不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第二章 運命を壊す方法

31 ノルンとマール

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ノルンとマールは本当によく働いてくれる。
僕とそんなに年も違わないのに、とてもしっかりしている。

僕がぼんやりしてるんですよとマールは笑うが。

「ラスティ様はそのままでいいですけどね。」

マールはそう言って笑う。
ジークハルトもしっかりしているし、もしかして僕って本当にボケボケなわけ?

手際よく作業を進める彼らは、植物のことは母から教わったと教えてくれた。
学問の知識としても、薬学と上級薬学を二人ともすでに習得済みだ。

そのこともあっては陛下が二人を僕の使用人として雇ってくれた。
それだけではないけども。
二人は、僕の使用人になるために、きちんと使用人としてのスキルも身に着けている。
とても優秀な二人なのだ。
使用人としてはすでに一級の能力を持っているけども今、二人は体を鍛え中。
そのうち、護衛にもなれるようになりたいって言っている。
とても勉強家で、すごいなと思う。

僕の使用人兼薬学の教師、ノルンとマール。

陛下に絶対の忠誠を誓っている二人。
それにはちょっと理由がある。

ノルンとマールは、貴族の子息だけど、母が農家の人。
母から習っているから本当の意味で植物に詳しい。
薬学書に載っていない知識も豊富なのだ。

僕にとっては、とてもありがたいことだ…けれども。
二人にとっては、そのことはここに来るまではつらいことでもあったという。

貴族の中では、未だに身分というものは重視されている。
二人は、母ともに父に引き取られていた。
跡取りは、腹違いの両親ともに貴族の兄がいる。
家族仲は悪くは無かったけれど、二人は力とか魔力とかが低めで、親族にはいろいろ言われていたらしい。
かなり、肩身が狭かったという。

彼らの母は、庶民出なので貴族のマナーに馴染めなかった。
家族だけの時はいいのだが、親族が来ると、いつも悪く言われ、心を痛めていたという。
それでも、父と母は愛し合っていて、別れるつもりもない。
弟も今年生まれると二人は笑っていた。
家族は好きだとノルンもマールもいう。

「それでもやっぱり…きつかったんです。」

マールは、こっそり僕にそう言ったことがある。
家族仲は良いけれど…お兄さんは少し二人とは距離を置いていたようだ。
兄の態度は仕方なかったけど…とマールは肩を落としていた。

どうやら、二人のお兄さんは学校でノルンとマールのことで、いじめにあったらしい。
一時的ではあったらしいけれど。
貴族の子息の学校で、からかわれた程度だとはお兄さんは言っていたようだ。

親族からは、いろいろ嫌なことを言われていた。

子供心にかなり傷ついていたとマールは言った。
ノルンはそういうことを顔に出さないけれど…ノルンの方がきつかっただろうとマールは言う。
お母さんとマールの盾にノルンはずっとなっていたのだから。

彼らのお父さんは城に努めている。
陛下が、その話を聞いて僕のお付にどうかと彼らのお父さんに提案したのだという。

彼らは力自体は低くとも、頭が良い。
とても優秀だ。
僕が、薬学に興味を持っているから、それに詳しい子を探していたからと陛下が話を進めた。
王妃のお付になるというのは、結構名誉だという。
二人が僕の専属使用人になるということで、今まで嫌がらせをしていた親族は、一気に態度を変えたらしい。

「陛下は…僕たちの…母の恩人です。」

ノルンとマールは、母が健やかに過ごせるとようになったと喜んでいた。
兄もいじめられなくなったと。

そのこともあって陛下に絶対の忠誠を誓っている。
彼らは、自分たちは多少片身は狭かったが、父親がきちんと教育を受けさせてくれたからましだったという。
だから…母が、可哀そうでならなかったと彼らは言う。
自分たちが、もっと強くもっと優秀ならばと何度も思っていたと。

そんな自分たちを、陛下が見出してくれた。
力は、物理的なものや魔力だけではないよと言ってくれたと。
二人を陛下がわざわざ迎えに来てくれて母にも声をかけてくれたのだとマールが教えてくれた。
きちんと二人が困らないように教育もするから、安心してほしいと両親に陛下は約束したらしい。
陛下は、僕らの、何より母の恩人だと二人は言う。
家族を救ってくれたのだと。

「なので…ラスティ様のことは大好きですけど絶対に手は出しません。」

マールは冗談っぽくそんなことを言う。
そんなことを言っているけど、マールの好みは結構マッチョな年上らしい。
騎士団にお目当てな人がいるとノルンから聞いている。

まだ、13だよね。
おませさんだな。

「ラスティ様のことは大好きですけど、陛下の命令が絶対なので。」

ノルンは、そう言って陛下がダメと言ったことは僕の命令でも受け付けませんと最初に言われた。
陛下がダメって言ったこと以外は、快く助けてくれるけども。

とりあえず、陛下が二人にダメと言っていることは二つ。

「ラスティが魅力的でも手は出したらダメ。」

うん。陛下、大丈夫かな?
何言ってるの??
二人の好みは全然違うから大丈夫だよ。
二人とも結構マッチョ系が好きなんだよね…。
ジークハルトでも細いって言ってる。
あと、目薬早く作れるようになるね。

「ラスティは方向音痴の世間知らずだから外に出してはダメ。」

の二つらしい。

失礼だな!!陛下。
一つ目はともかく、方向音痴が当たっているだけくやしいけども。
世間知らずも…うう…そうかも…。
城で閉じこもってばかりだものな。

なんだかんだと二人とは仲良くなったし、いろいろ教えてくれる。
今までの生の中で一番、過ごしやすい。

二人を選んでくれた陛下には、感謝している。




方向音痴は、余計だけどもね。



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