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閑章 リオンside 風
閑話 08 第二王子の墓参り
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リオンは、ぼんやりと王宮の北の塔で過ごしていた。
ラスティの亡くなった幽閉の塔ではあるが、別にリオンは幽閉されているわけではない。
ここに居たいとリオンが、ディオス陛下に願い出たのだ。
ディオス陛下は少し不快そうな表情を浮かべたが仕方ないかと頷いた。
リオンはそんなディオス陛下に感謝をささげた。
王宮に連れてこられてリオンは久しぶりに普通の生活に戻っていた。
「陛下は…どんな状態になっても誠実だな…。」
ロイスとの約束だからとディオス陛下は、リオンを保護した。
憎いだろにとリオンは、ため息をつく。
北の塔はラスティが、エスターに渡された毒を飲んで亡くなった場所だった。
毒は、防毒のスキルが無いものは無痛で眠るように死んでいくものだったと聞く。
苦しむことなく眠りについたのだろうかとリオンは思う。
「きっと次で…僕の繰り返しは終わると思うんだ…。」
リオンは己の神力がなくなっていることを知っている。
聖者としての役目が、壊れた自分ではもう出来ない。
あと一度…たぶんそれが自分の最後なのだろうと思っている。
「神力がない分…僕はきっと自由になれる。」
きっと最後のチャンスのはずだとリオンは思う。
繰り返しをしていると気がつくタイミングが早ければいいのだけれどとリオンはぼんやりと思った。
どうか…次は間に合いますように。
リオンは、その場所で祈る。
ただ、無心に。
何に祈っているのか本人にもわからない。
ただ、リオンは祈っていた。
顔を上げると窓から外を見る。
青い空が目に飛び込んできた。
小鳥の声が聞こえる。
小鳥の声しか聞こえない。
静かな世界がリオンを包む。
リオンは、ほうと息を吐くと日課となった場所に足を向ける。
長い階段をゆっくりと降りる。
暗い階段を延々と進む。
まるで永遠に降りていくような感覚にリオンは、このどこにつながっているのだろうとつぶやいた。
実際は、普通に大地にたどり着く階段だ。
けれども、リオンはこの階段に言い知れぬ感覚を感じていた。
彼にとって大切なものの死に背を向けて深い闇に降りていく行動がまるで黄泉の国に降りていくような感覚をリオンに与えていた。
彼の妄想の産物でしかない思いだが、リオンにとってはそれが真実のように感じられていた。
黄泉に降りる階段のような先には、光が満ちていた。
自分の妄想から現実に帰ったリオンは、光の中に険しい顔をした青年を見つける。
ジークハルトが、塔の入り口でリオンを待っていた。
「今日も行くのだろう。」
ジークハルトの言葉にリオンは、はいと頷いた。
リオンは、ゆっくりとジークハルトの顔を見る。
憎々しげに自分を見つめるその表情に、リオンは安心した。
「ラスティに会いに行きます…。」
ジークハルトの後ろをリオンはついて歩く。
王家の墓には、王族がともに行かねば入れない。
そのため、ジークハルトがいつもこうやってリオンを連れて行っていた。
小さな森の中にその墓はある。
リオンは、ジークハルトの後ろをただ歩く。
光の道から薄暗い森へと入り、再び明るい広場へ出る。
森の道の先には少し無骨な鉄の格子の扉があった。
一人の男が、ジークハルトを待っているかのように立っていた。
墓を守る門番が、ゆっくりとジークハルトとリオンに礼をとった。
王家の墓を守る門番の男は、ディオス陛下に剣を教えていた男だという。
すでに初老と言える男は、残りの人生を愛弟子の愛した彼の義理の息子の眠りを守るために使うつもりだと、最初に出会った時にリオンは聞かされていた。
金属のこすれる甲高い音を聞きながら、ジークハルトとリオンは王家の墓の門をくぐる。
ラスティの墓は、王家の墓の隅にある小さな墓だった。
隣はまだ空いている状態になっていてディオス陛下が亡くなったらそこに無いるつもりらしいとリオンは聞いていた。
おそらく…世界が終わるその時までディオス陛下は生きているのでそこに入ることは無いだろうなとリオンは思っている。
ラスティの墓の前に跪いてリオンは、再び祈る。
リオンはいつもと同じことを、ラスティの墓に話しかける。
「どんな運命の悪戯だろう。僕は、陛下とジークハルトに保護されて終末までここで、過ごすことになったんだ。もう…みんないない。君を害するものは…もういないよ。」
リオンはそこで言葉をいつも失う。
ラスティに話したいことは多い。
けれど、何かが違うとリオンは思うのだ。
今の言葉に嘘はないとリオンは思う。
けれども、何かが違うとリオンは感じていた。
「なんだ?」
ジークハルトの言葉に、リオンはいいえと首を横に振る。
「なんでもないという顔ではないが?」
ジークハルトの言葉にリオンは、大したことではないのですよとつぶやく。
「僕は…ラスティ様にうそはつきなくないと思っています…なのに…今いった言葉に嘘があると思ってしまっているんです。でもいくらかんがえても僕にとっての嘘はない…そう思うのです。」
ジークハルトは、興味なさそうに頷く。
「嘘はないと思うが…お前が本当だと思っていることが違うということなのだろう?」
ええと、リオンは頷く。
「たとえ、違ったとしても…ここまで気にならないと思うのですが…何故か…気になるのです。」
ラスティの亡くなった幽閉の塔ではあるが、別にリオンは幽閉されているわけではない。
ここに居たいとリオンが、ディオス陛下に願い出たのだ。
ディオス陛下は少し不快そうな表情を浮かべたが仕方ないかと頷いた。
リオンはそんなディオス陛下に感謝をささげた。
王宮に連れてこられてリオンは久しぶりに普通の生活に戻っていた。
「陛下は…どんな状態になっても誠実だな…。」
ロイスとの約束だからとディオス陛下は、リオンを保護した。
憎いだろにとリオンは、ため息をつく。
北の塔はラスティが、エスターに渡された毒を飲んで亡くなった場所だった。
毒は、防毒のスキルが無いものは無痛で眠るように死んでいくものだったと聞く。
苦しむことなく眠りについたのだろうかとリオンは思う。
「きっと次で…僕の繰り返しは終わると思うんだ…。」
リオンは己の神力がなくなっていることを知っている。
聖者としての役目が、壊れた自分ではもう出来ない。
あと一度…たぶんそれが自分の最後なのだろうと思っている。
「神力がない分…僕はきっと自由になれる。」
きっと最後のチャンスのはずだとリオンは思う。
繰り返しをしていると気がつくタイミングが早ければいいのだけれどとリオンはぼんやりと思った。
どうか…次は間に合いますように。
リオンは、その場所で祈る。
ただ、無心に。
何に祈っているのか本人にもわからない。
ただ、リオンは祈っていた。
顔を上げると窓から外を見る。
青い空が目に飛び込んできた。
小鳥の声が聞こえる。
小鳥の声しか聞こえない。
静かな世界がリオンを包む。
リオンは、ほうと息を吐くと日課となった場所に足を向ける。
長い階段をゆっくりと降りる。
暗い階段を延々と進む。
まるで永遠に降りていくような感覚にリオンは、このどこにつながっているのだろうとつぶやいた。
実際は、普通に大地にたどり着く階段だ。
けれども、リオンはこの階段に言い知れぬ感覚を感じていた。
彼にとって大切なものの死に背を向けて深い闇に降りていく行動がまるで黄泉の国に降りていくような感覚をリオンに与えていた。
彼の妄想の産物でしかない思いだが、リオンにとってはそれが真実のように感じられていた。
黄泉に降りる階段のような先には、光が満ちていた。
自分の妄想から現実に帰ったリオンは、光の中に険しい顔をした青年を見つける。
ジークハルトが、塔の入り口でリオンを待っていた。
「今日も行くのだろう。」
ジークハルトの言葉にリオンは、はいと頷いた。
リオンは、ゆっくりとジークハルトの顔を見る。
憎々しげに自分を見つめるその表情に、リオンは安心した。
「ラスティに会いに行きます…。」
ジークハルトの後ろをリオンはついて歩く。
王家の墓には、王族がともに行かねば入れない。
そのため、ジークハルトがいつもこうやってリオンを連れて行っていた。
小さな森の中にその墓はある。
リオンは、ジークハルトの後ろをただ歩く。
光の道から薄暗い森へと入り、再び明るい広場へ出る。
森の道の先には少し無骨な鉄の格子の扉があった。
一人の男が、ジークハルトを待っているかのように立っていた。
墓を守る門番が、ゆっくりとジークハルトとリオンに礼をとった。
王家の墓を守る門番の男は、ディオス陛下に剣を教えていた男だという。
すでに初老と言える男は、残りの人生を愛弟子の愛した彼の義理の息子の眠りを守るために使うつもりだと、最初に出会った時にリオンは聞かされていた。
金属のこすれる甲高い音を聞きながら、ジークハルトとリオンは王家の墓の門をくぐる。
ラスティの墓は、王家の墓の隅にある小さな墓だった。
隣はまだ空いている状態になっていてディオス陛下が亡くなったらそこに無いるつもりらしいとリオンは聞いていた。
おそらく…世界が終わるその時までディオス陛下は生きているのでそこに入ることは無いだろうなとリオンは思っている。
ラスティの墓の前に跪いてリオンは、再び祈る。
リオンはいつもと同じことを、ラスティの墓に話しかける。
「どんな運命の悪戯だろう。僕は、陛下とジークハルトに保護されて終末までここで、過ごすことになったんだ。もう…みんないない。君を害するものは…もういないよ。」
リオンはそこで言葉をいつも失う。
ラスティに話したいことは多い。
けれど、何かが違うとリオンは思うのだ。
今の言葉に嘘はないとリオンは思う。
けれども、何かが違うとリオンは感じていた。
「なんだ?」
ジークハルトの言葉に、リオンはいいえと首を横に振る。
「なんでもないという顔ではないが?」
ジークハルトの言葉にリオンは、大したことではないのですよとつぶやく。
「僕は…ラスティ様にうそはつきなくないと思っています…なのに…今いった言葉に嘘があると思ってしまっているんです。でもいくらかんがえても僕にとっての嘘はない…そう思うのです。」
ジークハルトは、興味なさそうに頷く。
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