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     第十三章

僕の悲しい過去①

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 誕生日なんて、すっかり忘れてた。こうやって祝ってもらえるのは、何年ぶりだろう?みんなは楽しそうで良かった。
「涼平!誕生日おめでとー!」
クラッカーが、リビングに鳴り響いた。
盛大だな。流石に、この部屋をの飾り付けは時間がかかる。さっきの足止めは無駄じゃなかったみたいだな。

「ありがとう。こんなに明るい誕生日は久しぶりだよ」
少し涙腺が緩んだ。
「あれ?涼平君泣いてるの?」
「な、泣いてないよ!」
「嘘はいけませねぇ。先輩絶対に泣いてましたよー」
「だから、泣いてないって」
いや、実際は泣いていた。
昔は、こんなじゃなかったから。
「そういえば、涼平。おじさんとおばさんは?掃除しに来た時もいなかったけど」

今、言うべきというより言っとかないと。
「この、雰囲気壊したくないけど言うよ。今回の僕のしたことにも関係あるから」
「両親は、死んだよ。母さんは事件に巻き込まれて、父さんはその事件の銃撃戦の流れ弾で」
僕は、包み隠さず僕の過去を話した。

 僕の父さんは、警察官でかっこ良かった。
だけど、事件が多いせいか、いつも帰っては来なかった。帰ってくるのは週に二回で会うことすらままならなかった。
当然、寂しい時もあったけど、母さんがいつも近くにいたのでそこまでじゃなかった。

そして、引っ越しが決まってからもこの事が多く本ばかり読んでいた。
別に遊ぶ相手などいなかったが、学校ではそこそこ友達はいた。いじめられることもなかったし、悪口を言われる事もない普通の日常だった。
でも、家に帰るといつも母さんは悲しそうな顔をしていた。
だけど、無理して笑顔を作って僕を不安にさせないようにしてくれてた。

あの日が来るまでは。

ある晴れた日曜日に、母さんと一緒に買い物に行っていた。途中で母さんは銀行に寄ってお金をおろそうとしているところで事件はおきた。
「金をだせ!騒ぐなよ。騒いだら撃つからな!警察にも通報は駄目だいいな!」
銀行強盗。よくあるやつだった。マスクで顔を隠して銃を持っている。
でも、外にいる人達が通報してくれる。
だったら無駄じゃないか。最後は捕まって牢獄行き。考えたら、分かることだ。

銀行の役員さんが、怖がって、警察に通報するあのボタンを押してしまっていた。
バカなことを。
「通報したな?見せしめにそうだなお前!こっちに来い!」
普通にこうなる。
待っておけば良かったものの。
選ばれた、女性は怖がって動けない状態だった。
「早くしろ!」
「待って下さい!私が…代わりになります」
なんで?母さん?何してるの?
「ごめんね涼平。行ってくる」
行かないでよ。母さん!
僕はその時初めて震えた。
母さんを失う恐怖と悲しみで一杯だった。
パァーン。銃声、母さん撃たれたの?嘘だよね?嘘って言って。いつもみたいに笑顔で母さん!
「お前ら、わかったな。妙な事したらこうなるって事覚えとけ!」
周りは悲鳴をあげたが、犯人の銃声でかき消された。

数分後、警察が到着して投降望んだか、犯人は応じなかった。
それにあの声は紛れも無い。父さんの声だった。来るのが遅いよ。
犯人は、警察に車を用意するように交渉していた。用意したら、無事にこの中の人達は解放すると。

警察は、車を用意して、銀行の裏口に駐車してなんとか、他の人達は解放された。
「涼平!大丈夫だったか?母さんは?」
「撃たれた。指名された人を庇って」
すると、父さんの顔色が変わってパトカーに戻った。
父さんの事だから、逃しはしないだろう。
僕は、他のパトカーに乗せてもらい家まで送ってもらった。
家に着くと、ある一本の電話が鳴り、その内容は、最悪だった。     続く…
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