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第十三章 ブラッディフェスト 序章
251.案内人ディノリア
しおりを挟む「現れろ!! <炎の精霊 ウルカヌス!>」
「バーサーク!! アナザーフォーム!!」
二人の変身していく姿を見たディノールがにやりと笑った。
「ようやく本気か。さぁこい。真っ向からねじ伏せてやる」
「行くぞ、クオード! 一瞬で決めてやる」
「あぁ!」
「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」
あれは数年前のことだった。
俺が先代から引き継いだグローリア案内所のマスターに就任してすぐのこと。
引継ぎの業務と当時から足を運んでいた常連の冒険者たちの案内で手一杯となっていたある日。
「姉さま」
「ん? どうしたレミア。話があるなら忙しいからまた後で……」
「玄関の前に人が……」
「ん?」
俺はいつもの常連の冒険者たちだと思い、扉を開けた。
「ん? あんた誰?」
「俺の名前はディノリア! ドラゴン属の案内人だ! ヴィオネット・グローリアという案内人を探しに来た! そのものはこちらにおられるか」
なんだこいつ……。
こんな貧相な見た目でドラゴン属だと?
忙しいって時に何なんだよ。
「えーっと。それは俺のことだが」
「え……女」
ディノリアの視線は俺の身体を嘗め回すように動いていた。
その姿を見たときに俺の身体が反射的に動き、気づいたらディノリアの頬に俺の拳が……。
「ぶっふぉ!!」
「あ、わり。つい」
「何っつー力だ……それより、これがあの噂に聞くヴィオネット・グローリアの力か……いやー納得だ」
「何……?」
こいつあの反射的に出た力をセーブできていない拳を受けて平然と立ち上がりやがった。
「殴ったことは謝ろう。それで、そのドラゴン属の案内人がうちに何の用だ」
「んーそうだな。単刀直入に言おう。ここで働かせてくれ!」
「嫌だ」
「……えーっとー。あれ? なんか聞こえたような」
「嫌だ」
「……」
「いや……」
「嫌なのはもうわかったから!!」
「まぁいい。理由は聞いてやろう。どうしてうちで働きたいんだ?」
どーせしょうもない理由だろ。デンバード山脈で、いや、ここら一帯の土地じゃ一番の歴史を持ち、一番の実績を持つうちの案内所だ。名前も聞いたことのねぇ案内人達が富や名声を求めてうちにやってくるのは日常茶飯事だ。今回のこいつもそんな感じだろ。いつも通りテキトーなこと言って追い出せば……。
「強くなりたいんだ」
「……は?」
「案内人として、もっと強くなりたいんだ」
「お前馬鹿か。俺達案内人は先天的に戦闘能力は冒険者に比べて圧倒的に低いんだ。今更少し強くなったくらいでどうにもならん」
「それでもあんたは強いじゃないか」
「……俺は。特別だから」
「なら俺も特別になる」
「何言ってんだ! だから俺とてめぇはそもそもがちげぇんだ。さっき殴った感触で分かった。お前は弱い、これまでも、そしてこれからも。諦めろ。別の道を探せ」
俺がそう言い放ち案内所へと戻ろうとした瞬間だった。
背後からゴン、と鈍い音が聞こえた。
土下座……?
「お前何やってんだ」
「土下座」
「勝手にやってろ」
「あぁ、ずっとやってる」
「いつまで?」
「ヴィオネットが俺を雇ってくれるまで」
なんなんだこいつ。
「お前の何がそこまでさせるんだ」
「俺は冒険者を、人々を助けられる。守ることができる。そんな案内人になりたい。そのためには同じドラゴン属のあんたに戦い方を教えてもらいたい。だからここに来たんだ」
「俺が弱いことは重々承知だ。だけど、だからこそ強くなりにここまで来たんだ」
「……ふーん」
俺は奴の足元を見た。
ボロボロの靴と汚れたズボン。
ここら辺の人間じゃないのか。よく見たら格好も長旅をしてきているような風貌と荷物だな。
それに、こいつの目……。
「分かった……」
「え!? 本当か? 雇ってくれるのか?」
「勘違いするな。ここに居座られても困る。だからテストしてやる」
「テスト……?」
「あぁ。内容は簡単だ。これから組み手をして戦闘中に一回でも膝を着かせたらお前の勝ち。ここで案内人として雇ってやる」
「膝を着かせたら? おぉ! やってやる!!」
「だが」
「負けたらそれは見込みなしということだ。ここから立ち去れ。これは約束だ」
「……わかった。約束しよう」
一回ぼこぼこにしてやれば気が済んで帰っていくだろう。
そして、案の定。
「ぐふっ、なんつー力……だ」
「ふん。やっぱただの雑魚じゃねぇか」
センスのかけらもねぇ奴だと思った。
ディノリアは俺に一度も触れることができず。あっけなくやられていった。
「さぁ、約束は約束だディノリア。ここから立ち去ってもらうぞ」
「……分かった」
ディノリアはそう言うと案内所に背中を向け歩き出した。
「ん?」
しかし、ディノリアの足取りは重くなるどころかむしろ来た時よりも軽い足取りで下山していったように見えた。
「……まさか……な」
「姉さま! そろそろ戻ってこれますか!? 私一人じゃ回らなくて……」
「あぁ、すまん。今行く」
ディノリアと始めてあったその日。これで彼とはもう二度と合わないだろうと思った。
だが、そう思っていたのは私だけだった。
次の日。
いつものように受付をしていると。
「おーい、ヴィオネットいるんだろ!? 早く出て来いよ!!」
「はっ!?」
案内所の窓から外を覗くと昨日これでもかというほどぼこぼこにしたはずのあの案内人が玄関先に立っていた。
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