不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第四章 波乱の学園生活

67 意外な人

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皆が目を丸くしている。
もちろん僕もだけれど。
リオンが嬉しそうに胸を張った。
サプライズ成功って感じだろうか。

「ようやく、この引きこもりを引っ張り出せたよ~。」

にこにこと笑うリオンの後ろには、エスター第一王子が不機嫌そうに立っている。
久しぶりに見る姿。
僕を視界に一瞬だけ入れたけれど、エスターはすぐに視線を逸らした。

嫌われているなぁと思う。

トリスティとジークハルトは、嫌そうに顔をゆがめた。
どうやら、エスター王子はこの学園に在籍はしていたようだ。
今の今まで来ていなかったので、別の学校行っているモノだと思っていた。

「久しいな…お前らは挨拶も出来ないのか?」

ふんと鼻で笑ってからエスターは、僕らの横を通って教室に向かって行った。

いや、自分も挨拶してない…あ…久しいなが挨拶か?

聞こえていないだろうけど、僕はついお久しぶりですと背中に声をかける。
その後ろ姿は、ほっそりとしていて僕は違和感を感じた。
記憶の中にあるエスターより細いような気がする。
教会で暮らしている所為なのか、僕の体格が少し良くなったせいだろうか。
大きく感じていたエスター王子は、かなり華奢だったのだなと思う。
少し遅れて三人分の荷物をもった少年が校門をくぐった。

「エスター様、リオン様、ひどいです!荷物は自分で持ってくださいっていいましたよね!!」

黒髪青い瞳のかわいらしい少年だ。
キャンキャンと鳴く子犬のような印象の少年だ。
リオンは聞く耳を持っていないようだった。

「リノ、僕のにもつ~。」

そういいながらリオンは、彼の方に手を出す。

エスターの従者リノだ。

彼が、荷物をもって校門に飛び込んできたのだ。
リノは、僕らを見ると嫌そうに顔をゆがめた。
挨拶も無し。
従者としてどうなんだろうなと思うが、ほっておく。ことが無かったので、名前でわかった。
嫌われているなぁと思う。
リオンに荷物を渡すと、エスターさまぁと言いながら彼を追いかけて走って行ってしまった。

ゲーム画面ではもっと地味っぽかったけど、実物?見ると可愛いなと思う。
妹は可愛い系は食指が動かないらしく、彼のルートはスチルコンプ用にスキップの嵐だったけ。
まぁ、ストーリーはほぼエスター王子と同じ。
彼は元は敵国の貴族の子供。
戦争で両親が亡くなって孤児になって教会で育った。
ノルンとマールと同じように優秀なのでエスターの従者になった子だ。
魔術と薬学が得意でエスターの護衛騎士も務めている。
可愛い見た目だが、魔術としては強いはずだ。

「リオンが引っ張ってきたのか?」

ジークハルトの言葉にリオンは頷く。

「そうだよ。あの引きこもり達をそろそろ何とかしないとダメだなぁと思って。」

トリスティとジークハルトがため息をつく。

「はぁ…平穏な学園生活が…。」

リオンは、ごめーんと言いながらジークハルトにお願いねと首を傾げた。
ジークハルトとトリスティとノルンはエスターと同じクラスということだろう。

「何をだ?」

ジークハルトはうんざりしつつもリオンの言葉を促した。
なんだかんだとジークハルトはお願いをきちんと聞く。

「今日は、授業に剣術と魔術がそっちもあるよね?5年生は、対戦形式でしょ?」

リオンの言葉にジークハルトは、ああと頷く。

「手加減しろということか?」

ううんとリオンは首を横に振る。
逆だと。

「ボコボコにしてやって。」

トリスティとジークハルトは、顔を見合わせた。

「あいつら、教会では負け知らずだから調子のってんの。勘違いしたままだと困るでしょう?少しは使用人扱いして凹ませて大人しくなってたんだけど、教会の試合とかで負け知らずの所為でまた、増長してるってわけ。ボコボコにしたら、そのあとも面倒だろうけど…あのままの方が、余計に問題起こしそうだし。一回本物を見せてやってほしいから、徹底的にぼっこぼっこに負かせてやってほしいんだ。」

ノルンが、ため息をついた。

「そちらは僕ではお役に立てそうにないですねぇ。」

ノルンも強くないわけでもないけれど。
トリスティとジークハルトは、にやりと笑いあう。

「やるか?」

そう言って頷きあう二人に、ロイスが眉を寄せる。

「ジーク」

うん?とジークハルトはロイスを見る。

「無茶はするな?」

ジークハルトは、一瞬目を丸くしてからああと頷く。
ロイスは、僕にジークをお願いしますねと言ってから騎士団へ帰っていった。

「あいつ…どうかしたんだろうか?」

首をかしげるジークハルトにノルンが苦笑する。

「ジークハルト様が心配なのですよ。ロイス様は。」

ジークハルトは、少し考えてから照れたように笑う。

「あいつが?俺を??」

まんざらでもなさそうなジークハルトに僕は苦笑が漏れてしまう。
リオンも、意外な組み合わせになったよねぇと苦笑したのだった。




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