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第六章 運命の一年間
132 帰りは…
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ゆっくりと目を開けると石畳に転がされていた。
手足を拘束されさるぐつわを噛まされている。
魔石は奪われている。
ブレスレットも手首に感触が無いので外されているのだろう。
力を封じる結界でも張られているのか。
体の中の力が動かない。
少し離れたところに足が見える。
僅かに顔を上げその方向とみると、男が椅子に座っている。
椅子に座って本を呑気に読んでいる様子の男は僕が目を覚ましていることに気が付いていないようだった。
いや…僕の意識が戻ろうが、戻らなくても興味もないのだろう。
おそらくは、僕に興味が無いのだ。
彼が興味があるのは僕の周りの者。
そう感じられた。
それにしても…とゆっくりと再び目を閉じる。
体に特に異変はない。
薬のようなものを飲まされたのでてっきりあの薬かと思った。
どうやら違ったようだと目を閉じる。
一体何を飲まされたのだろうか。
男はじっとしている。
何かを待っているかのように。
それは、僕の目覚めではないことはわかった。
僕は目を閉じたまま自分の体を鑑定する。
異変は無いようだった。
力を封じられているので無駄だろうと思いつつも必死に自分の状態を確かめる。
とはいっても鑑定は、元々どうにも自分自身にかけると曖昧になってしまう。
それに最近は誰に使っても好感度や嫌悪値もぼやけてしまってきていた。
生き物以外の物質には仕えるが。
これは何なのだろう。どういうことなのだろう。
僅かに見えた情報では、辛うじておそらく問題はなさそうだという事はわかったが。
『世界の在り方が変わって来ているからからかな。』
僕がぼんやりと考えていたことに『俺』がそう答えた。
どういう意味と僕が問うと『俺』は、確証はないけれどとつぶやく。
『鑑定とか好感度とか嫌悪値ってあのゲームに近い運命を持っていた世界だから適用されていたのだと思う。』
僕は、頷く。
『けど…たぶん…ゲームと今はかなり違ってきているだろう?』
僕は、そうだねと頷く。
『だからゲームの要素は薄れてきているのだと思う。元々ラスティの鑑定は、ゲームの傍観者として能力で、ゲームと離れた今はその能力はズレてきたんだと思う。』
能力が無くなったのではなく、世界がその能力で測れなくなってきたということだろうと『俺』はいう。
僕はぼんやりと、いいことなのだよねと『俺』に問う。
『俺』は少し考えていた。
どちらともいえないと。
そうと僕は、心の中でつぶやいた。
それにしても…僕が飲まされたのは何だろう。
そして男は僕をどうしてさらったのだろうと思う。
『俺』は少し複雑な感情を僕に送ってきた。
おそらく僕は、今回は巻き込まれただけだろうと。
僕は目を男の方に向ける。
男はもうトリスティの顔をしていない。
けど、何故か僕は男が僕を襲ったトリスティだとわかった。
この男がトリスティにどうやってか知らないが彼の真似をしていたのだ。
マールが戸惑っていたのは、おそらくトリスティに違和感を感じたからだろう。
目の前の男がトリスティではないと、思ったのか…違うと分かってたら僕を置いていかなかっただろうから、もしかしたら違うかもと言う感覚だけを持ったのかもしれない。
確証がなく気のせいだと思ったくらいの僅かな違和感。
それは当たっていたという事なのだろう。
今頃彼は、その違和感を信じればよかったと己を責めていなければいいけれど。
冷たく固い床の感触。
僕は感触を感じながら、使い魔を作るか…ディーを呼び出せないか考える。
が、僕の力は封じられている。
結界もあるのだろう。
更に、この体をぐるぐる巻きにしている綱が僕の力を奪っている。
まずは…これを外さないと無理か。
そう思いながら、僕に何もせず転がし放置している男の目的を考える。
トリスティの関連だろうということはわかる。
けれど…どうしてと思う。
ゆっくりと上を見ると男は眉を寄せた。
男が本を閉じてため息をついた。
「うーん…意外に早かったかな…まぁ…そうだよな…必死になるよねぇ…。あの使用人よりやっぱり王妃様の方がダメージ強いよなぁ。うんうん。」
男はくすくすと笑う。
「起きてるのでしょう?お妃さま。ごめんね。ひどい目に合わせて。でもいいよね?君は陛下がいるし。かえってしっかり慰めてもらってよ。どうせ君にはそれくらいしかできないでしょ?可愛がってもらって、楽しく生きなよ。きっと愛されてるだけの人生の方が君には楽だと思うし。そういうものなんでしょ?金の瞳の子って。もう少し我慢してたら愛しい旦那様に可愛がってもらえるから我慢してね。俺は無理なんだ。俺、トリスティしか興味ないからさ。君がどんなに欲しがってもあげれないんだよな。」
僕は眉を寄せる。
「ふふっ…この薬の解毒剤でも飲んだ?ずいぶん閉域そうだけど。君が解毒っていうか…緩和剤を作ったのは知ってるけど…効力があれよりかなり強化されてるから…解毒剤飲んでも無駄だよ。まぁ…少しは効いているのかな。平気っぽいから…でも時間がたったら薬の効力の方が増してくるって話だし。どちらにしても飲んだらおしまいらしいよ。それ。かわいそうにね?」
男はやはり僕に薬を飲ましたらしい。
『俺』が何故か飲み込んでしまっているからた、僕の腹には入っているはずだ。
けれど特に感覚がおかしいという事はない。
男の言うように時間差なのだろうか。
「馬鹿なことしてるって思ってる?まぁ…もうトリスティが僕を見てくれることは無いと思うのだけど…あの使用人と幸せにというのもムカつくんだよね。だからさ…大事なご主人様を守れなかったっていう心の傷を刻み込んでやろうと思ったんだ。」
関係ないのにごめんねと男は笑う。
にたりと楽し気に。
「君を苦しめると…あいつも苦しむし…あの使用人もきついだろう?」
本当はあの使用人に飲ませようと思ってたのだけど。
そう男は笑う。
君の方が効果的だよねと。
つまり…男のも目的はトリスティとマール。
マールを狙っていたが、僕に切り替えた。
その方が二人が苦しくから。
そう言う事なのだろう。
男は笑っている。
トリスティとジークハルトとロイスが、泣きながら僕を呼ぶマールをつれて、階段を下りている映像が、部屋の天井に映った。
「ふふ…あはぁ…怒ってる。それ以上に焦っているね。」
映像を見て男は笑っている。
苦しむトリスティを見て楽し気に笑っているのだ。
「色々仕掛けたし…ゆっくりくるといいさ…俺はも何もしない…待ってるだけでいいんだ。そうしたら…君のご主人さまが壊れるだけだからさぁ。」
楽し気に男は笑う。
僕は、自分の体に何かこれから変化が出るのだろうかと恐怖を覚えながら扉の方を見る。
ここから本当に無事に出られるのだろうか…。
そんな恐怖に心が凍って行くのを感じながら。
手足を拘束されさるぐつわを噛まされている。
魔石は奪われている。
ブレスレットも手首に感触が無いので外されているのだろう。
力を封じる結界でも張られているのか。
体の中の力が動かない。
少し離れたところに足が見える。
僅かに顔を上げその方向とみると、男が椅子に座っている。
椅子に座って本を呑気に読んでいる様子の男は僕が目を覚ましていることに気が付いていないようだった。
いや…僕の意識が戻ろうが、戻らなくても興味もないのだろう。
おそらくは、僕に興味が無いのだ。
彼が興味があるのは僕の周りの者。
そう感じられた。
それにしても…とゆっくりと再び目を閉じる。
体に特に異変はない。
薬のようなものを飲まされたのでてっきりあの薬かと思った。
どうやら違ったようだと目を閉じる。
一体何を飲まされたのだろうか。
男はじっとしている。
何かを待っているかのように。
それは、僕の目覚めではないことはわかった。
僕は目を閉じたまま自分の体を鑑定する。
異変は無いようだった。
力を封じられているので無駄だろうと思いつつも必死に自分の状態を確かめる。
とはいっても鑑定は、元々どうにも自分自身にかけると曖昧になってしまう。
それに最近は誰に使っても好感度や嫌悪値もぼやけてしまってきていた。
生き物以外の物質には仕えるが。
これは何なのだろう。どういうことなのだろう。
僅かに見えた情報では、辛うじておそらく問題はなさそうだという事はわかったが。
『世界の在り方が変わって来ているからからかな。』
僕がぼんやりと考えていたことに『俺』がそう答えた。
どういう意味と僕が問うと『俺』は、確証はないけれどとつぶやく。
『鑑定とか好感度とか嫌悪値ってあのゲームに近い運命を持っていた世界だから適用されていたのだと思う。』
僕は、頷く。
『けど…たぶん…ゲームと今はかなり違ってきているだろう?』
僕は、そうだねと頷く。
『だからゲームの要素は薄れてきているのだと思う。元々ラスティの鑑定は、ゲームの傍観者として能力で、ゲームと離れた今はその能力はズレてきたんだと思う。』
能力が無くなったのではなく、世界がその能力で測れなくなってきたということだろうと『俺』はいう。
僕はぼんやりと、いいことなのだよねと『俺』に問う。
『俺』は少し考えていた。
どちらともいえないと。
そうと僕は、心の中でつぶやいた。
それにしても…僕が飲まされたのは何だろう。
そして男は僕をどうしてさらったのだろうと思う。
『俺』は少し複雑な感情を僕に送ってきた。
おそらく僕は、今回は巻き込まれただけだろうと。
僕は目を男の方に向ける。
男はもうトリスティの顔をしていない。
けど、何故か僕は男が僕を襲ったトリスティだとわかった。
この男がトリスティにどうやってか知らないが彼の真似をしていたのだ。
マールが戸惑っていたのは、おそらくトリスティに違和感を感じたからだろう。
目の前の男がトリスティではないと、思ったのか…違うと分かってたら僕を置いていかなかっただろうから、もしかしたら違うかもと言う感覚だけを持ったのかもしれない。
確証がなく気のせいだと思ったくらいの僅かな違和感。
それは当たっていたという事なのだろう。
今頃彼は、その違和感を信じればよかったと己を責めていなければいいけれど。
冷たく固い床の感触。
僕は感触を感じながら、使い魔を作るか…ディーを呼び出せないか考える。
が、僕の力は封じられている。
結界もあるのだろう。
更に、この体をぐるぐる巻きにしている綱が僕の力を奪っている。
まずは…これを外さないと無理か。
そう思いながら、僕に何もせず転がし放置している男の目的を考える。
トリスティの関連だろうということはわかる。
けれど…どうしてと思う。
ゆっくりと上を見ると男は眉を寄せた。
男が本を閉じてため息をついた。
「うーん…意外に早かったかな…まぁ…そうだよな…必死になるよねぇ…。あの使用人よりやっぱり王妃様の方がダメージ強いよなぁ。うんうん。」
男はくすくすと笑う。
「起きてるのでしょう?お妃さま。ごめんね。ひどい目に合わせて。でもいいよね?君は陛下がいるし。かえってしっかり慰めてもらってよ。どうせ君にはそれくらいしかできないでしょ?可愛がってもらって、楽しく生きなよ。きっと愛されてるだけの人生の方が君には楽だと思うし。そういうものなんでしょ?金の瞳の子って。もう少し我慢してたら愛しい旦那様に可愛がってもらえるから我慢してね。俺は無理なんだ。俺、トリスティしか興味ないからさ。君がどんなに欲しがってもあげれないんだよな。」
僕は眉を寄せる。
「ふふっ…この薬の解毒剤でも飲んだ?ずいぶん閉域そうだけど。君が解毒っていうか…緩和剤を作ったのは知ってるけど…効力があれよりかなり強化されてるから…解毒剤飲んでも無駄だよ。まぁ…少しは効いているのかな。平気っぽいから…でも時間がたったら薬の効力の方が増してくるって話だし。どちらにしても飲んだらおしまいらしいよ。それ。かわいそうにね?」
男はやはり僕に薬を飲ましたらしい。
『俺』が何故か飲み込んでしまっているからた、僕の腹には入っているはずだ。
けれど特に感覚がおかしいという事はない。
男の言うように時間差なのだろうか。
「馬鹿なことしてるって思ってる?まぁ…もうトリスティが僕を見てくれることは無いと思うのだけど…あの使用人と幸せにというのもムカつくんだよね。だからさ…大事なご主人様を守れなかったっていう心の傷を刻み込んでやろうと思ったんだ。」
関係ないのにごめんねと男は笑う。
にたりと楽し気に。
「君を苦しめると…あいつも苦しむし…あの使用人もきついだろう?」
本当はあの使用人に飲ませようと思ってたのだけど。
そう男は笑う。
君の方が効果的だよねと。
つまり…男のも目的はトリスティとマール。
マールを狙っていたが、僕に切り替えた。
その方が二人が苦しくから。
そう言う事なのだろう。
男は笑っている。
トリスティとジークハルトとロイスが、泣きながら僕を呼ぶマールをつれて、階段を下りている映像が、部屋の天井に映った。
「ふふ…あはぁ…怒ってる。それ以上に焦っているね。」
映像を見て男は笑っている。
苦しむトリスティを見て楽し気に笑っているのだ。
「色々仕掛けたし…ゆっくりくるといいさ…俺はも何もしない…待ってるだけでいいんだ。そうしたら…君のご主人さまが壊れるだけだからさぁ。」
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