村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

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第十三章 ブラッディフェスト 序章

232.小さな街の大きな案内人

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「ウィドルシティの冒険者が……」



 カウンターに掛けていた手の力が抜け、崩れるように膝をつくハンナ。



「あの、えっとハンナさん!?」



「やっぱり、僕が、僕が手伝っていれば……」



「……ハンナさん。過ぎたことを後悔しても前には進みません」



「え……?」



「幸いにもその冒険者たちが必死に守ってくれたおかげでここら一帯の村や街の人々は逃げることができました」



「それは……」



「大事なのはここで彼らの死を悔やむことじゃないです。彼らの死をどう繋いでいくか。僕ならそう思いますよ」



 チックは崩れ落ちたハンナに微笑みかけた。



「チックさん……」



「ハンナさん。今あなたにできることは何ですか?」



「……! 僕にできること」



「そう。そして同じように、僕にできることは……」

「ここに集いし冒険者の皆さん!!」



「「「!?」」」



 チックはカウンターの上に仁王立ちをし、小さな体で腕を大きく広げた。



「分かりました。皆さんがどうしてもというなら僕が皆さんの頭脳となり、魔王軍との戦いに臨みましょう」



「え、チックさん!?」



「おぉ流石チック! 話が分かるじゃねぇか!」

「やっぱ男だな! お前も!」



「あはは、そりゃ皆さんとご一緒した時間は相当なものですからね」



「チックさん……」



 広げた手が、震えてる。



「さぁ、ハンナさん。行ってください、あなたの行動が村の生存率に直結するんです」



「……」



「とはいえ、そんな心配してもらわなくて大丈夫ですよ」



「え?」



「僕も、ここにいる冒険者もやわじゃないですから」



 ハンナを見つめ笑みを浮かべるチック。



「でも気合だけじゃどうしようも」



「気合だけではありません」



 チックは震える手でシャツのボタンを外し、胸のタトゥーを冒険者に見せつけた。



「チックさん、あなたは……」



「さぁ、ここに集う勇敢な冒険者たちよ、『上級ガイド チック・ラディ』と共に魔王軍に立ち向かおうぞ!」



「「「おぉ!!」」」



 チックに鼓舞された冒険者は雄叫びを挙げ、武器を頭上に掲げた。



「あなた、上級ガイドだったんだね」



 ハンナの声が聞こえたチックがハンナにのみ聞こえる声で呟く。



「ハンナさん。またどこかでお会いしましょう」



「……分かった。必ずだよ」









「と、まぁこうして僕はその街を出てここまで急いで戻ってきたってわけさ」



「なるほど……ウィドルシティは全壊、そしてその小さな街もきっと……」



「あぁ、もともとそんなに巨大な都市でもないから他の案内所での情報は少なくてね」



「……そうですか、けどその人も上級ガイドだったんですよね?」



「うん、それにレベル四十クラスの冒険者もいたからきっといい勝負はできると思う」



「なるほど……ってハンナさん?」



 話を終えたハンナの目が閉じかかる。



「あ、あぁごめん。三日ほど睡眠が取れてなくてね、急いでここまで来たから体もあまり休めてなくて……これから対策も立てていかないといけないのに」



「いえ、ハンナさんのおかげで時間的にはまだ余裕があると思います。今日はお姉ちゃんの部屋でお休みになって下さい。ハンナさんの疲れが取れたらアミスさんも入れて話しましょう」



「うん、ありがとう。助かる……よ」



 ハンナは机に突っ伏しそのまま眠った。



「ハンナさん。私たちのこと心配してくれて……」



「おはようなのですー」



 大きなあくびをしながら階段を降りてきたアミス。



「アミスさんおはようございます!」



「エンフィーさん今日は休みなのに早いのです、ってあれ、その人は」



「あぁこの人はハンナさん、今は寝ちゃってるからあとで紹介しますね」



「……分かったのです! それでこの方はこのままここで寝かせるのですか?」



「いえ、お姉ちゃんの部屋に」



「わかったのです! そしてら、よいしょっと」



「あ、いきなり体持ったりしたら起きちゃいますよ」



「ぐーっ。ぐーっ」



 って全然起きない……。それだけ疲労がたまってたんだ。



「意外と軽いのです。じゃあ持っていくのですー!」



 ハンナをおぶったアミスは彼女をナヴィの部屋へと連れて行った。



「あ、ありがとうございます!」



「……」



「……ふーっ」



 今できること……か。



「えっとーたしかここに。あった。えーっと二、三通残ってた気が……って最後の一通じゃん!」



 エンフィーはカウンター裏にあるレターセットを取り出した。



「とりあえず情報はもう回っているだろうけど、ハンナさんの話とかをスーザンさんに報告しよう」



 そこから一時間ほどの時間を掛け、スーザンへの手紙を書き終えた。



「よし、これでよし。昼には郵便のおじさんが来るし、今日の夜には届きそうかな」



 後は、ハンナさんが起きるまでにアミスさんとオリバービレッジの冒険者の数やレベルを調べて対抗できる戦力を探す。それでモンスターの特性を踏まえて作戦を考えて提案できるくらにはしておこう。



 よし。あれ……?



 書き終わった紙の下からもう一通の便箋が張り付いていたことに気が付いた。



「なんだもう一通あったのか……とはいえ、別に出す人なんていないけど……」



『……お店のことよろしくね』



「お姉ちゃん」



 お店を出て行くときにこういってたっけ。



「……だめだ。頼れない。ここでお姉ちゃんを頼っちゃったら……」



「……フィーさん、エンフィーさん! ぼーっとしてどうしたのですか!?」



「うわっ! アミスさんどうしたんですか!?」



 運んでから一時間くらい出てこなかったけど何してたんだろ。



「あ、ハンナさんの身体から悪臭がしたので体を拭いてあげてたのです!」



「悪臭って。体ほとんど洗ってなかったんだハンナさん」



「そうみたいですね。体も痩せているというよりかは軽い飢餓状態みたいな感じでしたし。ってあれ、手紙なのですか?」



 アミスはハンナの手に持っていたスーザン宛の手紙が目に入った。



「あ、はい」



 その時アミスの耳がぴくぴくと大きく動く。



「ちょうどいいですね、そろそろ来ますよ」



「え?」



「郵便屋さんです」



 まだ音はしないけど……。あ、たしかアミスさんの耳はかなり遠くの音まで聞こえる特別製って言ってたわね。



「今日は少し早いんですね」



「もしよければアミスが外にお出しするのですよ!」



「あ、お願いしてもいいですか」



「はーいなのです!」



 アミスは笑顔でエンフィーの手紙を受け取り外へと持っていくのであった。
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