不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
207 / 233
第六章 運命の一年間

189 意外な待ち人 ディオスside

しおりを挟む
ため息をつきつつバルハルトとジェンはディオスを見ている。
ディオスもそれを感じつつ、ジェンの魔力を使って魔法陣を書き暴走状態の人間たちを地下に送る。
転移先は、アスとマールが隠れていた祭壇のある大きな通路。
あの場に、送られた人間を拘束する魔法陣を無数に設置している。
竜と妖精に説明をしておいたから拘束までは上手くするだろ。
それからはラスティ達が、竜からの伝言を受けて上手くやっていると信じたい。
というか信じている。
なので遠慮なく、地下に転移させる。
ジェンの魔力をつかっているのは、ディオスの力温存のためだ。

「まぁ…時間稼ぎなんだけれどね…」

おそらく…地下が多少でも落ち着いたら…早々に送ったトリスティが、正気に戻れば…ジークハルトは確実にこちらに来るだろう。
ラスティもついてくるかもしれない。
流石にアスは、あの状態なので足手まといでこないだろが。

ディオスは冷静に考えていた。
バルハルトとジェンもある程度したら引き上げてもらうつもりだった。

おそらく…陽の欠片に人では勝てない。

陽の欠片は、自分が選んだ物語をめちゃくちゃにして主人公として選んだリオンの魂を苦しめて散々楽しんでからこの世界に何らかの結末を作り出して…天に帰るつもりなのだろうとディオスは思う。

なる程、王の一族が御伽噺の欠片たちを子供と称したわけだとディオスは納得する。
子供なのだ。
彼らにとってはこの世界が、ままごとの道具。
おもちゃで思い入れがない陽の欠片にとっては、壊して楽しむものだった。

遊びは終わったから家に帰る。
陽の欠片は当然と考えているのだろう。

「…けどなぁ…」

遊んだ後はきちんとお片付けが出来なければならない。
陽の欠片はそれが出来ていない。
陰の欠片に任せて知らん顔の子供が浮かんでディオスはため息をつく。

自分の中にそれの兄弟の魂か何かがいるのならば、躾をしなければならないのだろう。

「アスはともかく…他の欠片とか言うのに思い入れがないんだよなぁ…」

記憶と記録は違う。
アスは記憶だ。
感情を伴う思いとなってディオスの心に、やわらかに入ってくる。
だが、欠片の記録らしい繰り返しの世界の記録は、ただの記録だった。
感情に色はつかない。
領地の報告書の方がまだ、感情が動く。
本当にどうでもいいことだった。

襲ってくる暴走している人々を、魔法陣に誘いながらディオスは思う。
陽の欠片には、人は勝てない。
ラスティとジークハルトは自分が倒されれば、力をつけるまでは戦うことを避けるだろうと。

「…頭のいい子達だからね…」

感情としては戦いたいと思うだろうが自分たちの背負っているモノを良く知っているだろう。
2人で陽の欠片が去ったあとの世界をアスを支えてうまく納めるだろうと思う。

バルハルトとジェンには、二人を支えてほしいと言えばしぶしぶとでも引くことを頷くだろうと。

「…トリスティだけしか…来ないのは不思議だな。」

教会の入り口まできたが、ディオスのまわりの人間で襲ってきたのはトリスティだけだった。
他は、面識のない人々ばかりが襲ってきた。
ディオスは、周りに見えていた暴走した人たちを地下に遅れただろうとバルハルトとジェンを見る。

「おかしいと思わないか?」

教会の扉の前に居たのは、神官たちが主だった。
中には、何人いるのだろうとディオスは首をかしげる。
バルハルトとジェンは、ため息をついた。

「まぁ…陽の欠片は戦う気はないのだろう。この世界の人間たちの小競り合いを楽しんでいると言ったところだとは思うが。」

警戒したほうがいいかと、ディオスは二人を見る。

「なぁ…」
「「断る!!」」

バルハルトとジェンは、声をそろえた。

「帰れというのだろうが断る。」

ディオスは、眉を寄せる。

「後継者がいるのはお前だけではないぞ。」

ジェンは両手を広げた。

「お前と違ってきちんと自分の子がこっちはいるんだ。お前こそかえれ。妃が一人になる。」

ディオスはため息をついた。

「今更か…」

バルハルトにディオスは苦笑する。

「玉砕覚悟になるが…」

ディオスの言葉に二人は知っていると答える。
頷きあい、教会の扉に手をかけた。

勢いをつけバンと音を立てて扉を開ける。
ジェンが炎の魔法を発動させようとして、祭壇を見つめ目を丸くする。

「え…?ラスティ??いや…違う…あの子は…」

祭壇に金髪の青年がぼんやりと座っている。
不思議そうに三人を見ると笑った。

彼の足元には神官たちが倒れていた。

そう、教会の中には人々が倒れていた。

「っ…これは…どういう…」

闘いの後の様だった。
ディオスが眉を寄せて青年を見る。
時間を考えるとオカシイ。
彼がここに居るはずがない。

「……アス?……」

ディオスに呼ばれてこてりと首を横にかしげる。

「へーか…おそい…みんな…ちかしつだよ?」

人差し指を唇に当ててアスは、ないしょと笑う。

「ラスティがおこってるから、アスはちちうえによわいからね?」

そう言ってアスはにっこりと笑ったのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...