不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
29 / 233
閑章 聖者リオンside 繰り返す

閑話 02 堕ちた聖者 ※

しおりを挟む
扉を開けて入ってきたのは、エスターだった。
リオンは、窓のふちにもたれかかって彼をみる。
ここも何度も繰り返したなと、思いながらリオンは口を開いた。

「なんだ…エスターか…。」

エスターは、無表情でリオンに近づいてきた。

「ジークハルトに聞いた。」

リオンは、エスターの言葉にそう…と頷く。

「でも…俺をジークハルトに売ったのは君でしょう?」

エスターの肩が揺れる。
リオンは、仕方ないなぁと笑う。

「お前は…こうなっても俺を見ないんだな。」

エスターの言葉にリオンは首をかしげた。

「見てるよ?」

エスターはゆっくりと、リオンに近づき横に立った。
小さく、見てねぇよと囁く。
それから、空を見上げた。

「あれを止める手立てはもう無くなった?」

リオンは頷く。

「もうないね。いや…もともと無いのかもしれない。ラスティを君が殺したから。」

エスターは、唇を噛みしめる。

勘違いで飲ませた毒薬。
目の前の、リオンの言葉を愚かにも信じた。
エスターは、深い息を吐く。
地の底から響くような低い声で、つぶやいた。

「誰の所為だと…。」

リオンは、首をかしげる。

「この期に及んで…まだ人の所為にするの?」

エスターは言葉を失った。
そう…目の前の変わってしまった聖者は、おびえて言えなかっただけだ。
あの時の自分は、彼の否定の言葉を耳に入れていたとしても同じことをしていただろう。
思い込みで、ラスティを悪者にして…毒薬を渡して死ねと命じた。
結果はこのざまだ…エスターは、深い息を吐く。

「俺も愚かだ。それは認めるよ。その愚かさを何とかしようと思って旅にでたんだから。でも、それ以上に君は愚かだ。未だに過去の自分に向き合えていないのだから。」

リオンは、窓から離れる。
あと数時間しか、今回の生は無いというのにここで言い争って終わるのは辛いとリオンは感じた。
シャツしか羽織っていないが、別にいいだろうと扉に向かう。

「そんな恰好でどこに行く気だ。」

リオンは、そうだねとつぶやく。
別に、どこへ行こうともリオンは考えていなかった。

「あと…数時間しかないでしょ?」

エスターは、ああと頷く。

「言い争って終わりって俺は嫌だと思っただけ。」

この格好で歩いていたら誰か襲ってくれるかな。そんなことをリオンは言う。

「……なら、俺が襲ってやるよ。」

そういってエスターは大股で近づきリオンの細い腕をつかんだ。

「それも…いいかもね…」

そういってリオンはエスターを連れてベットに戻り、シャツを脱いでベットの下へと投げた。
足を広げて、両手をエスターに向かって広げる。

「はやく、俺を狂わせてよ。」

エスターは、舌打ちするとリオンの胸に手を置きを押し倒す。

「…紋章は…いるか?」

エスターの言葉にリオンは首を横にふる。

「必要ないよ。どうせ未来はないんだ。」

そうかとエスターは、リオンの唇を己の口で塞ぐ。
リオンは、ぼんやりとそれを受けながらふと気が付いた。

そういえば、ジークハルトとは口づけはなかったな、とリオンは思う。

互いの舌を絡めながら、エスターの手はリオンの肌の上を巧みに這って行く。
リオンは、エスターは結局娼館ばかり通っていたからなぁと、彼の愛撫を受けながら思う。

「はぁ…こんなことばっか…上手くなって…ほんと、最低おーじさまぁ…ああっ…」

口が離れた瞬間にリオンは悪態をついたが、その瞬間に熱い杭を体が貫いた。

「は…くそっ…もってかれるかと思った。」

エスターは、そう言うとリオンを見た。
リオンの細い体に、ジークハルトが付けたのだろう青あざがいくつもある。
先ほどまでは、それらはシャツで隠れていた。
ジークハルトは、リオンをただ痛めつけて弄んだだけなのだなとエスターは思う。

殺した弟を愛していたジークハルト。
変わってしまったジークハルトは憎しみしか残っていなかった。
あいつを救えるのはこの世にはもういない。

それは、エスターが父と慕う王も同じだった。
朗らかに笑っていた笑顔はなくなった。
面倒そうに、他国へと侵略を繰り返して、国を大きくしていく。
狂王。
そう呼ばれるようになった彼をエスターは止めることすらできなかった。

全ての悲劇は、己の所為だとエスターは思う。
己たちの所為だと、共犯者であるリオンを見る。

狂ったジークハルトよりも…きっとこいつはラスティを愛している。
おそらくは…リオンが誰よりもラスティを愛して憎んでいる。

エスターはゆっくりと腰を使いながらリオンを見る。
リオンは気が付いているのだろうかと思う。

お前は、すでに狂っているんだよ。

そう、エスターは、声を出さずにリオンに言う。
リオンは、喘ぎながら赤い舌で己の舌を舐めた。

「あ…うぁ…は…はは、何…みて…いる…の?…ん…」

揺さぶられながら、リオンは不思議そうにエスターに問いかける。

「あ…貧相だなと思っただけだ。…っ…」

リオンが苦笑した所為で、エスターの欲望を締め付けた。
その所為でリオンは、快楽を余計に感じたのだろう。
大きく身じろぎすると、自ら腰を動かす。

「ねぇ…もっとぉ…もっと動いて……あ…ん…んぅ…」

言葉通りに、エスターは大きく腰を振った。
リオンは、満足気に笑う。

「ああ…いい…いい…よぉ…もっと…もっとだ…俺を…狂わせて…堕として…」

自らも腰を振りながらリオンは快楽を追う。
エスターも、もう何も考えずにただ目の前の快楽に縋りついた。





彼らは、炎の星が落ちるまで、ただ快楽を追い続けていた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...