不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第五章 変わる関係

105 ゴロゴロ考える

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陛下は、ジークハルトの顔を見てくるついでに出来たブレスレットを渡してくると行ってしまった。
目の前には再び完成したブレスレット。
結構な数が並んでいた。

トリスティとロイスにはやめに渡さないとなぁと思う。
少し不安なのが、トリスティだ。
ロイスが少しおかしくなっていた。
攻略対象がおかしくなっているならば、トリスティも危ないのでは。
おそらく、明日は王宮に来る日なので様子を見に行った方がいいだろうか。

とは言っても不安だが。

そう思いながら手を伸ばすと、同じデザインのブレスレットが自分の手首に揺れてい居た。
どういう作用なのか。
ぷらぷらしてすぐに取れそうなブレスレットは何故か取れない。
僕は、先ほど自分の夫がニコニコと笑いながらつけてきた紫色の石ばかりのブレスレットを眺める。
違和感を感じる。
夫という言葉に。
自分でそう考えたのだが。
何故か、陛下を夫と呼ぶことに違和感を感じたのだ。

僕のも全部陛下の石なんですねぇと陛下が僕の腕につけている時に言うと陛下が笑って言った。
私の妻に送るものだからね。

まぁ…妻なのだが。
夫…。

陛下が自分の夫なのだが。
事実だが、事実でないような。
現実として自分にしっくりこないなと思う。

好きだけど、夫はダメなんだよねぇと自分の奥底で何かが囁いている。
邪魔だろうけど…もう少し我慢してねと何かが囁いた。

ため息をつきたくなる。
僕はどうだっているのだろう。
明らかに何かおかしいのに。

僕と『俺』の考えがズレてきたあたりから何か違和感があるのだ。
とは言っても僕と『俺』が別なのかというとそうではないように思う。
たぶん、僕はラスティの意思が強くて『俺』は前世の意識が強い状態なのだろう。
たぶん…だが、『俺』の意識は陛下は好きだが嫁と言われることに抵抗がある部分なのだと思う。
僕のほうはどうかというと結構受け入れている。

紫の石と見て、僕の部分は純粋にうれしいと感じているが『俺』の部分は複雑な気分になっている。
出来れば…抵抗したいと思っている。

たぶん、前世の俺は恋愛対象が女性だったからだろうとは思っていたのだが…。
最近それも何か違うのではないかと思っている。
よくわからない何かが抵抗しているのだ。

もしかして…御伽噺のあれかなぁ…。
僕の中にいる?魂?とかが陛下を兄弟?と認識しているから?
自分のことなのに、ほんとにわからない。

そんなことあるのかなぁと思いつつも、そもそも自分が繰り返し同じ生を生きてたり剣と魔法の世界だったりしていることがすでにおかしいのに、よく自分は混乱もせず今いるものだとも思う。

ベットに移動してころりと寝転がる。
腕を上げて手首に我が物顔で収まっているそれを眺める。

意外に陛下の愛情は重いのかもしれないと少し思った。
いや…よく考えたら結構…異常かもしれないなと盗聴されてるものなぁと小鳥のディーを思い浮かべる。
まぁ…ディーにはいろいろ機能があるらしいのでそれ以上も観察されているようだが。
正直いえば、多分前世の俺の部分は異常なまでに過保護だなと呆れているが、別に嫌でもない自分が不思議だ。
なんというか…自分が一番よくわからない。

「はぁ…なんというか…変なことを考えているなぁ…僕…。」

僕の腕のブレスレットは、紫の魔石だけだ。
陛下が持って行ったものは琥珀と紫の魔石が、並んでいる。
テーブルの上に並んでいるものも。
門番さんにも渡す予定だし、ロイスとトリスティ、リオンにも渡す予定にはしている。

僕は自分の胸に手を置く。
寝巻の下に陛下の紋章がある。

「なるほど…重いのだろうな。」

私はラスティを通常では支配しようと思ったりしないよ、と陛下は笑っていたが。
異常だと支配されるのだろうか。
というか…陛下の異常ってどういう状態だ?
僕はそんなことを思いながら、ベットを転がる。

「わからないなぁ…」

僕なのか『俺』なのか。
陛下のことは好きだが、今の状態はダメだと感じている者が自分のなかにいる感覚がある。
子供の頃はなかったものだ。
年齢が、あの死に近づいているからだろうか…。
もしくは…。

「帰りたいのかな…。」

御伽噺の子供達。
うとうとと眠くなっていく。
半分眠っている状態になっているとかちゃりという音がした。

「はぁ…うん?寝てるのかな?うん寝てるな。」

陛下が帰ってきたようだ。
足音が離れたところでしてから、瞼越しに入ってきていた光が消えた。
陛下が灯りを消したのだろう。

足音が近づいてきてふわりと体が浮かぶ。
たぶん変な所で転がっているのでまともに寝させてくれたのだろう。
大きな手が僕の頭をなでてベットが沈む。
陛下が隣に横になったのだろう。

ふわふわとした意識でそれを感じていると陛下がため息をついた。

「長いなぁ…あと4年は待たないとなぁ…」

陛下はやれやれとつぶやいた。

「そろそろ…あいつが動くと思うんだが…今回のことはその前座かとも思ったけど…どうも違うようだな…」

そうつぶやいた陛下の声は、いつもの陛下とは違うように感じていた。


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