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     第八章

筋肉をつける!

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 今、怪我をしている僕に出来ることは数少なく
家に一度戻って、『拳法の極意』という本を探したいけどそういう訳にもいかないので、トレーニングをする事にした。幸いにもナイフが刺さったのは心臓の少し上ら辺だった。
でも、ナイフを抜いたせいで出血量が多く危ない状況だったらしい。だから今は左腕が使えないので腹筋から始めることにした。
「さて、どうやってやろう?そうだ!」
僕は床に転がり腹筋を始めたが、それはすぐに止められた。そう。看護師さんが来たからである。
「高野さん!何してるんですか?」 
「腹筋ですが何か?」
「見たら分かります。どうしてこんな所でしてるのかを聞いてるんです!」
どう言い訳をしよう?
ん?こんな所?
「あの?下にトレーニングルームみたいなのがあるんですか?」
「ええありますよ。今の院長が筋肉バカでこの病院を改装する時にくわえられたね」
そうなんだ。全然知らなかった。という事はここの院長大丈夫かな?そんな事より
「だったら、僕をそこに」
「ダメです!」
まさかの即答。
最後まで聞いてくれたっていいじゃないか。
「今は、ダメです。一時になったらまた来るのでその時に一緒に行きましょう。決して一人で行ってはダメですからね」
「分かりました…」
さっきは止められたのに、どうして許してくれたんだろう?まぁいいか、許しを得たんだから。
 やっと一時か、そろそろ来る時間かな?
コンコンっとノックが鳴って、看護師さんが入ってきた。
「高野さん。行きますよ」
「はい」
よし、これでトレーニングが出来る!
「高野さん。トレーニングルームを使う時は私か知り合いの方と来て下さい。もしもの時対応出来ませんから」
「はい。別にお見舞いに来てくれた人でもいいですか?」
「構いませんけど」
なら、美優達が来た時に来るか、場所も大体分かったし。
「着きましたよ。ここがトレーニングルームです絶対に使う時は一人じゃダメですからね」
最後まで念を押された。そこまで、信用ないのかな僕って。
よし、始めよう。今は腹筋をやるしかない。腕立ては左腕が完治してからだな。
そうやって、トレーニングに夢中になっていた僕は看護師さんに止められた。
「もう終わって下さい。時間です」
時間?ああそうか、他の患者さんを見に行く時間だろう。なら今日はここまでにしておこう。
「分かりました」
「部屋に戻ったら、汗を拭いといて下さい」
さてと、戻ろう。確かに汗も拭かないとだしね。
やっと着いた。
結構遠いんだな。トレーニングルームって。
そして、部屋に入ると、書き置きが置いてあり本が一冊置いてあった。『また、来ます』と書かれた書き置きと、教室に置いたままだった読みかけの本が一冊。
誰だろう?
美優か楓かな?
どちらにしても、退屈しのぎには、なるかな。それより、家に戻って本を、取りに行きたい!
確かに、本は好きだが、今は誰かを守れるようになることが先決だ。かと言って美優に取りに行かせるのもなぁ。多分、今の押入れの中は本で埋まってるだろうから探させるのは気が引けるし。
 どうしようか、でも楓にも頼みづらいし後輩の舞にも行かせたくない。
ああもう!どうしたらいいんだ!
また、コンコンっと鳴って入ってきたのは
                   続く…
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