村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十三章 ブラッディフェスト 序章

230.動き出す闇

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「エンフィー! エンフィーはいるかーい!?」



 明朝、マクレガン案内所にて。



「んー誰だろう朝早くから……まだ朝の六時じゃん、今日はお休みなのに」



 ベッドで眠っていたエンフィーは、眠い目を擦りながら起き上がり、クローズの看板が掛けてある玄関の扉を開けた。



「はーい、大変申し訳ないのですが今日はきゅうぎょ……あれ?」



「へへ、久しぶりだね。エンフィー!」



「え、ハンナさん!?」



「うん。僕だよ!」



 敬礼をするように手を前に出し、笑顔で挨拶をするハンナ。



「お姉ちゃんがいなくなる前からお店には来ていませんでしたがどうしてたんですか?」



「いやぁ、まぁ修行も兼ねて遠方の方に足を運んで情報収集をしたり冒険者達とのコネクションを作ろうと思ってね」



「は、はぁ」



 ふとエンフィーはハンナの足元に目がいった。



 ハンナさんの靴、汚れもすごいし皮も剥げてる。



 きっと本当に遠くまで行って休みもなくそのままの足でここまで戻ってきたんだ。



 でもなんでこのタイミングに?



「あのーエンフィー? どうしたんだい顎に手を当てて固まっちゃってさ」



 考え込むエンフィーの顔を下から覗きこむハンナ



「あ、すみません。お疲れでしょうし中に入って下さい。何かお出ししますから」



「おぉ悪いね! それじゃお言葉に甘えて」





「はい、どうぞ。いつものコーヒーですが」



「ありがとう。うーん。やっぱりこのコーヒーはここに帰ってきたことを思わせるような風味で安心するよ」



「褒めてるんですかね、それ」



「もちろん。僕はここのコーヒーが一番好きだ」



「あははは、ありがとうございます」

 エンフィーは苦笑いでハンナの感想に応えた。



「それで、ハンナさん。どうして朝早くからここへ?」



「あぁそのことなんだけど、そういえばナヴィはまだ帰っていないのかい?」



 ナヴィの名前を聞いた瞬間エンフィーはコップの縁を強く握った。



「……まだですね」



「そっか……いつ戻ってくるんだろうね」



「はい、手紙出してもらいたいものですよね」



「あはは、まぁナヴィらしいっちゃナヴィらしいけどね。こうって決めたことに対して周りが見えなくなるくらい没頭してしまうところ」



「それで困るのはこっちなんですけど……」



 ハンナはそれを笑ってごまかし、残っていたコーヒーをグイッと一気に飲んだ。



「さっきの質問なんだけどさ。ナヴィがいるいないどちらにしてもエンフィーにも話に来た、というよりかはこの案内所に話に来た。が正しいかな」



「案内所に?」



「うん。簡単に言うと注意勧告だ」



 ハンナの目が真剣で鋭い目つきに変わった。



「注意……勧告?」



「あぁ。実はね。最近一緒に組んだキュリオって人がリーダーの三人組パーティーをに一時的に入れてもらった時に上がった話なんだけど。そうだなちょうど二週間前か」





「その日、お目当てのダンジョンを周り終え、その人たちの住んでいたウィドルシティの宿に戻る時だった」



「ウィドルシティってここから馬で二週間くらいかかるところじゃないですか!? ってことはそのまま直接マクレガン案内所まで?」



 その問いに無言で頷くハンナ。







「今日はありがとなハンナ!」



「いーよいーよ。僕も欲しかった素材が手に入って大満足だし」



 僕らはダンジョンの出口で今日の功労を称えあっていた。



「オリバービレッジでしたっけ? あんまり聞かない名前だったからパーティーに入れてって言われたときは渋ってしまったけど……」



「いざ入ってみたら俺ら三人よりも全然強くてびっくりしたぜ。流石はレベル四十クラスの実力者だ」



「うーうん。君らが援護に徹してくれてたから好きなだけ暴れられたんだよ! それに君らも相当腕利きなパーティーだったしね」



「まぁ、そういえばハンナさん。さっきの技すごかったけどあの技って」



「あーあれはね」



 僕がその技について話し込もうとしていた瞬間だった。



「ん? 何か来ないか?」



「いいえ、キュリオ。あれは!」



「キュリオさーん!!」



 一人の案内人が泣きながら僕らの元へとやってきた。



「ちょ、どうしたんだザック。しがみつくな! そして泣くな。男だろ!」



「うーぐすっ。ウィドルシティが大変なんです。やっぱり僕の言っていた通りになったじゃないですか!」



「僕の言っていた通り?」



「あれ、あなたはここらじゃ見ない人ですね……? ってそんなことどうでもよくて!」



「落ち着いてくださいキュリオさん! とりあえず要件をお聞かせ願いますか?」



 キュリオパーティーの弓使いの女の子がザックさんに優しく話しかけたんだ。



「うぅ実は、出たんです!」



「「「でた?」」」



「はい、サーティーンプリンスターが!」



「は!?」

「え!?」

「うそ!?」

「……」



 僕らはあっけにとられて言葉が出なかった。



「とにかく戻ってきてください! 今他の手練れの冒険者も戦って食い止めてくれています! キュリオさんたちがいればなんとかなりそうなんです!」



「あの……キュリオさん。さっきザックさんが言ってた『僕の言った通り』って……」



 キュリオは唾を飲みハンナの肩を持った。



「実はな、最近魔王城の近くにある村や町が奴らに襲われていると聞いていてな」



「まさか」



「あぁ、俺も信じられんがウィドルシティもあんたのオリバービレッジや王都に比べれば魔王城とうちの街との距離はそう遠くはない」



「それじゃ本当に奴らが動き出した……?」



「あぁ、それもザックが言った通り。そして今回その侵攻を指揮してるのはどの軍もサーティーンプリンスターらしい」



「うそ……」



「と、まあ現状こんな感じだ。とりあえず急いで戻るぞ。まだ間に合うかもしれん」



「「はい!」」



「そ、そしたら僕も!」



「いや、ハンナ。お前は自分の村に戻れ!」



「え?」



「今は一刻も早く自分の身の周りの安全を確保するのが最優先だ」



「キュリオさん……」



「それに、こう見えても俺らの街だってそんなやわじゃないぜ」



「そうよ、だてに『魔王城に近い街、レベル上げにぴったり』って謳って宣伝してるだけのことがあるとこ見せなくちゃね」



「おう、心配すんな。俺らだけでも何とかなるからよ」



「みんな……」



 こうしてザックさんはキュリオパーティーを引き連れてウィドルシティへと戻っていった。



 そして僕が彼らを見たのはその後ろ姿が最後だった。
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