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第六章 運命の一年間
163 痕跡 ディオスside
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竜は何も言わなかった。
ただ、ディオスを見上げる。
「王が心を決めるまで、王の従者に語ろうか。どこまで理解しているか…。そうだな…よく聞くがいい…主も神の欠片。主は骸になった後も、残った力を使ってこの地下世界をただ守っていた。だが、主の奪われた欠片は主の最も大切な魂だ。地上の神の欠片は、そのことに気が付かず聖者に主の欠片を封じて、聖者の力とした。地上の神の欠片は地上を滅ぼすことに夢中になっていた。自らが作った駒である聖者に見限られ、聖者は己の力の源と知らず封印されていた主の欠片を、王の居城に埋め込んだ。聖者に酷使された主の欠片は、すでに力を失っていたからな。消滅寸前の主の魂の傍に、主に似た稀人の魂があったのは我らの幸運…王には不幸だった矢も知れぬが…」
竜は饒舌に語る。
バルハルトとマールに。
2人は戸惑いながら竜の話を聞いていた。
ディオスに考える時間を竜は与えたという事なのだろう。
バルハルトとマールもそのことに気が付いている。
だから、黙って同じようなことを繰り返す竜の話を聞いている。
ディオスは眉をよせる。
魔石を眺めながら、頭の中を整理する。
この世界のことを考えるならアスは復活されるべきだろう。
地上の神の欠片に対抗するには、対になる地下の神の欠片の力があれば心強いだろう。
地上の崩壊の間も進み続けた地下。
そう、地層による繰り返しの世界のこん跡。
「繰り返しの世界の後が大地に残っていたのは…大地は地下世界の管轄だったから…」
ディオスの質問に、そうだと竜は頷く。
「王の国がここにあるのもまだ主を守る処置よ。王の魂も神の欠片。王が主に逆らえぬのは主の無償の愛と信頼故、王の番とは別のまた無二の存在ではある。不義の愛も無し。王が不義の罪悪にかられることはない。」
竜のしたり声にディオスは、口を尖らす。
おそらく、アスのことを可愛い思ったことをここに来る前に感じていたことを言い出したのだろう。
暗くなるディオスの考えを止めるつもりもあったのだろうが。
それにしても、自分も良くしていることだが他人にやられると腹が立つものだと不機嫌を顔に乗せる。
「この穴は我が居城。この穴の者たちの心の内は流れ込んでくるものだ。愛されておるな王。」
うるさいと小さく呟くとディオスは竜を睨む。
「俺のことはいい」
応と竜は頷く。
「王の番が、主の魂を育てた。王の番は育てた気は全く無いようだが、それも良し。我が望むは主の復活。王の力を我は請わねばならぬ。主の核で足りぬというならば我を砕いて使うがよい。王の力は試した。その力ならば、主を守れるであろう。ならば、我はもう不要の存在よ。」
ディオスは、竜を見ながら眉を寄せる。
不要と言うならば、国の利益に出来ないだろうかと。
周りの魔石はこの竜が主と呼ぶ魔石がここにあるからからだろうが竜も強大な存在だ。
「魔石……」
そう、竜もかなりの魔物でここまで人の言葉を話せる竜をディオスは見たことがない。
この竜が存在するだけで魔石の鉱山は出来る。
地表の洞窟にこの竜を住まわせれば王国でも良質な魔石が簡単に安全に取れるようになるなとディオスは思う。
ーなんだが、ラスティは…いや…あれはアスなのか?ともかく、魔石の精製が苦手のようだし…良質な魔石が楽に手に入ったら、薬学の研究も捗るかも…外に出さないように育てたせいか内にこもってるからなぁ…ー
おそらく、ディオスの考えていることが流れ込んでいるのか竜は不思議そうにディオスを見ている。
「うん?意外と俗な考えを持つな。なる程…我もある程度は魔石を生み出すことは出来る。王の国の財を増やすことにつながるか?…財ではないか…建前はあれど、どこまでも番のこととは…ここは呆れるべきか?主の供が二人してあきれ返っておるが…」
ディオスは、バルハルトとマールにまで考えを読まれたかと頭をかく。
「いや…だって…」
質の良い魔石があればラスティが喜ぶ。
彼は彼が考えている以上に研究が好きなのだ。
凝り性のようだしとディオスは思う。
ラスティには好きなことをしてほしい。
はやく憂いも無くのんびり薬学の研究をしてもらいたい。
そのために良質な魔石の確保先があるのはいいだろう。
竜は、よいよいと言うと首を傾げた。
「王の番のためならば、主に頼めばよいだろう。主は豊富に魔石を生み出せる。主は父である王の番に逆らうまい。」
ディオスは竜の言葉に固まった。
王の番とはラスティのことだろう。
そのラスティが父と?とディオスは思考が真っ白になった。
ラスティが父なら、ディオスが母か?
「…王の番が、主の人格を育てたが…生み出すのは王だから王が母であろう?」
竜は何を当たり前のことを不思議そうだ。
ディオスは、そう言われるとそうなのかと悩む。
「腹は痛めないが…私が母か?」
ディオスの言葉に、竜は首をかしげる。
「…人は生み出す方を母と呼ぶ。この場合は主の母は王になるだろう。」
ディオスは、一瞬ラスティ似の青年に母と呼ばれている自分を想像して悩む。
ー嫌ではないが…ー
ラスティは、ディオスの弟に似ている部分がある。
ディオスがラスティ以外と子供を作ってもラスティに似ても不思議がない。
ふと、ジークハルトの顔が浮かんだ。
彼はたまにずれている。誤解しそうだと思う。
自分の実の隠し子と誤解される可能性が浮かんだ。
ジークハルトが誤解したらとてつもなくメンドクサイ。
「うわぁ…誤解されるかも…浮気…誤解されるかも…それはどうしよう…」
だが、と、ふとそう言えばバルハルトも産んでるしなぁとスンと真顔になった。
「…別にいいのか…」
ジークハルトの父がそうなのだから別にディオスが産んだという事にして誤魔化せばいい。
母でもなんでもいい。
一度守ると決めたのだからアスは守るし息子にする。
「アスに…母と呼ばれるのか…ちょっと…と思ったけど…それはそれでいい。」
正気に戻れ!!ディオス!!!とバルハルトが叫んでいるがディオスは、母呼びを覚悟する。
宰相とかバルハルトにあずけるとか考えてたのがめんどくさくなってくる。
やっぱり自分が直接引き取ろう。とディオスは思う。
「アスは普通に陛下って呼んでいましたから…母さまとは呼ばないかと…。」
マールが真顔で突っ込みを入れた。
ディオスが、不満そうに首を横に振る。
「いや…陛下とは却下だ。まだ母の方が百万倍ましだ。」
バルハルトがため息をつく。
実の所バルハルトが産んだ子にもバルハルトは父上と呼ばせている。
家庭内の呼び方が、ややこしくなるからだ。
「父上呼びを頼んだらアスなら素直に応じるだろうが…なんでこういうところは頭が回らなくなるんだ!!」
バルハルトは首を大きく振ってディオスに提案する。
「ラスティがいるのに愛人でもいるのかと誤解されたらどうするんだ!!お前の息子は頭が固いんだぞ!!!…父呼びだと、ジークハルトが暴走する気がする!!」
ディオスの言葉にバルハルトが頭を抱える。
「ジークハルトはそこまで馬鹿では……あーーーダメだ…なんでか知らんがそう言うところはディオスに似て暴走する…やっぱりあれか??早々にディオスに預けたからか??教育を間違ったか!!!というか落ち着け!!暴走するなら父呼びでも母呼びでも同じだ!!母呼びでしか誤解しないとか絶対ない!!!父呼びだろうが母呼びだろうがあれは一度は暴走するだろうが、暴れたら冷静になるはずだ。そもそもお前の思考がおかしいことにいい加減気が付いてくれ!!考えすぎておかしくなってるだろう!!」
バルハルトの叫びにディオスが失敬な!!と怒っている。
マールは、竜の前で喧嘩をする王と騎士団長を止めようとオロオロと必死に言葉を紡いだ。
「そもそも、ジークハルト様はアス様のことを知っているのですから誤解しないと…お二人ともジークハルト様のことをなんだと思っているんですか…暴走しているのはお二人の方ですから…。」
マールは説得を試みるがどうも二人とも聞いていない。
「……主を託すのを考え直した方がいいのだろうか……問題がズレていくのだが……」
竜は遠い目で騒ぐ三人を眺めていた。
ただ、ディオスを見上げる。
「王が心を決めるまで、王の従者に語ろうか。どこまで理解しているか…。そうだな…よく聞くがいい…主も神の欠片。主は骸になった後も、残った力を使ってこの地下世界をただ守っていた。だが、主の奪われた欠片は主の最も大切な魂だ。地上の神の欠片は、そのことに気が付かず聖者に主の欠片を封じて、聖者の力とした。地上の神の欠片は地上を滅ぼすことに夢中になっていた。自らが作った駒である聖者に見限られ、聖者は己の力の源と知らず封印されていた主の欠片を、王の居城に埋め込んだ。聖者に酷使された主の欠片は、すでに力を失っていたからな。消滅寸前の主の魂の傍に、主に似た稀人の魂があったのは我らの幸運…王には不幸だった矢も知れぬが…」
竜は饒舌に語る。
バルハルトとマールに。
2人は戸惑いながら竜の話を聞いていた。
ディオスに考える時間を竜は与えたという事なのだろう。
バルハルトとマールもそのことに気が付いている。
だから、黙って同じようなことを繰り返す竜の話を聞いている。
ディオスは眉をよせる。
魔石を眺めながら、頭の中を整理する。
この世界のことを考えるならアスは復活されるべきだろう。
地上の神の欠片に対抗するには、対になる地下の神の欠片の力があれば心強いだろう。
地上の崩壊の間も進み続けた地下。
そう、地層による繰り返しの世界のこん跡。
「繰り返しの世界の後が大地に残っていたのは…大地は地下世界の管轄だったから…」
ディオスの質問に、そうだと竜は頷く。
「王の国がここにあるのもまだ主を守る処置よ。王の魂も神の欠片。王が主に逆らえぬのは主の無償の愛と信頼故、王の番とは別のまた無二の存在ではある。不義の愛も無し。王が不義の罪悪にかられることはない。」
竜のしたり声にディオスは、口を尖らす。
おそらく、アスのことを可愛い思ったことをここに来る前に感じていたことを言い出したのだろう。
暗くなるディオスの考えを止めるつもりもあったのだろうが。
それにしても、自分も良くしていることだが他人にやられると腹が立つものだと不機嫌を顔に乗せる。
「この穴は我が居城。この穴の者たちの心の内は流れ込んでくるものだ。愛されておるな王。」
うるさいと小さく呟くとディオスは竜を睨む。
「俺のことはいい」
応と竜は頷く。
「王の番が、主の魂を育てた。王の番は育てた気は全く無いようだが、それも良し。我が望むは主の復活。王の力を我は請わねばならぬ。主の核で足りぬというならば我を砕いて使うがよい。王の力は試した。その力ならば、主を守れるであろう。ならば、我はもう不要の存在よ。」
ディオスは、竜を見ながら眉を寄せる。
不要と言うならば、国の利益に出来ないだろうかと。
周りの魔石はこの竜が主と呼ぶ魔石がここにあるからからだろうが竜も強大な存在だ。
「魔石……」
そう、竜もかなりの魔物でここまで人の言葉を話せる竜をディオスは見たことがない。
この竜が存在するだけで魔石の鉱山は出来る。
地表の洞窟にこの竜を住まわせれば王国でも良質な魔石が簡単に安全に取れるようになるなとディオスは思う。
ーなんだが、ラスティは…いや…あれはアスなのか?ともかく、魔石の精製が苦手のようだし…良質な魔石が楽に手に入ったら、薬学の研究も捗るかも…外に出さないように育てたせいか内にこもってるからなぁ…ー
おそらく、ディオスの考えていることが流れ込んでいるのか竜は不思議そうにディオスを見ている。
「うん?意外と俗な考えを持つな。なる程…我もある程度は魔石を生み出すことは出来る。王の国の財を増やすことにつながるか?…財ではないか…建前はあれど、どこまでも番のこととは…ここは呆れるべきか?主の供が二人してあきれ返っておるが…」
ディオスは、バルハルトとマールにまで考えを読まれたかと頭をかく。
「いや…だって…」
質の良い魔石があればラスティが喜ぶ。
彼は彼が考えている以上に研究が好きなのだ。
凝り性のようだしとディオスは思う。
ラスティには好きなことをしてほしい。
はやく憂いも無くのんびり薬学の研究をしてもらいたい。
そのために良質な魔石の確保先があるのはいいだろう。
竜は、よいよいと言うと首を傾げた。
「王の番のためならば、主に頼めばよいだろう。主は豊富に魔石を生み出せる。主は父である王の番に逆らうまい。」
ディオスは竜の言葉に固まった。
王の番とはラスティのことだろう。
そのラスティが父と?とディオスは思考が真っ白になった。
ラスティが父なら、ディオスが母か?
「…王の番が、主の人格を育てたが…生み出すのは王だから王が母であろう?」
竜は何を当たり前のことを不思議そうだ。
ディオスは、そう言われるとそうなのかと悩む。
「腹は痛めないが…私が母か?」
ディオスの言葉に、竜は首をかしげる。
「…人は生み出す方を母と呼ぶ。この場合は主の母は王になるだろう。」
ディオスは、一瞬ラスティ似の青年に母と呼ばれている自分を想像して悩む。
ー嫌ではないが…ー
ラスティは、ディオスの弟に似ている部分がある。
ディオスがラスティ以外と子供を作ってもラスティに似ても不思議がない。
ふと、ジークハルトの顔が浮かんだ。
彼はたまにずれている。誤解しそうだと思う。
自分の実の隠し子と誤解される可能性が浮かんだ。
ジークハルトが誤解したらとてつもなくメンドクサイ。
「うわぁ…誤解されるかも…浮気…誤解されるかも…それはどうしよう…」
だが、と、ふとそう言えばバルハルトも産んでるしなぁとスンと真顔になった。
「…別にいいのか…」
ジークハルトの父がそうなのだから別にディオスが産んだという事にして誤魔化せばいい。
母でもなんでもいい。
一度守ると決めたのだからアスは守るし息子にする。
「アスに…母と呼ばれるのか…ちょっと…と思ったけど…それはそれでいい。」
正気に戻れ!!ディオス!!!とバルハルトが叫んでいるがディオスは、母呼びを覚悟する。
宰相とかバルハルトにあずけるとか考えてたのがめんどくさくなってくる。
やっぱり自分が直接引き取ろう。とディオスは思う。
「アスは普通に陛下って呼んでいましたから…母さまとは呼ばないかと…。」
マールが真顔で突っ込みを入れた。
ディオスが、不満そうに首を横に振る。
「いや…陛下とは却下だ。まだ母の方が百万倍ましだ。」
バルハルトがため息をつく。
実の所バルハルトが産んだ子にもバルハルトは父上と呼ばせている。
家庭内の呼び方が、ややこしくなるからだ。
「父上呼びを頼んだらアスなら素直に応じるだろうが…なんでこういうところは頭が回らなくなるんだ!!」
バルハルトは首を大きく振ってディオスに提案する。
「ラスティがいるのに愛人でもいるのかと誤解されたらどうするんだ!!お前の息子は頭が固いんだぞ!!!…父呼びだと、ジークハルトが暴走する気がする!!」
ディオスの言葉にバルハルトが頭を抱える。
「ジークハルトはそこまで馬鹿では……あーーーダメだ…なんでか知らんがそう言うところはディオスに似て暴走する…やっぱりあれか??早々にディオスに預けたからか??教育を間違ったか!!!というか落ち着け!!暴走するなら父呼びでも母呼びでも同じだ!!母呼びでしか誤解しないとか絶対ない!!!父呼びだろうが母呼びだろうがあれは一度は暴走するだろうが、暴れたら冷静になるはずだ。そもそもお前の思考がおかしいことにいい加減気が付いてくれ!!考えすぎておかしくなってるだろう!!」
バルハルトの叫びにディオスが失敬な!!と怒っている。
マールは、竜の前で喧嘩をする王と騎士団長を止めようとオロオロと必死に言葉を紡いだ。
「そもそも、ジークハルト様はアス様のことを知っているのですから誤解しないと…お二人ともジークハルト様のことをなんだと思っているんですか…暴走しているのはお二人の方ですから…。」
マールは説得を試みるがどうも二人とも聞いていない。
「……主を託すのを考え直した方がいいのだろうか……問題がズレていくのだが……」
竜は遠い目で騒ぐ三人を眺めていた。
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