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第十二章 ナヴィとグローリア案内所
229.一対一
しおりを挟む「だからこいつがやったのは<アタックグロウ>を掛けるふり、だったんだぜ」
「掛ける、ふり……?」
首を傾げながらナヴィに視線を移したレミア。
「あはは、そゆこと……」
「でもそれってどうして」
「うーん何となくだけど、あのカウンターをするって作戦を聞いたときはしっかり強化魔法掛けなきゃって思ってたんだけどさ。最後にヴィオネさんに立ち向かっていくレミアの背中が少しだけ大きく見えたんだよね」
「でもだからって……」
「ほら、最後は『力勝負』ってレミアも言っていたでしょ? その背中にあたしも賭けてみたくなったんだ。今ならヴィオネさんに勝てるかもってさ」
「そしてナヴィはその賭けに勝った」
「姉さま……」
「それとこいつはな、多分お前が終わった後こうなることもきっと予想してたんだと思うぜ」
ヴィオネットはナヴィの肩を寄せ頬をつんつんと突く。
「ちょ、やめてください! それじゃまるであたしがレミアのこと子供だって思ってるみたいじゃないですか!」
「あ? 違うのか?」
「まぁ、終わった後のことは考えていましたけど。それでもあたしは今のレミアなら超えられる……いや、超えてほしかったっていう願望に近かったかもしれませんが」
「ナヴィさん……」
「……殻、破れたんじゃない?」
ナヴィは顔を赤らめ頬を掻き恥ずかしそうに視線を逸らしながらレミアに言った。
「……はい!!」
「あら、レミア。あんたそんな笑顔できたんだ」
「え、は?」
「おー確かに。俺も子供の時以来だな。レミアのこんな顔見たの」
「ね、姉さままで!」
「ふふ」
あたしから見たら二人ともいい顔してますよ。
「なんだぁナヴィ? 俺らを見てにやにやしやがって。気持ち悪い」
「ひどい! それよりもう暗いですよ! 早くご飯にしましょう!」
「あ、それなら今日は私が!」
「あー? それよりも少し寝かせろ。俺も今日は疲れてんだ」
「ヒール掛けてあげますから大丈夫ですよ! さ、早く中に戻りましょ!」
うきうきとヴィオネットの背中を押しながら案内所へと戻っていくナヴィ。そしてその二人の背中をレミアは数秒立ち止まり見つめていた。
「ありがとう。姉さま。ナヴィさん……私これからもっと強くなっていきます」
二人の背中に深くお辞儀をしたレミア。その時、地面に落ちていたあるものが目に入った。
「あれ、これは……」
恐る恐るそれを拾うとレミアの瞳孔が開いた。
「姉さまの。龍鱗……」
「レミアー早く行くよー! さっさと晩御飯の用意しちゃおー!」
「あ、はい。ただいま!」
こうしてあたしを間に挟んだ特訓という名の命がけの姉妹喧嘩(?)はレミアの勝利で幕を閉じた。
そして晩御飯の準備を終えたあたし達は三人で食卓を囲んだ。
「もう食べていーか?」
「姉さま、もうちょっと待ってくださいね」
「ってもうフォーク持ってるじゃないですか!」
「いいんだよ。はい、せーの」
「「「いただきます!」」」
「おい、レミア。俺のだけ野菜多くねえか」
「何言ってるんですか姉さま。さっきの戦いで重傷だったんですよ。ナヴィさんの回復魔法でも治しきれなかったんですから野菜をたくさん食べて栄養取って早く寝なければなりませんよ」
「俺は子供か! それなら肉よこせ肉!」
「あ、ヴィオネさん! あたしの皿に食べたくない野菜移さないでくださいよ!」
「あ? おめぇも魔力すっからかんだろうが!」
「それは栄養とは関係ありません!」
「んなこたぁ知るか!」
「姉さま。別にいいですよお肉食べても」
「お、流石レミアそれなら早速用意してくれ!」
「外に保存用のお肉がありますから、それを取ってきて自分で料理してくださいね」
「レミアてめぇ俺が料理苦手なこと知ってて……」
「くすくす、レミア変わりましたね。ヴィオネさん」
「ナヴィてめぇのせいだ!」
「な、なんであたし!?」
「うるせぇちょっと表出ろ。ぼこぼこにしてやる!」
「姉さま、いいですからまずはその野菜を食べてからに。それとも重傷で食べられないから妹の私に食べさせてほしいと甘えてるのでしょうか?」
「……レ、ミ、ア、て、めぇ」
「あははは! レミア言うねぇ」
「ナヴィ。やっぱてめぇは俺が殺す」
「ちょ! 武力行使は良くないですよ! え、えぇ!? なんで魔力溜めてるんですか」
いつもと同じ席、いつもと同じ配膳。だけどいつもとは違う光景。
レミアとヴィオネさん二人の表情に濁りも曇りもない笑顔。
この案内所に来た初日はこんな光景になるなんて思ってもみなかったなぁ。
「ふふっ」
「なんだナヴィ。気持ち悪い笑い方しやがって」
「どうかなさいましたか」
「あーすみません。姉妹っていいなって思いまして……」
「そういえばナヴィさんにも妹さんがいらっしゃいましたよね」
「えぇ。今はあたしの代わりにマクレガン案内所を守ってくれてるんだ」
「お会いしてみたいですね」
「もちろん。必ず会わせてあげる。レミアもヴィオネさんも!」
「はい!」
「俺は別に必要ねぇよ」
「またまたそんなこと言わずにー! ……ふぅ」
ナヴィはそういうと席を立ち窓の外を眺めた。
「ナヴィさん?」
「エンフィー……元気にしてるかしら」
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