261 / 328
第十一章 サラの魔法道場編
第254話 初めてのAランクモンスター討伐 其の五(サラ視点)
しおりを挟む
コルネくんが冒険者ギルドから出ていった後、足音が遠ざかっていき聞こえなくなったのを確かめてから私はそっとギルドの扉を開ける。隙間から外を見ると、コルネくんの姿は豆粒のように小さくなっていた。
あそこまで行ったのなら大丈夫だろう──そう判断し、ゆっくりとギルドの扉を開けて外に出る。鍵を閉めたのをしっかりと確認し、気付かれないようにコルネくんの後を追いかける。
これでも私はレオンに褒められるくらいには気配を消すのが上手い。それにこの山は私の庭も同然──コルネくんもちょっとやそっとでは気付かないだろう。もし見つかっても「キノコを採りに来た」などと適当な言い訳をすればいい。
後をつけるなど我ながら少し気持ち悪い気もするが、私のところでロンドの大事な一番弟子に万が一のことがあってはいけない。そう、これは使命感によるものなのだ。後ろめたいことではないのだ。
コルネくんが山に入っていったので、私もそれを追う。私らに狩られると分かってから賢いモンスターは警戒して下りてこなくなったため、きっとしばらくは強いモンスターには出会わないだろうが周りに気を配っておく。
そうこうしているうちにコルネくんは水を飲むマーナ・ガルムを見つけたようだ。ここでは仕掛けずに追うつもりか──急に走りだしたコルネくんに追いつき、木の影から闘いを見守る。
いざとなれば私が魔法で助けに入るが、コルネくんもマーナ・ガルムと闘うだけの実力はあると判断されたのだ。ここはじっくりとAランク冒険者の実力を見せてもらおうじゃないか。
あれは──魔力操作で攻撃を避けているのか。たしかに魔力操作を使えば不自然な動きで相手に行動を読まれにくくなるが……剣士だとこういう使い方もできるのか、参考になるねぇ。
そのまま隙だらけのマーナ・ガルムに炎の魔法剣で──やはりあの体勢からだと力が入らないようだ。
そこからもう一度、コルネくんは同じ手でマーナ・ガルムを削ろうとするが──さすがにマーナ・ガルムもその手は食わないと避けた彼を爪で抉ろうとする。
まずい──そう思い、魔法を発動させようとするが、コルネくんの体の方も一度避けたところからさらにスススと横にずれていく。このままいけば重傷にはならないだろうと考え、静観を決める。
案の定、コルネくんは少し傷を負ったが、すぐにマーナ・ガルムを倒していた。剣の腕は私には分からないが、魔力操作は使い方が上手く、魔力の動き方も滑らかだった。
仲間の声を聞きつけてか、他のマーナ・ガルムたちが集まってきおったが、こいつらは私がまとめて倒しておこう。コルネくんはクエストにあった一体をきちんと独力で倒したのだから、私がクエストを手伝ったことにはならない。さてと──
「ゲ──」
「ブライト!」
<ゲヘナ>を使おうとした途端、視界が眩いほどの白に塗りつぶされ、思わず目を瞑る。そうか──コルネくんは自分が一人だと思っているのだから、マーナ・ガルムに囲まれそうになれば、ブライトを使って逃げるのは当たり前だ。
私だけでなくマーナ・ガルムも目が開けられないらしく、その場で動き回っているのが分かる。目が見えるようになれば、おそらく一直線に斜面を下るコルネくんに突っ込んでいくだろう──そこを私が叩く。
音でマーナ・ガルムたちに気付かれないようにじっと待っていると、ドタバタとマーナ・ガルムが動き出すのが分かる。
私の目が見えるようになると即座に詠唱をし、コルネくんの手前にゲヘナを使う。範囲に入っていた二体はすぐに燃え、残りのうち数体は斜面でスピードを抑えきれず自ら炎に突っ込んだ。
動きだすのが遅かった一体が私に気付いて向かってきたので、発動していたゲヘナを一度解除する。正面から飛びかかってくるマーナ・ガルムを、槍状に延ばした炎を操る<ファイア・ランス>で地面に縫いつけ、そのままゲヘナで同じように燃やす。
すぐにゲヘナを解除し、水魔法で山火事にならないように枝を燃やす残り火を消しておく。
あとはコルネくんと一緒に先ほどの場所に戻って、素材を取ってくるだけだ。私が倒すといつも骨しか残らないので、マーナ・ガルムの毛皮を取れるのは久しぶりだ。
このクエストは一応素材クエストの体をとっているので、きっとコルネくんは素材をギルドで売ってくれるだろう。マーナ・ガルムの白銀色をした美しい毛皮を何に加工してもらおうかと考えると、ついつい鼻歌が出てしまう。
あそこまで行ったのなら大丈夫だろう──そう判断し、ゆっくりとギルドの扉を開けて外に出る。鍵を閉めたのをしっかりと確認し、気付かれないようにコルネくんの後を追いかける。
これでも私はレオンに褒められるくらいには気配を消すのが上手い。それにこの山は私の庭も同然──コルネくんもちょっとやそっとでは気付かないだろう。もし見つかっても「キノコを採りに来た」などと適当な言い訳をすればいい。
後をつけるなど我ながら少し気持ち悪い気もするが、私のところでロンドの大事な一番弟子に万が一のことがあってはいけない。そう、これは使命感によるものなのだ。後ろめたいことではないのだ。
コルネくんが山に入っていったので、私もそれを追う。私らに狩られると分かってから賢いモンスターは警戒して下りてこなくなったため、きっとしばらくは強いモンスターには出会わないだろうが周りに気を配っておく。
そうこうしているうちにコルネくんは水を飲むマーナ・ガルムを見つけたようだ。ここでは仕掛けずに追うつもりか──急に走りだしたコルネくんに追いつき、木の影から闘いを見守る。
いざとなれば私が魔法で助けに入るが、コルネくんもマーナ・ガルムと闘うだけの実力はあると判断されたのだ。ここはじっくりとAランク冒険者の実力を見せてもらおうじゃないか。
あれは──魔力操作で攻撃を避けているのか。たしかに魔力操作を使えば不自然な動きで相手に行動を読まれにくくなるが……剣士だとこういう使い方もできるのか、参考になるねぇ。
そのまま隙だらけのマーナ・ガルムに炎の魔法剣で──やはりあの体勢からだと力が入らないようだ。
そこからもう一度、コルネくんは同じ手でマーナ・ガルムを削ろうとするが──さすがにマーナ・ガルムもその手は食わないと避けた彼を爪で抉ろうとする。
まずい──そう思い、魔法を発動させようとするが、コルネくんの体の方も一度避けたところからさらにスススと横にずれていく。このままいけば重傷にはならないだろうと考え、静観を決める。
案の定、コルネくんは少し傷を負ったが、すぐにマーナ・ガルムを倒していた。剣の腕は私には分からないが、魔力操作は使い方が上手く、魔力の動き方も滑らかだった。
仲間の声を聞きつけてか、他のマーナ・ガルムたちが集まってきおったが、こいつらは私がまとめて倒しておこう。コルネくんはクエストにあった一体をきちんと独力で倒したのだから、私がクエストを手伝ったことにはならない。さてと──
「ゲ──」
「ブライト!」
<ゲヘナ>を使おうとした途端、視界が眩いほどの白に塗りつぶされ、思わず目を瞑る。そうか──コルネくんは自分が一人だと思っているのだから、マーナ・ガルムに囲まれそうになれば、ブライトを使って逃げるのは当たり前だ。
私だけでなくマーナ・ガルムも目が開けられないらしく、その場で動き回っているのが分かる。目が見えるようになれば、おそらく一直線に斜面を下るコルネくんに突っ込んでいくだろう──そこを私が叩く。
音でマーナ・ガルムたちに気付かれないようにじっと待っていると、ドタバタとマーナ・ガルムが動き出すのが分かる。
私の目が見えるようになると即座に詠唱をし、コルネくんの手前にゲヘナを使う。範囲に入っていた二体はすぐに燃え、残りのうち数体は斜面でスピードを抑えきれず自ら炎に突っ込んだ。
動きだすのが遅かった一体が私に気付いて向かってきたので、発動していたゲヘナを一度解除する。正面から飛びかかってくるマーナ・ガルムを、槍状に延ばした炎を操る<ファイア・ランス>で地面に縫いつけ、そのままゲヘナで同じように燃やす。
すぐにゲヘナを解除し、水魔法で山火事にならないように枝を燃やす残り火を消しておく。
あとはコルネくんと一緒に先ほどの場所に戻って、素材を取ってくるだけだ。私が倒すといつも骨しか残らないので、マーナ・ガルムの毛皮を取れるのは久しぶりだ。
このクエストは一応素材クエストの体をとっているので、きっとコルネくんは素材をギルドで売ってくれるだろう。マーナ・ガルムの白銀色をした美しい毛皮を何に加工してもらおうかと考えると、ついつい鼻歌が出てしまう。
0
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~
風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる