不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第三章 学園生活の始まり

58 地下牢

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二時間ほど馬車に揺られて、廃棄されたのだろう小さな壊れかけた石造りの砦のようなところに連れて行かれた。
地下はしっかり残っており、その中にあった牢に僕らはまとめて放り込まれた。
冷たい床に転がる。
少し打ち付けて打ち身増えたなとっぼんやりと思う。
リオンは隣の牢に入れられているようだ。
彼の叫んでいる声が聞こえた。

「うわぁ!!!」

殴打する音と、リオンの悲鳴。
うるさいと殴られたようだ。

「キャンキャンうるせーなぁ。本当に聖者か?こっちの餓鬼どものほうが静かじゃねぇか。聖者は実は、こっちのちびっこのどっちかじゃねぇか?」

外で男たちが話している。

「こいつらどうするんだ?」

問う店員の男の声に、めんどくさそうな男の声が答えた。

「頭は売るって言ってたぜ。聖者の付き人は教会の孤児らしいから…そいつらもそうだろうってさ。」

調べるのも面倒だから早々に売ってしまえばいいだろうと他の男たちの声がする。
若い店員の男は、いい加減だなぁと言いながら僕たちの牢を覗いた。

「まぁ…確か高く売れそうな顔はしてるか。可哀そうになぁ?」

まったく可哀そうとは思っていなさそうな口調でそう言ってから若い男は、楽し気に笑っている男たちの方へと歩いて行ってしまった。
辺りが静かになる。
ロイスがむくりと体を起こすと、縄がぱらりと落ちた。
猿轡も外してから、牢の入り口からあたりを見ている。
人の気配が無いことを確認してから、僕とマールの縄を解いてくれた。

「申し訳ありません。ラスティ様とマールをこんな目に合わせてしまった…。」

仕方ないよと僕は首を横に振る。
入り口のすぐ横に壁に移動するようにロイスに言われ縄なども持って移動する。
ここは入り口から覗いた時にすぐには見えないようだ。
マールは、僕の擦り傷や打撲を見つけては薬を付けてくれている。
リオンはまだ、泣いているようだ。
隣の牢からはすすり泣きが聞こえる。
あっちは一人で心細いよなぁと僕は呑気に思う。

「マールも顔に擦り傷ついてる。」

僕が、薬を塗るとマールがしゅんと肩を落とした。
どうやら、リオンに言われるがまま僕を雑貨屋に連れてきたことを後悔しているようだ。

「陛下も心配していますよね…なんとか報せないと…。」

それは、心配はないかなと思う。
陛下にもらった小鳥が知らせ済なので、たぶん、すぐに助けに来てくれると思う。
雑貨屋の時点で知らせているから、時間はかからないだろう。
小鳥は、姿を消したまま僕についてきているらしい。
僕も姿は今は見えない。
でも感覚はあった。
陛下の魔力で出来ているので離れていても状況は知らせてくれると陛下は言っていた。
ロイスが、静かにというと持ってきた切れた縄をくくられて見えるように持ってという。
猿轡をして縄を体に巻く。
ほどなく足音がした。
男が牢を覗いて慌てたように、牢を見回した。
こちらに視線が向いた。

「なんだ…隅に固まってたのか…まぁいい、おとなしくしてれば今のところは何もしねぇよ。」

そういって隣の牢へと行く。
リオンが、僕らをどうしたのと叫んでいる。
男は、うるさいと怒鳴りつけてから隣の牢でおとなしくしているとリオンに告げた。

「ねぇ、あの子達は関係ないんだ。だから自由にしてよ。」

リオンは男にそう懇願した。
男は、めんどくさそうに答えた。

「教会がお前の身代金を払ったらあいつらも一緒に解放してやるよ。そのかわりお前は、おとなしくしておくんだな。お前があばれたり逃げ出そうとしたら一人ずつ殺すぞ。」

リオンが、軽い悲鳴をあげている。

「大人しくする…大人しくするから…あの子達に手を出さないで…。」

男はめんどくせぇなぁと言いながら大人しくしておけよと言い残して牢を離れた。
リオンのすすり泣く声が再びしている。

「牢を破るのはできると思いますが…リオン様も助け出すことをかんがえると少し時間が足りないか…」

ロイスは、うーんと考えてる。
男たちは、僕がわかる範囲で、若い店員の男、リーダー格の男、あとは雑貨屋で僕らを拘束した6人とここでおそらく合流したのだろう男が数人いる感じだ。
ロイス一人で僕達三人を守りながら、あの人数を戦うのは難しいだろう。
僕も魔法で、協力はできると思うけど訓練だけで実践はない。
マールも訓練が主だろうし、リオンは戦えない。
僕らで逃亡するより助けを待った方がいいかなと様子見を決め込む。

「そういえば…僕らのカバンとか買ったものはどうなってるんだろう。」

辺りを見回したが近くにはない。
マールの薬は、制服の内ポケットに入れていたものらしい。
僕の内ポケットは学生書が入っているだけだ。
ここから出れたら、内ポケットに入れるものを考えようとぼんやりと思う。
僕の様子を見てロイスは、ほっと息を吐いた。

「ラスティ様とマールが取り乱すようなことが無くて助かるな…。」

ロイスの苦笑している様子に僕は首をかしげた。
マールもそうですねと頷く。

「僕はこれでも騎士団の訓練に参加させてもらっているから、こういう時に落ち着くようにも訓練されていますよ。ラスティ様が落ち着いてくれているから助かりますね。」

二人はそう言って苦笑する。
確かに、隣の牢でリオンがずっと泣いているのを考えると僕の落ち着きはおかしいだろう。

一応僕も訓練は受けているのだけれども…。

小鳥のことは二人には言っていない。
だから、どうにか外に知らせようと二人は考えているようだが。
僕は、落ち着いている理由を考える。
確かによく考えたら怖い状況だ。
どうなるかわからないのだから。

けれども…。

「陛下が、何とかしてくれると思ってるからかな?」

ぽつりとつぶやく僕の言葉に二人が苦笑した。

「そうですね。きっと陛下に知らせることが出来たら助けに騎士団を送ってくれます。」

マールとロイスが、頷きあいどうやって知らせようかと話し出した時だった。






どかんという音と共に地面が揺れる感覚がしたのだ。




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