不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第五章 変わる関係

106 ほんの少しの本音

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朝起きてから陛下と一緒に、ジークハルトの部屋に行くとノルンがジークハルトの髪を梳いていた。
今日は、公務が溜まっていると彼の両親は揃って王宮に行ってしまったという。
陛下は知っていたらしく、自分も早く行かないとなぁと言いながらのんびりしていた。

「陛下はいいのですか?」

一応僕がきくと陛下はうんと頷く。

「ジークハルトの治療の時間くらいは十二分にあるよ。」

陛下の膝の上にのせられて陛下の手の上からジークハルトの手を握る。
ジェン公が今日はいないけれど、この治療も慣れたのか安定しているから問題ないだろうと彼は言っていた。

ジークハルトの腕には真新しい紫のみのブレスレットがあった。
王子には自分が作ったものを…と陛下が言っていたが、エスターが見たらがっかりするのではと思う。

やはり、自分だけ特別と思いたいだろうし。

ただ、エスターよりジークハルトの石は少なく半分くらい。
ジークハルトの防御系は無くてよかったのだろう。
かわりにバットステータス用のものを強化したものを渡したようだ。
そういう意味ではエスターがジークハルトのものを見ても少しは安心するかもしれない。
ただ…色が濃いのはジークハルトのものだ。
つまりは、効力はジークハルトの魔石の方が強い。
おそらくは現在のジークハルトの状態から陛下が強化しただけだろうが、微妙にすれてしまっているエスターがそれをみたらどうなるだろう。

「大丈夫かい?ラスティ…ずいぶんぼうっとしているけど。」

陛下が、眉を寄せて僕を見ている。
ジークハルトも首をかしげて僕を見ていた。

「調子が悪いなら、今日は私だけでするよ?」

僕は、大丈夫ですと答えた。
陛下は、少し考えてから頷く。
ふわりと陛下の力を感じる。
相変わらず少しぽかぽかするけれど、なんとかこの状態もなれたものだ。

「どうだい?まだしびれるかい?」

陛下の言葉にジークハルトは少しだけと言いながら、数日前までぎこちなかった指を滑らかに動かした。

「明日くらいには殆ど気にならなくなりそうだね。」

ジークハルトは、そうですねと笑いながらちらりとベットの脇に置いてある松葉杖を見た。

「せっかくラスティが考えてくれた杖が出来たのですが…使うのは今日までになりそうです。でもせっかくだからもらいたいのですがいいですか?」

ジークハルトの言葉に陛下は苦笑した。

「いいよ。あとだ…元気になっても、数日は様子を見るから無理はしないように。」

陛下の言葉にジークハルトは素直にはいと頷く。
良い子だと笑って陛下は立ち上った。

「ラスティ、王宮の二人には私が渡しておくから今日はジークハルトの傍に居なさい。」

陛下の言葉に僕は首をかしげる。
王宮の二人。
トリスティとロイスに…ということだろう。
護衛騎士のいない状態の僕をたとえ比較的安全な王宮でも出したくないという陛下の考えなのだろう。
だれが呪いでおかしくなっているかわからない。
危険なのはエスターか僕と陛下は考えているのだろうか。

「……わかりました。」

陛下は、頷くと部屋を出て行った。
僕は、ふぅとため息をつく。

「何かあったのか?」

ジークハルトに、どういえばいいのかと思っていたらノルンが王宮にエスター様がいるからでしょうとため息交じりに言った。
ジークハルトは、ああと頷くと頭をかいた。

「まぁ…退屈だろうけど…今日は俺の相手をしてくれ。」

僕はいいよと笑いながら頷く。
陛下は、二人にもっていくのだろう。
門番さんには、あとで僕が渡そうかなと思う。
ノルンが自分の持っているお茶を鑑定してからほっと息を吐いた。

「…なぁ…ラスティ…結構皆…俺の事…トラウマ状態?」

僕はそうだねと頷く。
ジークハルトは、あーと声をあげる。

「俺の油断なんだが…気にするなとも言えないし…なんかすまん…。」

僕は苦笑しつつジークハルトに首をかしげる。

「ジークはさ…いいの?ノーマの事。」

ジークハルトは、ああと苦笑する。
何度かした質問だ。
ジークハルトは、その度に平気だと返事はしてくれていた。
ただ…やはり平気なはずはないだろう。

「まぁ…正直言えば…嫌だけどさ…まぁ…鍛え直してからエスター王子につき返してやるつもりだから。」

僕が首をかしげるとジークハルトは、頷く。

「俺は…ノーマを信用していない。できない。だから傍に置く。見張るために…それだけだ。ラスティは優しいからな。あいつがどんなやつでも手を差し伸べてしまうだろう?…理由があるのだったらと…それこそ…俺ではなく…ラスティが毒を飲まされていたとしてもだ…。ラスティ…気をつけろよ…人は笑って嘘をつく…嘘をついているつもりはなくとも嘘のこともある…いいか…すべてが善良な人間ではない。しっかりと相手を見極めるんだ…ラスティは…ラスティだけのものではないのだからね?」

ジークハルトの心配そうな声に、僕は、頷く。

「そうだね…わかっているよ…」

分かってはいるんだよ…。
そう僕は、ジークハルトに答えることしかできなかった。


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