20 / 233
第一章 終わりと始まり
20 教会の思惑
しおりを挟む
「本当はエスターを教会にあずけるのは反対なんだよね」
陛下はため息をつきつつ言った。
それはそうだろう。
王家と教会の関係を聞いた後だと余計にそう思った。
そもそも教会が、エスターの再教育に名乗りを上げたのは、政治に影響力が欲しいからだ。
今までの国では教会は政治にかかわってきた。
けれど、この国は議会制。
王の言葉も議会では否定ができる。
陛下や教会の一存で何かするよいうことは難しくなっている。
教会は、この国を異端として昔は糾弾してきた。
前の戦いも、実際は教会がこの国を攻めるように当時の王をそそのかしたとまで噂されている。
多くの領主はあまり教会をよく思っていない。
もちろん信仰の深い領主も多いけれど。
丁度半々くらいで、不正はしにくい。
陛下が教会に不信感を持っているから、教会の意見に賛同をあまりしない。
現在の制度では、教会の意見が通りにくい。
教会の影響の強いエスターが王になれば教会はこの国に影響力を持てる。
現聖者とエスターを教会はパートナー契約させたいのではというのが陛下たちの考えだ。
聖者は、本来特に何事も無ければ18までは清らかなまま教会で祈りをささげる。
その後は、そのまま聖者で一生を終える人も居るし、別の者に聖者を譲り、有力貴族とパートナーになることもある。
たまに任期途中で、新たな聖者が生まれて、聖者の任を18前で終える人も居ないこともない。
エスターと聖者とをパートナーにさせて、現聖者リオンを王か王妃にしようと教会は思っているのでは、と陛下とバルハルト公は推測していた。
どうやら、口にするだけの確信はあるようだ。
エスターだけでは、この王国を治めるには力が足りない。
教会が、彼につけば周辺の国もそうそう攻めてこない。
国が大きくなれば守るものも多くなる。
聖者リオンとの婚約をと、教会側から以前そういう提案もされたという。
エスターの力不足は皆知っている。
教会と言う後ろ盾でもなければ、この国は治められないだろう。
それだけ、教会は強大だ。
エスターを傀儡の王にして教会の治める国にしたいのではという皆の考えもわからないでもない。
陛下は、通常はのんびりした温厚な人だから舐められているんだとバルハルト公は怒っていた。
陛下は、だろうねと苦笑した。
朝議でそんな喧嘩をしていいのかと思ったけれども。
議会ででた意見を、皆否定しなかった。
それは教会への親交の深い領主たちも。
逆に歓迎と言う感じだったけど。
それがあるから、エスターを王位継承権候補から外すというのがなかなかできない理由でもあるらしい。
朝議でのやりとりを思い出していたから表情が暗くなっていたようだ。
「どうしたの?」
陛下に耳元でささやかれてびくりと肩が揺れた。
いや…幼児に色気たっぷりで耳元でささやかないでください。
「教会って怖いなと…。」
陛下は、ああと頷く。
「まぁ、教会の存在を否定する気はないけども、私は考え方が少し違うから…悪いけども、私が生きているうちは、彼らは思う通りに活動できないようにするだろうね。だからエスターを取り込もうとする行動は、仕方ないのかもしれない。前の妃は熱心に教会に通っていたからね。だから別邸も教会の近くにある。前の妃の…元の国が教会の影響力の強い国だったから。」
エスターの後ろ盾になるというのは彼らにとっては自然な考えだろうとへ陛下は苦笑する。
「私が治める国では…教会は窮屈だろう。」
だから、教会が陛下がいなくなった後に…と考えてもしかたないかなと陛下は言う。
そもそもそんなに力があるなら、教会の国を作ればいいのにと思ってしまう。
わざわざ、強い国に寄生するようなことしなくても十分国が作れそうなのに。
僕がそう言うと陛下は、そうだねと、笑った。
ジークハルトが、苦笑しつつ教えてくれたのは、教会を嫌いな武装軍団とかが、結構いるらしい。
国には所属していない集団が多いとも。
居て教会が国を作ったら襲ってくるだろうと思われているらしい。
教会が、王家に嫌がられているのがわかっていても、ここに大教会をおいたのもそれが理由の一つ。
陛下が教会を嫌いなのは有名だが、神官たちが国民として大教会を置いたら攻められないだろうという理由らしい。
まぁ…教義で正反対の役割を持つ金の瞳の一族を貶めてるからそう警戒してもしかたないのかな。
陛下は、エスターが王になって教会が影響力を増したとしても、結局は自分の治世が終わった後のこと。
そうなったら、自分の守りたいものだけは守るけど、後はどうでもいいよと陛下はどこか投げやりに言う。
何故だろう…。
そんなことを言う陛下にとても違和感を感じたのだった。
陛下はため息をつきつつ言った。
それはそうだろう。
王家と教会の関係を聞いた後だと余計にそう思った。
そもそも教会が、エスターの再教育に名乗りを上げたのは、政治に影響力が欲しいからだ。
今までの国では教会は政治にかかわってきた。
けれど、この国は議会制。
王の言葉も議会では否定ができる。
陛下や教会の一存で何かするよいうことは難しくなっている。
教会は、この国を異端として昔は糾弾してきた。
前の戦いも、実際は教会がこの国を攻めるように当時の王をそそのかしたとまで噂されている。
多くの領主はあまり教会をよく思っていない。
もちろん信仰の深い領主も多いけれど。
丁度半々くらいで、不正はしにくい。
陛下が教会に不信感を持っているから、教会の意見に賛同をあまりしない。
現在の制度では、教会の意見が通りにくい。
教会の影響の強いエスターが王になれば教会はこの国に影響力を持てる。
現聖者とエスターを教会はパートナー契約させたいのではというのが陛下たちの考えだ。
聖者は、本来特に何事も無ければ18までは清らかなまま教会で祈りをささげる。
その後は、そのまま聖者で一生を終える人も居るし、別の者に聖者を譲り、有力貴族とパートナーになることもある。
たまに任期途中で、新たな聖者が生まれて、聖者の任を18前で終える人も居ないこともない。
エスターと聖者とをパートナーにさせて、現聖者リオンを王か王妃にしようと教会は思っているのでは、と陛下とバルハルト公は推測していた。
どうやら、口にするだけの確信はあるようだ。
エスターだけでは、この王国を治めるには力が足りない。
教会が、彼につけば周辺の国もそうそう攻めてこない。
国が大きくなれば守るものも多くなる。
聖者リオンとの婚約をと、教会側から以前そういう提案もされたという。
エスターの力不足は皆知っている。
教会と言う後ろ盾でもなければ、この国は治められないだろう。
それだけ、教会は強大だ。
エスターを傀儡の王にして教会の治める国にしたいのではという皆の考えもわからないでもない。
陛下は、通常はのんびりした温厚な人だから舐められているんだとバルハルト公は怒っていた。
陛下は、だろうねと苦笑した。
朝議でそんな喧嘩をしていいのかと思ったけれども。
議会ででた意見を、皆否定しなかった。
それは教会への親交の深い領主たちも。
逆に歓迎と言う感じだったけど。
それがあるから、エスターを王位継承権候補から外すというのがなかなかできない理由でもあるらしい。
朝議でのやりとりを思い出していたから表情が暗くなっていたようだ。
「どうしたの?」
陛下に耳元でささやかれてびくりと肩が揺れた。
いや…幼児に色気たっぷりで耳元でささやかないでください。
「教会って怖いなと…。」
陛下は、ああと頷く。
「まぁ、教会の存在を否定する気はないけども、私は考え方が少し違うから…悪いけども、私が生きているうちは、彼らは思う通りに活動できないようにするだろうね。だからエスターを取り込もうとする行動は、仕方ないのかもしれない。前の妃は熱心に教会に通っていたからね。だから別邸も教会の近くにある。前の妃の…元の国が教会の影響力の強い国だったから。」
エスターの後ろ盾になるというのは彼らにとっては自然な考えだろうとへ陛下は苦笑する。
「私が治める国では…教会は窮屈だろう。」
だから、教会が陛下がいなくなった後に…と考えてもしかたないかなと陛下は言う。
そもそもそんなに力があるなら、教会の国を作ればいいのにと思ってしまう。
わざわざ、強い国に寄生するようなことしなくても十分国が作れそうなのに。
僕がそう言うと陛下は、そうだねと、笑った。
ジークハルトが、苦笑しつつ教えてくれたのは、教会を嫌いな武装軍団とかが、結構いるらしい。
国には所属していない集団が多いとも。
居て教会が国を作ったら襲ってくるだろうと思われているらしい。
教会が、王家に嫌がられているのがわかっていても、ここに大教会をおいたのもそれが理由の一つ。
陛下が教会を嫌いなのは有名だが、神官たちが国民として大教会を置いたら攻められないだろうという理由らしい。
まぁ…教義で正反対の役割を持つ金の瞳の一族を貶めてるからそう警戒してもしかたないのかな。
陛下は、エスターが王になって教会が影響力を増したとしても、結局は自分の治世が終わった後のこと。
そうなったら、自分の守りたいものだけは守るけど、後はどうでもいいよと陛下はどこか投げやりに言う。
何故だろう…。
そんなことを言う陛下にとても違和感を感じたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる