村人Aは勇者パーティーに入りたい! ~圧倒的モブが史上最高の案内人を目指します~

凛 捺也

文字の大きさ
255 / 262
第十三章 ブラッディフェスト 序章

251.案内人ディノリア

しおりを挟む

「現れろ!! <炎の精霊 ウルカヌス!>」

「バーサーク!! アナザーフォーム!!」



 二人の変身していく姿を見たディノールがにやりと笑った。



「ようやく本気か。さぁこい。真っ向からねじ伏せてやる」



「行くぞ、クオード! 一瞬で決めてやる」

「あぁ!」



「「はぁぁぁぁぁぁ!!」」



 あれは数年前のことだった。



 俺が先代から引き継いだグローリア案内所のマスターに就任してすぐのこと。



 引継ぎの業務と当時から足を運んでいた常連の冒険者たちの案内で手一杯となっていたある日。



「姉さま」



「ん? どうしたレミア。話があるなら忙しいからまた後で……」



「玄関の前に人が……」



「ん?」



 俺はいつもの常連の冒険者たちだと思い、扉を開けた。



「ん? あんた誰?」



「俺の名前はディノリア! ドラゴン属の案内人だ! ヴィオネット・グローリアという案内人を探しに来た! そのものはこちらにおられるか」



 なんだこいつ……。



 こんな貧相な見た目でドラゴン属だと?



 忙しいって時に何なんだよ。



「えーっと。それは俺のことだが」



「え……女」



 ディノリアの視線は俺の身体を嘗め回すように動いていた。



 その姿を見たときに俺の身体が反射的に動き、気づいたらディノリアの頬に俺の拳が……。



「ぶっふぉ!!」



「あ、わり。つい」



「何っつー力だ……それより、これがあの噂に聞くヴィオネット・グローリアの力か……いやー納得だ」



「何……?」



 こいつあの反射的に出た力をセーブできていない拳を受けて平然と立ち上がりやがった。



「殴ったことは謝ろう。それで、そのドラゴン属の案内人がうちに何の用だ」



「んーそうだな。単刀直入に言おう。ここで働かせてくれ!」



「嫌だ」



「……えーっとー。あれ? なんか聞こえたような」



「嫌だ」



「……」



「いや……」



「嫌なのはもうわかったから!!」



「まぁいい。理由は聞いてやろう。どうしてうちで働きたいんだ?」



 どーせしょうもない理由だろ。デンバード山脈で、いや、ここら一帯の土地じゃ一番の歴史を持ち、一番の実績を持つうちの案内所だ。名前も聞いたことのねぇ案内人達が富や名声を求めてうちにやってくるのは日常茶飯事だ。今回のこいつもそんな感じだろ。いつも通りテキトーなこと言って追い出せば……。



「強くなりたいんだ」



「……は?」



「案内人として、もっと強くなりたいんだ」



「お前馬鹿か。俺達案内人は先天的に戦闘能力は冒険者に比べて圧倒的に低いんだ。今更少し強くなったくらいでどうにもならん」



「それでもあんたは強いじゃないか」



「……俺は。特別だから」



「なら俺も特別になる」



「何言ってんだ! だから俺とてめぇはそもそもがちげぇんだ。さっき殴った感触で分かった。お前は弱い、これまでも、そしてこれからも。諦めろ。別の道を探せ」



 俺がそう言い放ち案内所へと戻ろうとした瞬間だった。



 背後からゴン、と鈍い音が聞こえた。



 土下座……?



「お前何やってんだ」



「土下座」



「勝手にやってろ」



「あぁ、ずっとやってる」



「いつまで?」



「ヴィオネットが俺を雇ってくれるまで」



 なんなんだこいつ。



「お前の何がそこまでさせるんだ」



「俺は冒険者を、人々を助けられる。守ることができる。そんな案内人になりたい。そのためには同じドラゴン属のあんたに戦い方を教えてもらいたい。だからここに来たんだ」

「俺が弱いことは重々承知だ。だけど、だからこそ強くなりにここまで来たんだ」



「……ふーん」



 俺は奴の足元を見た。



 ボロボロの靴と汚れたズボン。



 ここら辺の人間じゃないのか。よく見たら格好も長旅をしてきているような風貌と荷物だな。



 それに、こいつの目……。



「分かった……」



「え!? 本当か? 雇ってくれるのか?」



「勘違いするな。ここに居座られても困る。だからテストしてやる」



「テスト……?」



「あぁ。内容は簡単だ。これから組み手をして戦闘中に一回でも膝を着かせたらお前の勝ち。ここで案内人として雇ってやる」



「膝を着かせたら? おぉ! やってやる!!」



「だが」

「負けたらそれは見込みなしということだ。ここから立ち去れ。これは約束だ」



「……わかった。約束しよう」



 一回ぼこぼこにしてやれば気が済んで帰っていくだろう。





 そして、案の定。



「ぐふっ、なんつー力……だ」



「ふん。やっぱただの雑魚じゃねぇか」



 センスのかけらもねぇ奴だと思った。



 ディノリアは俺に一度も触れることができず。あっけなくやられていった。



「さぁ、約束は約束だディノリア。ここから立ち去ってもらうぞ」



「……分かった」



 ディノリアはそう言うと案内所に背中を向け歩き出した。



「ん?」



 しかし、ディノリアの足取りは重くなるどころかむしろ来た時よりも軽い足取りで下山していったように見えた。



「……まさか……な」



「姉さま! そろそろ戻ってこれますか!? 私一人じゃ回らなくて……」



「あぁ、すまん。今行く」



 ディノリアと始めてあったその日。これで彼とはもう二度と合わないだろうと思った。





 だが、そう思っていたのは私だけだった。



 次の日。



 いつものように受付をしていると。



「おーい、ヴィオネットいるんだろ!? 早く出て来いよ!!」



「はっ!?」



 案内所の窓から外を覗くと昨日これでもかというほどぼこぼこにしたはずのあの案内人が玄関先に立っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく
ファンタジー
就職氷河期を生き抜き、数々の職を転々とした末に無職となった50代の俺。 ある日、病で倒れ、気づけば異世界のエルフの賢者に転生していた!? 俺が転生したのは、高位エルフの秘術の失敗によって魂が取り込まれた賢者の肉体。 第二の人生をやり直そうと思ったのも束の間、俺の周囲は大騒ぎだ。 「導き手の復活か!?」「賢者を語る偽物か!?」 信仰派と保守派が入り乱れ、エルフの社会はざわつき始める。 賢者の力を示すため、次々と課される困難な試練。 様々な事件に巻き込まれながらも、俺は異世界で無双する! 異世界ざわつき転生譚、ここに開幕! ※話数は多いですが、一話ごとのボリュームは少なめです。 ※「小説家になろう」「カクヨム」「Caita」にも掲載しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...