不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第三章 学園生活の始まり

46 聖者リオン

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笑顔全開のリオンが、僕の座っている席に駆け寄ってきた。
どうやら、彼は僕が席を決めるのを待っていたらしい。
そういうタイミングだ。
正直言えば、逃げたくなった。
けれど、逃げるわけにもいかず僕は笑顔で踏みとどまる。

「おはようございます。」

僕はとりあえず、笑ったまま挨拶をする。
リオンは、にこにこと笑いながら、おはようと返してくる。

「ずっと前にあったことがあるんだってね。……ぼく、覚えてなくて……神官に、君と同じクラスだって聞いてから絶対ご挨拶しないと思ってたの。」

屈託なく笑ってそう言うリオンに、そうですかと僕は返す。

顔が引きつらなかったことを褒めてほしい。
というか聖者が嘘ついてないか?
大丈夫か?

エスターにジークハルトのことを伝えに言った時のこと。
あれを忘れるとか、わざとでなかったら…どれだけの記憶力が悪いのか。
すごい顔してにらみつけていたのに。

まぁ、本当だろうな…彼は嘘をついてはいけない聖者だ。
もし…彼がこんなことで嘘を吐いて力を失ったとしたら…世界はどうなるのだろう。

ジークハルトが、眉を寄せてリオンを止めようとした。
だが、トリスティがため息をついてジークハルトに目配せする。
ジークハルトは、一歩ひいた。

「聖者リオン様、私は以前、言いましたよね?ラスティ様にそのような口調では失礼になります。」

リオンは、ええ~と頬を膨らました。

「でも、同じクラスだもの。学園では身分問わずがルールでしょう?別にいいでしょ?」

ねぇ?ラスティ様~とリオンが可愛らしい笑顔で言う。
少し離れたところでクラスメイトというか、リオンの取り巻きなのだろう生徒たちがこちらを見ている。
すごい顔をして僕を見ながら、ひそひそと話している。
これは、変な態度をとったらダメな奴だなぁと僕は思いながら微笑んだ。

「そうですね…リオン様の言う通りです。」

とりあえずは、肯定。
だよね、だよねと彼は屈託なく笑っている。
僕は、笑顔で彼を促すことにした。

「ご挨拶ありがとうございます。リオン様…あちらのお友達が待っていらっしゃいますよ。」

暗にさっさと向こうにいけと促す。
うん、いい子なのだろう。
あれだけの人数の子に慕われているわけだし。
それは、わかるんだけど、苦手。
リオンは、首をかしげて後ろを向いた。

「え?誰の事?友達って…いないよ?」

不思議そうにリオンは言う。
僕は首を傾げた。

いや…友達いないって…。

ジークハルトが、額に手を置いて首を横に振る。
マールとノルンは、苦笑していた。
僕がどうやら、的外れなことをいったらしい。
トリスティが、僕の肩を軽くたたいてから耳元でささやいた。

「リオンにとっての彼らは、信者というか…支持者というか…友人とは思っていないんだ。」

僕は思わず目を丸くする。
何それ?
怖い。
せめて友人カテゴリーに入れとこうよ。
クラスメイトでしょ?

「はい?」

え?ちょっと、リオンって。…こんな感じだっけ??
確かに、世間知らずだったよ。
でも、朗らかな子だったよ。
でも、もっと人を大切にしていた子だった。
こんな風に、人を言う子ではなかった…。
というか、そもそもあんな風に取り巻きとかいなかった…。

リオンは、にこにこと僕に笑いかける。

「僕ね、ラスティ様と友達になりたいな。」

ね?いいでしょ?とリオンは首を傾げた。
ここで否と言ったらダメな選択だろう。
だが、応と言っても駄目な気もする。
どっちにしろダメだろうなと思い曖昧に答えようとした時だった。

ジークハルトが、ああ!と声を上げた。

「すまない、ラスティ。もう授業が始まるから私は自分の教室に行くよ。トリスティもノルンも遅刻してしまう。聖者様も、席につきなさい。」

ジークハルトは、優しくリオンにそう言って微笑みかけた。
完璧な営業スマイル。
リオンは目を丸くしてからつまらなさそうに、はーいと言って前の席に向かっていく。
ジークハルトは、僕の頭を軽く撫でてから急ぎ足で教室を出て行った。

ほっとしたが、それもつかの間だった。
三人が出て行ったのを待っていたかのようにまた来たのだ。
荷物を手に取ったリオンが。
僕の隣の席に移動してきたのだ。

「一緒に授業受けよ~。」

空いていた席に置いていた荷物を僕に渡してぐいぐいとリオンは、密着してくる。
マールが、目を吊り上げたが相手は聖者。
僕は、そっとマールの手を握って止める。
諦めて荷物を足元に置く。
顔を上げると、リオンがじっと僕の顔を覗き込んできた。

「えへへ…ラスティ様の金色の眼って綺麗だなぁ~ずっと見てられるぅ~」

そういってリオンは、ぐいぐいと僕に密着する。

「はは…そう…ありがとう…。」




どうしたの??この子。
僕はただ、困惑するしかなかった。




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