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第六章 運命の一年間
162 疑問 ディオスside
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ディオスは、アスのための魔術の構成を練るためにもう少し何かが足りないと竜を見つめる。
時間は…まだあるなとディオスは魔石を見て眉を寄せる。
ー時間はあるが…なぜ…竜はアスを危険に晒している?ー
竜は、アスを主と大切にしている。
別にラスティに入れたままでもディオスを今の状況まで持ってこれただろう。
アスをラスティから抜く必要はないとディオスは思う。
竜は、ディオスの考えを読んだのか、ラスティを見ると目を細めた。
「なぁ…竜…お前はラスティのために…アスを抜いたのか?」
竜は、少し考えてから主のためだとつぶやいた。
「…アスのためにはラスティは必要という事か?」
竜は頷く。
「王の番は、主と縁がある…我とも縁がある魂だ。本人は覚えてはいない。だが…その縁故に主は王の番がいなくなれば嘆く。我もそれは避けたい。主の骸が近くあるために主の存在が王の番の負荷が大きくなっていた。王の番と主では、今は主のほうが強い…王に断られても…天にかえることは主にとっては故郷に帰るという事だ。王の番を救う方が重要であろう。」
竜は、しゅんぼりとうなだれた。
「王が失敗しても主は故郷に帰るだけだ…気にするな…」
ディオスは、青筋を額に浮かべた。
失敗しないように聞いているのだが!!と思いながら竜を睨む。
竜はディオスを見て首を傾げた。
「難しいな…気を利かしたつもりだったのだが…」
バルハルト、竜にそれは煽ったというのだと教えている。
ディオスは、質問を考えるがどうもうまく形にならない。
竜に信用されていないのも多少イラついたが、それだけではない。
何か足りないのだ。
アスの本質が神の欠片と言う人の手に負えないものだということになる。
同じく神の欠片の魂を持つというディオスに竜が頼ってきたのはそういうことだろう。
ならば、神の欠片と言うものの力が必要なのだろうか。
ディオスはそう思い竜に問う。
「王の欠片が、転生したものが私だというなら私になにか欠片と言う奴の能力があるのか?」
竜は、ディオスを見ると首を横に振る。
「王の欠片は…名が無かったことが災いした。名で魂が縛られていなかった王の欠片は、欠片としての機能を失ったのだ。王の欠片は、欠片としての最後の力を振り絞って人に転生できるように己の運命を変化させた。己の魂にある試練を埋め込んでな。王族という一族は、王の欠片の最初の転生は記録をわずかに持っていた。試練のための土壌つくりとして、王の一族を作り上げたのだろう。試練を超えれば、王の魂は天の欠片の元に戻る。そうなれば天の欠片が、王の魂を欠片に戻すか、どうかを決めるであろう。」
ディオスが首をかしげる。
「なんだ?その試練とは。」
竜は首をかしげる。
「やはり、自分のことだろうにわからぬものなのだな…まぁ王の欠片の魂を持つと言っても、王は人の子、生まれ変われば記憶は白紙になり思い出したとしても、少し前の生の記録が見える程度になるのだったな。欠片の時は思い出せまい。ならば運命か、主の導きか…王の試練は…いや…決意と言うべきか…陰の欠片を開放すること。とは言っても陰の欠片そのものはもう戻らぬ。生まれ変わらせることというべきか?」
竜は、悲し気にうなだれた。
「主は元のままには戻らぬ…我も愚かよ…分かっておっても…主と主にあった時の姿を保存している。我の望みは…番を救わんとする王より愚かなもの。今、主が天に帰れば天の欠片があの愚かな陽の欠片を砕いてすべてを天の欠片が平らにして終わるであろう…骸に蓄積された記憶を持って天に帰れるからな…。だが…我は己の望みのために王に託す。王よ…主を…天に返すか地にとどめるか…王が決めよ。」
竜は、まっすぐにディオスを見つめる。
ディオスは、魔石の方に目を向けて悲し気に眉を寄せた。
傍にいてほしい。
そう考えるのは、感じるのは自分の中にいるという三番目の子ども…王の欠片の感情なのだろうか。
あの子を愛しいと感じているのは、自分の感情ではないのだろうか。
「…神のなんちゃらの感情に振り回されているだけなのか?」
ディオスは、魔石を眺める。
足りないのは…これなのかとディオスは思う。
自分の感情が揺れているからだと。
失ったと泣いている感情が自分の心を蝕んでいる。
ー弟が死んだときの虚無が…思い出されているからか…ー
こんな寂しい場所で、アスの元だという陰の欠片は一度聖者リオンに殺されたのだと何かが泣いている。
馴染んだ感覚だった。
「…弟が…そうだ…弟は…今回…」
記録を探る。
繰り返しの生で、ディオスに弟と呼ばれる存在はいたが、あの子ではなかったと思う。
弟の記憶が、ディオスの頭の中で笑う。
ー兄さま…また…俺だって強いのです。兄さまに会いに帰ってきますから…そんな顔しないでください。ー
これは、どちらの記録だとディオスは思う。
兄弟で言うならば、兄たちも国から送り出した。
今も兄たちが行った国は戦いに明け暮れている。
それにはディオスは何も感情が浮かばない。
弟だったから。
守らないとならないと思っていたから。
弟は特別だったから。
「足りないのは…俺の覚悟か……」
そうかもなと竜は短くなったしっぽを軽く振った。
「足りぬものはないだろう。だが…我には王が足踏みしているように感じる。王は…弟を失うのが怖いのだろう。」
竜の言葉に嘘は感じない。
ディオスはどこかで納得し、悲しんでいた。
守れなかったのだという後悔を深いところで感じている。
自分と同じで同じではない心が泣いているのを感じる。
馴染んだ感覚だった。
そして、もういいだろうと囁く声を。
自由にしてやってくれという嘆きを感じる。
「……天に返すのが…あの子の幸せなのかもしれないな…」
時間は…まだあるなとディオスは魔石を見て眉を寄せる。
ー時間はあるが…なぜ…竜はアスを危険に晒している?ー
竜は、アスを主と大切にしている。
別にラスティに入れたままでもディオスを今の状況まで持ってこれただろう。
アスをラスティから抜く必要はないとディオスは思う。
竜は、ディオスの考えを読んだのか、ラスティを見ると目を細めた。
「なぁ…竜…お前はラスティのために…アスを抜いたのか?」
竜は、少し考えてから主のためだとつぶやいた。
「…アスのためにはラスティは必要という事か?」
竜は頷く。
「王の番は、主と縁がある…我とも縁がある魂だ。本人は覚えてはいない。だが…その縁故に主は王の番がいなくなれば嘆く。我もそれは避けたい。主の骸が近くあるために主の存在が王の番の負荷が大きくなっていた。王の番と主では、今は主のほうが強い…王に断られても…天にかえることは主にとっては故郷に帰るという事だ。王の番を救う方が重要であろう。」
竜は、しゅんぼりとうなだれた。
「王が失敗しても主は故郷に帰るだけだ…気にするな…」
ディオスは、青筋を額に浮かべた。
失敗しないように聞いているのだが!!と思いながら竜を睨む。
竜はディオスを見て首を傾げた。
「難しいな…気を利かしたつもりだったのだが…」
バルハルト、竜にそれは煽ったというのだと教えている。
ディオスは、質問を考えるがどうもうまく形にならない。
竜に信用されていないのも多少イラついたが、それだけではない。
何か足りないのだ。
アスの本質が神の欠片と言う人の手に負えないものだということになる。
同じく神の欠片の魂を持つというディオスに竜が頼ってきたのはそういうことだろう。
ならば、神の欠片と言うものの力が必要なのだろうか。
ディオスはそう思い竜に問う。
「王の欠片が、転生したものが私だというなら私になにか欠片と言う奴の能力があるのか?」
竜は、ディオスを見ると首を横に振る。
「王の欠片は…名が無かったことが災いした。名で魂が縛られていなかった王の欠片は、欠片としての機能を失ったのだ。王の欠片は、欠片としての最後の力を振り絞って人に転生できるように己の運命を変化させた。己の魂にある試練を埋め込んでな。王族という一族は、王の欠片の最初の転生は記録をわずかに持っていた。試練のための土壌つくりとして、王の一族を作り上げたのだろう。試練を超えれば、王の魂は天の欠片の元に戻る。そうなれば天の欠片が、王の魂を欠片に戻すか、どうかを決めるであろう。」
ディオスが首をかしげる。
「なんだ?その試練とは。」
竜は首をかしげる。
「やはり、自分のことだろうにわからぬものなのだな…まぁ王の欠片の魂を持つと言っても、王は人の子、生まれ変われば記憶は白紙になり思い出したとしても、少し前の生の記録が見える程度になるのだったな。欠片の時は思い出せまい。ならば運命か、主の導きか…王の試練は…いや…決意と言うべきか…陰の欠片を開放すること。とは言っても陰の欠片そのものはもう戻らぬ。生まれ変わらせることというべきか?」
竜は、悲し気にうなだれた。
「主は元のままには戻らぬ…我も愚かよ…分かっておっても…主と主にあった時の姿を保存している。我の望みは…番を救わんとする王より愚かなもの。今、主が天に帰れば天の欠片があの愚かな陽の欠片を砕いてすべてを天の欠片が平らにして終わるであろう…骸に蓄積された記憶を持って天に帰れるからな…。だが…我は己の望みのために王に託す。王よ…主を…天に返すか地にとどめるか…王が決めよ。」
竜は、まっすぐにディオスを見つめる。
ディオスは、魔石の方に目を向けて悲し気に眉を寄せた。
傍にいてほしい。
そう考えるのは、感じるのは自分の中にいるという三番目の子ども…王の欠片の感情なのだろうか。
あの子を愛しいと感じているのは、自分の感情ではないのだろうか。
「…神のなんちゃらの感情に振り回されているだけなのか?」
ディオスは、魔石を眺める。
足りないのは…これなのかとディオスは思う。
自分の感情が揺れているからだと。
失ったと泣いている感情が自分の心を蝕んでいる。
ー弟が死んだときの虚無が…思い出されているからか…ー
こんな寂しい場所で、アスの元だという陰の欠片は一度聖者リオンに殺されたのだと何かが泣いている。
馴染んだ感覚だった。
「…弟が…そうだ…弟は…今回…」
記録を探る。
繰り返しの生で、ディオスに弟と呼ばれる存在はいたが、あの子ではなかったと思う。
弟の記憶が、ディオスの頭の中で笑う。
ー兄さま…また…俺だって強いのです。兄さまに会いに帰ってきますから…そんな顔しないでください。ー
これは、どちらの記録だとディオスは思う。
兄弟で言うならば、兄たちも国から送り出した。
今も兄たちが行った国は戦いに明け暮れている。
それにはディオスは何も感情が浮かばない。
弟だったから。
守らないとならないと思っていたから。
弟は特別だったから。
「足りないのは…俺の覚悟か……」
そうかもなと竜は短くなったしっぽを軽く振った。
「足りぬものはないだろう。だが…我には王が足踏みしているように感じる。王は…弟を失うのが怖いのだろう。」
竜の言葉に嘘は感じない。
ディオスはどこかで納得し、悲しんでいた。
守れなかったのだという後悔を深いところで感じている。
自分と同じで同じではない心が泣いているのを感じる。
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そして、もういいだろうと囁く声を。
自由にしてやってくれという嘆きを感じる。
「……天に返すのが…あの子の幸せなのかもしれないな…」
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