもきっと大したことのない人だった。でもそんな人に負けたあたしはもっと大したことないやつなんだ。

 あたしはそれ以降白と黒の鍵盤を触れることも見ることもしなかった。

 いいところまでいくけど才能という絶対的な壁に蹴落とされ。また別の道を模索する。そんな繰り返しの日々だった。

 そんな中でも初めて自分にはこれだと持ったものがあった。それが陸上だ。

 小さいころから走るのが好きだった。

 なんかこう気持ちがぱーっと開放される感じ、そしてあたしよりも前に人がいない爽快感がたまらなかった。

 けど、それも結局インターハイ優勝どまり。オリンピックなど夢のまた夢ともニュースや新聞では書かれた。

 勉強もそうだ。

 オリンピックに出れるほどの才能もなく。学者になれるほど頭も良くない。

 じゃああたしは何のために……これから何をすれば。

「えーっと、おほん。北大路さん」

「あ、はい、先生」

「進路相談中なんだからぼーっとするのは流石にね……」

「失礼しました、えっとそれで……」

「まぁ北大路さんは陸上も勉強も頑張ってたし進学先はそこら中にあるはずだと思うけど、どうしたいんだい?」

「……どうしたい?」

「うん。北大路さんはこれからどうやって生きていきたいのかな。やっぱり陸上? それとも研究職とか?」

「……分かりません」

「……?」

「あたしは何がしたいんでしょうか」

 あたしは……あたしは……。


「はっ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ 夢?」

 ナヴィはグローリア案内所の自室のベッドの上で目を覚ました。

「ナヴィさん。大丈夫ですか、凄い汗ですよ?」

 ベッドの横にはリンゴのようなフルーツをナイフで器用に向いているレミアがいた。

「レミア……そっか。あたし、負けたのか」

 布団の裾をしわになるまで強く握ったナヴィ。

「すみません……」

「なんでレミアが……」

「おい、起きたか」

「ヴィ、ヴィオネさん」 

 扉を足で蹴りどかどかと入ってくるヴィオネット。

「レミア、ご苦労だった。今日はもう休め」

「はい、姉さま……ナヴィさん。それでは」

「え、えぇ」

 レミアは扉の前で一礼をし自室へと戻っていった。

 そしてレミアの座っていた丸椅子にヴィオネットが足を広げ座った。

「気分はどうだ、負け犬」

「あはは、何も言えません。そして最悪です」

 苦笑いをし、悔しさをごまかすナヴィ。

「だろうな。なぁナヴィ、一騎打ちをする前の約束覚えてるか?」

「あ、あぁ。もう諦めました、雑務でも何でもやります。同行も諦めます」

「そのことなんだが、もうその必要はない」

「え……?」

「お前はクビだ。明日荷物をまとめてここを立ち去れ」

「……なんで」
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