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第六章 運命の一年間
158 祭壇 ディオスside
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後方で何かあったことにディオスは、焦る。
後ろへの竜からの攻撃はなかった。
竜が何かしたという事は無いはずだった。
「陛下!!アスが…」
マールがディオスに声をかける。
だが、ディオスも竜から目を話すことができない。
「マール…今は…」
バルハルトがマールを制している。
「でも…アスが…アス様が…」
落ち着けと声をバルハルトがマールに声をかけているのはわかった。
後ろが気になるが振り向けない。
今、竜から目を離して隙を見せるわけにはいかないからだ。
だが、バルハルトとマールの声はただ事ではない。
じりじりとした時間が過ぎる。
竜はディオスをじっと見つめていた。
品定め素するように。
ディオスを見つめる竜が、咆哮を上げた。
攻撃してくる気かとディオスは、構える。
竜はディオスの方に首を巡らすとディオスの隙を伺っているのかじっと見つけてくる。
ディオスはただ竜を睨みながら竜の次の行動を待つ。
自分が焦っていることをディオスは自覚していた。
今、攻撃を受ければ焦りのあまり普段に無い失敗を犯すかもしれない。
自ら攻撃するにしてもまだ竜の弱点を見極めていない。
落ち着けとディオスは自分に言い聞かせる。
この場を切り抜けねばとディオスは剣を構えなおす。
だが、竜は動かない。
ディオスは、眉を寄せる。
竜は殺気を納め満足そうに息を吐いてディオスを見ていた。
ディオスの隙を狙っていたのでは竜は無かった。
彼が落ち着くのを待っていたのだ。
『礼を言う、王よ…愚かな聖者に奪われていた我が主の欠片が祭壇へと戻った。』
竜が体をずらすとそこには大きな祭壇があった。
琥珀色の魔石に覆われているが、おそらく元は白と青を基調にした色なのだろう。
細かい植物の美しい装飾に彩られた祭壇がそこにあった。
よく見ると、祭壇には卵型の美しい大きな琥珀色の魔石が浮かんでいる。
壁の琥珀に紛れて竜の背後にそんなものがあるとディオスは気が付かなかった。
そもそも祭壇にもディオスは気が付いていなかった。
ディオスは、気が付かなかった己に舌打ちしつつ竜を見る。
竜は、戦意を見せずディオスから目を離すとゆっくりと魔石を眺めた。
見たことのないほどの力をもつ魔石。
壁の琥珀の大元は竜ではなくあれかとディオスは思う。
竜は満足げに頷くとディオスを見た。
『この祭壇の役目も終える。主が天に帰る時が近い。』
ディオスは竜を油断なく睨みつけたまま竜の言葉を待つ。
『王が連れてきた主の魂は、骸へと戻った。』
ディオスは、魔石を見る。
ーなんだ…妙に安心するというか…ー
魔石から感じる感覚にディオスは戸惑う。
何か…見過ごしてはいけないことを感じたからだ。
魔石から感じる何かに集中する。
「あ……」
ぞっとディオスは背筋を凍らせた。
浮かぶ魔石から、先ほど守ろうと決めたモノの気配を感じたからだ。
竜は骸と魔石を呼んだ。
ならばあの魔石に帰った返ったとしても魂は、ただ宿っただけ。
その体の無い魂はそのうちに消えてしまう。
竜の言う通り天に帰るのだ。
『王よ…気が付いたようだな…礼を言う…主は解放された。』
解放されたと竜は言うが、ディオスにとって肉体から離れ魂が天に帰るということはただ死だ。
『あとは王に託す。王だけが主を再びこの地に呼べるだろう…このまま天に返すというならばそれも主の運命。』
竜の言う主と言うのはラスティかアスのことだろう。
よく似ている…、よく似た魂だが少し違う。
バルハルトとマールは、アスが…と後ろで言っているが万が一、ラスティの場合もある。
ディオスは注意深く魔石を見た。
あの魔石からアスの気配をディオスは感じる。
「なぜ…」
アスは人工的に生み出された人格のはずだ。
とは言ってもディオスはもう一つの可能性は考えていた。
疑似人格を器にしてラスティの中にいる可能性があった五番目の子どもが現れたのではないかというものだ。
考えはしていたが、その可能性をディオス自身は否定していた。
五番目の子どもなどいないと思っていた。
当事者だという自分が自覚がない。
三番目の子どもと言うのは何だろうと。
肉体には魂が一つ。
ディオスの中にはディオスしかいない。
ラスティの場合は聖者が、人格を作った。
その人格が、何故か魂を持った。
肉体に魂が二つあるためラスティに異常がで始めた。
もともと持っていたものではないだろうとディオスは考えていた。
そもそも人格と魂の差が何かディオスには理解できていないが。
「もともと…ということなのか…だが…御伽噺だ…」
御伽噺とディオス自身が言っていた。
実際あるかどうかディオスはあまり信じていなかったことだからだ。
御伽噺と言いながら信じていたバルハルトとジェンに合わせていただけといえる。
別の何かの事実はあるだろうが、事実あったことを大げさに面白くしたものだろうと。
本当だというのだろうか、御伽噺がと一瞬だけディオスの頭によぎるがそれは一瞬だけで忘れた。
それはディオスにはどうでも良いことだ。
守ると決めたものが奪われた。
ディオスはそれだけを認識した。
「貴様……」
時間が無いとディオスは思う。
あの魔石が骸ならば、その骸に宿った魂はすぐに天に帰る。
天にかえることがアスの幸せなのかもしれないと一瞬思うがその考えをディオスは振り払った。
ラスティが悲しむ。
アスには悪いが、ディオスの考えの中心はラスティだ。
優先順位はラスティが上だ。
これだけは譲れない。
ラスティが望んだからだ。
ディオスもアスは、守るべきものだとは思う。
守りたいと思う。
望みは叶えたいくらいには可愛いとは思う。
笑っていてほしいと思う。
アスが天に帰りたいと思っているなら叶えたいとは思う。
だが、ラスティが望むなら神でも手に入れる。
アスが帰りたいと泣いても返すつもりはない。
矛盾しているが、ラスティを優先するためにはアスの望みを切り捨てることをディオスは選ぶ。
それにアスは帰ることを望んでいない。
ラスティと共に居たい思っている。
「…返せ…」
竜がすでに戦う気つもりが無いのは分かっていた。
だが、ディオスは怒りを視線に乗せ、竜を睨んだ。
後ろへの竜からの攻撃はなかった。
竜が何かしたという事は無いはずだった。
「陛下!!アスが…」
マールがディオスに声をかける。
だが、ディオスも竜から目を話すことができない。
「マール…今は…」
バルハルトがマールを制している。
「でも…アスが…アス様が…」
落ち着けと声をバルハルトがマールに声をかけているのはわかった。
後ろが気になるが振り向けない。
今、竜から目を離して隙を見せるわけにはいかないからだ。
だが、バルハルトとマールの声はただ事ではない。
じりじりとした時間が過ぎる。
竜はディオスをじっと見つめていた。
品定め素するように。
ディオスを見つめる竜が、咆哮を上げた。
攻撃してくる気かとディオスは、構える。
竜はディオスの方に首を巡らすとディオスの隙を伺っているのかじっと見つけてくる。
ディオスはただ竜を睨みながら竜の次の行動を待つ。
自分が焦っていることをディオスは自覚していた。
今、攻撃を受ければ焦りのあまり普段に無い失敗を犯すかもしれない。
自ら攻撃するにしてもまだ竜の弱点を見極めていない。
落ち着けとディオスは自分に言い聞かせる。
この場を切り抜けねばとディオスは剣を構えなおす。
だが、竜は動かない。
ディオスは、眉を寄せる。
竜は殺気を納め満足そうに息を吐いてディオスを見ていた。
ディオスの隙を狙っていたのでは竜は無かった。
彼が落ち着くのを待っていたのだ。
『礼を言う、王よ…愚かな聖者に奪われていた我が主の欠片が祭壇へと戻った。』
竜が体をずらすとそこには大きな祭壇があった。
琥珀色の魔石に覆われているが、おそらく元は白と青を基調にした色なのだろう。
細かい植物の美しい装飾に彩られた祭壇がそこにあった。
よく見ると、祭壇には卵型の美しい大きな琥珀色の魔石が浮かんでいる。
壁の琥珀に紛れて竜の背後にそんなものがあるとディオスは気が付かなかった。
そもそも祭壇にもディオスは気が付いていなかった。
ディオスは、気が付かなかった己に舌打ちしつつ竜を見る。
竜は、戦意を見せずディオスから目を離すとゆっくりと魔石を眺めた。
見たことのないほどの力をもつ魔石。
壁の琥珀の大元は竜ではなくあれかとディオスは思う。
竜は満足げに頷くとディオスを見た。
『この祭壇の役目も終える。主が天に帰る時が近い。』
ディオスは竜を油断なく睨みつけたまま竜の言葉を待つ。
『王が連れてきた主の魂は、骸へと戻った。』
ディオスは、魔石を見る。
ーなんだ…妙に安心するというか…ー
魔石から感じる感覚にディオスは戸惑う。
何か…見過ごしてはいけないことを感じたからだ。
魔石から感じる何かに集中する。
「あ……」
ぞっとディオスは背筋を凍らせた。
浮かぶ魔石から、先ほど守ろうと決めたモノの気配を感じたからだ。
竜は骸と魔石を呼んだ。
ならばあの魔石に帰った返ったとしても魂は、ただ宿っただけ。
その体の無い魂はそのうちに消えてしまう。
竜の言う通り天に帰るのだ。
『王よ…気が付いたようだな…礼を言う…主は解放された。』
解放されたと竜は言うが、ディオスにとって肉体から離れ魂が天に帰るということはただ死だ。
『あとは王に託す。王だけが主を再びこの地に呼べるだろう…このまま天に返すというならばそれも主の運命。』
竜の言う主と言うのはラスティかアスのことだろう。
よく似ている…、よく似た魂だが少し違う。
バルハルトとマールは、アスが…と後ろで言っているが万が一、ラスティの場合もある。
ディオスは注意深く魔石を見た。
あの魔石からアスの気配をディオスは感じる。
「なぜ…」
アスは人工的に生み出された人格のはずだ。
とは言ってもディオスはもう一つの可能性は考えていた。
疑似人格を器にしてラスティの中にいる可能性があった五番目の子どもが現れたのではないかというものだ。
考えはしていたが、その可能性をディオス自身は否定していた。
五番目の子どもなどいないと思っていた。
当事者だという自分が自覚がない。
三番目の子どもと言うのは何だろうと。
肉体には魂が一つ。
ディオスの中にはディオスしかいない。
ラスティの場合は聖者が、人格を作った。
その人格が、何故か魂を持った。
肉体に魂が二つあるためラスティに異常がで始めた。
もともと持っていたものではないだろうとディオスは考えていた。
そもそも人格と魂の差が何かディオスには理解できていないが。
「もともと…ということなのか…だが…御伽噺だ…」
御伽噺とディオス自身が言っていた。
実際あるかどうかディオスはあまり信じていなかったことだからだ。
御伽噺と言いながら信じていたバルハルトとジェンに合わせていただけといえる。
別の何かの事実はあるだろうが、事実あったことを大げさに面白くしたものだろうと。
本当だというのだろうか、御伽噺がと一瞬だけディオスの頭によぎるがそれは一瞬だけで忘れた。
それはディオスにはどうでも良いことだ。
守ると決めたものが奪われた。
ディオスはそれだけを認識した。
「貴様……」
時間が無いとディオスは思う。
あの魔石が骸ならば、その骸に宿った魂はすぐに天に帰る。
天にかえることがアスの幸せなのかもしれないと一瞬思うがその考えをディオスは振り払った。
ラスティが悲しむ。
アスには悪いが、ディオスの考えの中心はラスティだ。
優先順位はラスティが上だ。
これだけは譲れない。
ラスティが望んだからだ。
ディオスもアスは、守るべきものだとは思う。
守りたいと思う。
望みは叶えたいくらいには可愛いとは思う。
笑っていてほしいと思う。
アスが天に帰りたいと思っているなら叶えたいとは思う。
だが、ラスティが望むなら神でも手に入れる。
アスが帰りたいと泣いても返すつもりはない。
矛盾しているが、ラスティを優先するためにはアスの望みを切り捨てることをディオスは選ぶ。
それにアスは帰ることを望んでいない。
ラスティと共に居たい思っている。
「…返せ…」
竜がすでに戦う気つもりが無いのは分かっていた。
だが、ディオスは怒りを視線に乗せ、竜を睨んだ。
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