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第九章 ルミーヴィアへの旅編
第167話 手紙
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師匠がオーガを倒した後、派遣されてきた王国騎士団が調査した結果、オーガ以外はAランク以上のモンスターはいないという判断が下され、ヴィレアの冒険者ギルドはこれまで通り中級者向けギルドとして存続することとなった。
一安心といきたいところだが、師匠と調査に入った騎士団がかなりモンスターを狩ってしまったため、モンスターの数が戻るまでしばらく討伐クエストは禁止になった。
モンスターを狩りつくしてしまえば、必要な素材が取れなくなってしまうし、違うところからやってきたモンスターによって歪な生態系が構築されてしまう可能性もあるからだ。
突然討伐クエストがなくなったことで他のクエストの取り合いになるのを避けるため、ヴィレアのギルドを一時的に離れてラムハに稼ぎに来た冒険者もいるみたいだ。
俺は討伐以外のクエストをわざわざ受けに行く必要はないため、もうすっかり慣れた新しい修行メニューをやりながら、暇を持て余す毎日を送っていた。
疲れきって最近あまり出来ていなかったボードゲームをまた三人で出来るようになったのはいいことだが、いまいち毎日に充実感がないのだ。
そんなときに俺のもとに一通の手紙が届く。俺に手紙とは珍しい。俺がここに住んでいるのを知っているのはアドレアとマリー、そしてアクスウィルのローランたち、レオンさんのところの友人──挙げてみるとそれなりにいるな。
いったい誰からだろうと差出人を見ると、マリーからだった。ラムハまで遊びに来てもいいかとか、ラムハに行く用事があるから泊めてほしいとか、そういった要件だろうか。
以前は俺がミャクーに行ったから、今度はマリーがこっちに来るのかも、なんて想像しながら中身を読むと、思ったより真面目な話だった。
マリーがアルノ兄さんに回復魔法の師として「無限の光」の回復魔法使いレネを紹介してもらったこと。
そのレネさんはルミーヴィアにいるためそこまで行きたいのだが、護衛を雇うほどのお金もなく、一人で行けばみすみす命を捨てに行くようなものだということ。
そこでダメ元で相場ほどの金額は出せないが、俺に護衛としてついてくれないかと手紙を出してみたこと。
手紙を読み終えてすぐに、俺はまず「行きたい」と思った。
もちろん元パーティメンバーとして力になりたいと思う気持ちもあるが、正直なところ旅が出来るのが嬉しいのだ。
ちょうど討伐にも行けず退屈していたところに、こんなおあつらえ向きな話が飛び込んでくるとは──もうこれは行くしかないだろう。
つまるところ、旅ができる上に人助けもできて──いや、人助けができる上に旅もできて一石二鳥ということだ。
早速、師匠に相談してから手紙の返事を書こう。
一安心といきたいところだが、師匠と調査に入った騎士団がかなりモンスターを狩ってしまったため、モンスターの数が戻るまでしばらく討伐クエストは禁止になった。
モンスターを狩りつくしてしまえば、必要な素材が取れなくなってしまうし、違うところからやってきたモンスターによって歪な生態系が構築されてしまう可能性もあるからだ。
突然討伐クエストがなくなったことで他のクエストの取り合いになるのを避けるため、ヴィレアのギルドを一時的に離れてラムハに稼ぎに来た冒険者もいるみたいだ。
俺は討伐以外のクエストをわざわざ受けに行く必要はないため、もうすっかり慣れた新しい修行メニューをやりながら、暇を持て余す毎日を送っていた。
疲れきって最近あまり出来ていなかったボードゲームをまた三人で出来るようになったのはいいことだが、いまいち毎日に充実感がないのだ。
そんなときに俺のもとに一通の手紙が届く。俺に手紙とは珍しい。俺がここに住んでいるのを知っているのはアドレアとマリー、そしてアクスウィルのローランたち、レオンさんのところの友人──挙げてみるとそれなりにいるな。
いったい誰からだろうと差出人を見ると、マリーからだった。ラムハまで遊びに来てもいいかとか、ラムハに行く用事があるから泊めてほしいとか、そういった要件だろうか。
以前は俺がミャクーに行ったから、今度はマリーがこっちに来るのかも、なんて想像しながら中身を読むと、思ったより真面目な話だった。
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ちょうど討伐にも行けず退屈していたところに、こんなおあつらえ向きな話が飛び込んでくるとは──もうこれは行くしかないだろう。
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早速、師匠に相談してから手紙の返事を書こう。
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