不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

168 書類との戦い

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陛下とジークハルトが眠っているのだが、更に見舞いに来たロイスまで寝てしまった。
どうやら『俺』が本格的に眠ってしまうと、被害が拡大するらしい。
陛下とジークハルトは最初は起きていたらしいから、『俺』の眠りが浅かったのだろうという子竜の説明に頭を痛める。
僕は、最初にぐっすり寝てしまっていたので疲労は回復しているので今のところ起きていられるらしいが。

「それってどうなのさ」

子竜は、僕が書いている書類を眺めつつ首をかしげる。
陛下とジークハルトが寝てしまっているのでバルハルト公とジェン公が駆けずり回って執務をこなしてる。
僕にもある程度仕事が回ってきている状態だ。

「陛下とジークがここまで優秀だということだろうけど仕事量が怖い。」

僕も前世ではそこそこ仕事は出来たと思う。
だが、この書類の量…とため息が出る。
それにしても異常でしょうよ。

僕は再びため息をついた。
溜まっていく書類のタワー。
いやいや、漫画で見たことあるけどほんとにこんなに書類に囲まれるんだな。
ニンゲンって。
現実逃避する程の書類にめまいを起こす。
陛下とジークはどうやってこれをさばいていたんだ???と僕はため息をつきつつ書類の束に向かう。
しかしこの目の前にいる子竜は意外と優秀だった。
お仕事の基本。
まずは、重要度で整頓すること。
すぐに片付けなければならない案件、今日中くらい、明日にしてもいいもの。
自分が見ないとならないもの。
陛下が起きたら確認してもらうもの。
ノルンやマールに任せていいもの。
そんな風に分けて、ノルンやマールに任せていいものは二人が、ささっと片付けてくれるのだが、
僕は書類をまず整頓しつつ仕事をしていたのだけれど、子竜が仕分けを受け持ってくれた。
基本的にバルハルト公とジェン公が機密の書類をしてくれているので僕の所の書類は見られてもそこまで困らないものが多い。
だから、竜が仕分けを始めていた。
最初は招待状みたいな手紙をなどを外してくれていた。
そのうち、ノルンやマールに頼む手続きのような書類などを外し始めてくれだした。

『まぁ…主が力を制御できるまでは安寧をまき散らすであろうからな…王が結界を張って寝室限定にしている。』

僕が首を傾げたので子竜も首を傾げた。

『ふむ…王の番よ。王は何となく感じたようだが、そなたから説明しておいてやってくれるか?』

よくわからないが僕は頷く。

『主は、陰であるが、言い換えれば夜の欠片とも影の欠片ともいう。また、司る属性は、大地の実り、そして、夜、闇、眠り、安寧と言ったところか…今は、生まれたばかり故その力が暴走している。王の結界によりその力は王の血筋にのみ効くようになっているがな。』

王の結界の効果は、偶然だがと子竜は言う。

『王はわざと寝ているようなところがあるが、騎士王子はまきぞえだな。』

哀れ哀れと子竜は言う。

「意味が分からないのだけれど…」

子竜がすまぬと頷く。

『王が自分で説明したいらしい。だから、これ以上は言えぬが…王の番よ、妃となった主の現身の元王子。悪いことは起こっていない。安心するがよい。』

子竜はそういうと、更に仕分けの速度を速めた。

『そうそうに終わらせよう。なに、我が力を貸すし、そなたの従者もそろそろこちらに集中できるという。すぐに終わるであろう。』

僕は首をかしげる。

『騎士王子に気をつけよ。』

子竜は、囁くように言う。
彼の言う騎士王子は、ジークハルトのことだろう。

「どうして?と聞いてもいい?」

子竜は首を横に振る。

『すまぬ。理由は言えぬ。だが、気をつけよ。』

子竜は、僕の眼を見ていう。

『騎士王子に気をつけよ。騎士王子を助けたければ、気をつけよ。逃げよ…主を頼れ。王ではなく、主を頼るのだ。その時はそなたはわかるであろう。その時は王ではなく主を頼るのだ。そうでなければ…眠る騎士王子を失うであろう…王の狂気を呼ぶであろう。』

僕は首をかしげる。

『王の狂気を呼ぶものはそなたと、主と、騎士王子だ。』

子竜は静かに語る。

『王を狂気に染めてはならぬ。それはそなたしかできぬ。』

子竜は、そう言うと今はわからなくてよいというと書類に向かった。
僕は、嫌な予感を感じつつ頷く。

「ねぇ…君は…何を知っているの?」

子竜は、少し考えていたが首を傾げた。

『知っているが知らないな。』

子竜はそういうと早く確認しろと書類をつんでくる。

「うう……」

子竜は肩をすくめた。

『そなたは王に甘やかされすぎておる。』

僕は口をとがらせる。

「そんなことない。」

そんなことはなくないと分かっていても子竜にそんなことをいわれる筋合いはない。

『はぁ…これが主の親になるとは…主の教育に悪い…いや…反面教師か?』

子竜は少し考えてからにやりと笑った。

『主にも可能性はあるか?』

僕は首をかしげる。

『主は、王を好いている。今は、王はそなたを重きに置いているが…同じ顔で主のほうが優秀だとしたら…王はどうするだろうな?』

僕は目を丸くする。
否定しようとしてできなかった。
確かに…『俺』は優秀だと思う。

「あ…う…」

子竜はため息をつく。

『可能性は誰にでもあるという話だ。まぁ…王は心変わりは無い事だがな。』

子竜の言葉に僕は首を横に振った。

「そんなの…わからないよ。」

子竜は首を傾げた。

『番が番を信じてやらねば、誰が信じるというのだ?自信がないのならば…自信をつけよ。安心するがいい。我は嘘が言えぬ。主の番はいるとしたら別の者だ。』

さっさと手を動かせと子竜に叱られる。
そうだなと僕は思う。

「よし!!!陛下が目を覚ました時に驚かせるくらい片付けてしまおう!!!」




結構やけっぱちの叫びだったけれども子竜はうむと頷いた。


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