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     第二十九章

久しぶりの土地で

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 電車の中は家族連れが多く、とても賑やかだった。
僕達は、昔紀伊名と僕がお世話になった。孤児院に向かっている途中の電車内だ。紀伊名は、とても暗い顔をしてるが皆に迷惑をかけないようにと、笑顔を振舞っている。そして、電車を乗り継ぐ事二時間、やっとの思いで着いた。

「やっと着いた!二時間も座ってたら流石に疲れるわね」

「そうですね」

「とりあえず、予約した旅館に荷物を置こう。それからどこに行くか決めよう」

「賛成!荷物持ちながらは疲れるしね」

満場一致で、旅館に荷物を置くことにした。
僕と紀伊名は最初に行く所は決まっている。
もちろん、可奈さんのいる孤児院だ。まだあればいいんだけどな。可奈さん元気にやってるかな?

旅館には着いたが、写真とは大違いだった。
皆でどこに泊まるか、調べていたところ一番安く、ご飯も付いているという事でこの旅館にしたんだが、

「いかにも、幽霊が出そうな旅館ね…」

「大丈夫でしょ、幽霊なんて出るわけないって…」

美優は強がっていたが、絶対に怖がってる。
幽霊ね…
本当にいるなら見てみたいものだ。

「皆、行こうよ。先に行くよ?」

「「「ちょっと待ってーーー!」」」

「予約していた高野です」

「高野様と御一行様ですね。こちらへどうぞ」

ギシッ、ギシッ。大丈夫なのか、この廊下絶対に穴が空いてもおかしくないぞ?夜が危ないな、ライト持って来といて正解だった。

「こちらが高野様のお部屋になります。そして向かいが御一行様のお部屋になります。朝食とお夕飯の時間は七時三十分となっておりますので、下の食堂まで来てください」

「ありがとうございます」

「先輩、あの夜先輩の部屋に行ってもいいですか?」

「じゃあ私も」

「涼平、お願い!」

「涼ちゃんと寝るなんて久しぶりだね!」

なんの為に二部屋も予約したと思ってるんだよ。皆あの時、別部屋がいいって言うから向かいの部屋にしたのに無駄じゃないか!

「分かったから荷物置いてきたら?」

「さっすが涼平!」

そんな事いつもなら言わないくせに。こういう時だけ頼って来るんだから。

「じゃあ僕と紀伊名は孤児院に行ってくるから。集合場所はこの旅館に来る時通った商店街の前で」

「あんた何言ってんのよ?」

「何って何が?」

「私達も行くに決まってるでしょ?」

「なんで?思い出も何もないのに?」

「あんたがここでどんな生活していたか気になるからに決まってるでしょ?」

なぜこうなる!僕は可奈さんに挨拶に行こうと思ってたのに、かと言って美優は言い出したら止まらないからなぁ。しょうがないかな?

「分かった。でも変な事言わないでよ!」

「分かってるって!」

本当に分かってるのかな?なんか不安だな。

そうして、旅館から二十分歩いて、孤児院に着いた。

「お兄ちゃん達誰?」

「君、ここに可奈さんって人いるかな?」

「いるよ。でも今風邪引いてて困ってるの」

またか、なんでこういう時に限って風邪を引くかな。
とりあえず案内してもらおう。の前に、

「君、ここに料理を作れる人、いる?」

「可奈さん以外作れないよ」

なるほど、じゃあやるしかないか。

「可奈さんの所に案内してくれないかな?僕昔ここにいたから顔を見たら分かると思うから」

「そうなの?それじゃあ、こっちに来て!」

僕は小さい手に引っ張られて、可奈さんの部屋に案内してもらった。  

「可奈さん。昔ここにいたって人来てくれたよ」

「お久しぶりです。可奈さん」

「涼平君、久しぶりね!元気にしてた?」

「はい、ピンピンしてます。おかゆ作ってくるので待っていてください」

「そんな、悪いわよ」

「遠慮はなしです!」

そう言って、僕はキッチンに向かった。
そういえば可奈さんが風邪を引いた時も僕がおかゆ作って持って行ったな。あの時は、少し焦げたけど。

「可奈さん、出来ましたよ!はい口開けてください」

「涼平君、料理が昔より上手くなったんじゃない?」

「そうですか?」

「そうよー。昔のおかゆは焦げてたのに、今はこんなに美味しく出来てる」

僕は、部屋を出た。
すると紀伊名が心配した顔をして僕の所に来た。

「可奈さん大丈夫だった?」

「うん、明日には回復すると思うよ」

「良かったー」

とりあえず、こんなものかな。美優達にお使い頼んだけど、大丈夫かな?
心配だから、行ってくるか。
                      続く……
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