お嬢様と魔法少女と執事

星分芋

文字の大きさ
53 / 164

第二十一話①『疑惑と信頼』

しおりを挟む


 形南あれなの復讐も無事に終了し、平凡な日常を送る日々がまたやってくる。

 竜脳寺りゅうのうじのあの一件はあの場にいた多数の生徒のネット投稿から世間に流出していた。

 嶺歌れかの魔法である程度は沈静化させているものの、ネットは不特定多数の者が投稿できてしまう為全てを落ち着かせるという事は出来てはいなかった。

 だがしかし形南の牽制があったおかげか、ネット上でこそ炎上してはいたものの彼自身の学園生活はそう酷いものではないようだ。

 彼を遠ざける生徒は多くいても、竜脳寺は本当に反省しているのか日々の生活を謙虚にそして懸命に送っている様子だった。

 野薔薇内のばらうちも形南との一件で懲りたのか大人しくなったという。

 あの後高円寺院こうえんじのいん家へ両親と共に訪れた彼女は再三の土下座を形南の前で行い、それ以降は二度と形南に顔を見せない事を誓ったらしい。

 竜脳寺のように誓約書を書いていないのは形南の慈悲だと聞いている。

 そして懸念していた高円寺院家が復讐を行なったという噂は少なからず出回ってしまっていた。

 だがそれを形南は後悔していないのだと改めて嶺歌に告げており、高円寺院家に仕える優秀な従者達の立ち回りで事はそう大きくなっていなかった。

 当主である形南の父親も、形南の今回の件に対してむしろよくやったと喜んでくれているのだとか。

 形南の年の離れた兄弟たちも今回の件を聞いて安心してくれていたようだ。

 話を聞くと、どうやら高円寺院家の名に傷が付かないようにと神経を尖らせていたのは形南だけのようであり、彼女の受けた仕打ちを知っていた両親や兄弟たちはずっと竜脳寺や野薔薇内に報いを与えたいとそう強く願っていたようだ。

 形南がそれは申し訳ないと泣き出した姿を見て、家族全員、形南の意向を汲むべく復讐を諦めたのだと、嶺歌はあの後兜悟朗から聞いていた。

 そのため高円寺院家の誇りの問題に関しては何も心配はいらないと、形南の父親が声を大きくして告げていたらしい。

 その話を兜悟朗伝手に聞いた嶺歌は心底安堵し、そして形南が如何に家族に愛されているのかを同時に知って心が温かくなった。

 高円寺院家は高貴なだけでなく中身全てまでもが素敵な家族だと、微笑ましい思いになる。

(今日も頑張るかー)

 形南も二人への報復を終え、一年間の鬱憤が綺麗に消えたと喜んでいた。嶺歌も友人の辛い過去を乗り越える手伝いが出来、それが喜ばしかった。

 嶺歌はいつものように伸びをして起き上がると魔法少女の姿へと変身し、日課の魔法少女活動を行いに外へ出る。



「今日も頑張ったっと」

 魔法少女活動を終え、寝癖のままの人間の姿に戻ると嶺歌は机に置いてあった未開封のペットボトルを開けながらそれを飲み干し、疲れを癒す。

 そしていつものように準備をすると学校へ足を進めるのであった。



和泉いずみ好きだ! 俺と付き合ってくれ!!」

「先輩すみません。気持ちに応えられません」

 昼休みになると裏庭で一学年年上の先輩に告白をされた。しかし全く気持ちが揺れ動かない嶺歌れかは深く頭を下げて断りの声を口にする。

「そうか……残念だ」

 先輩はそう口にすると悲しそうな表情でその場を去っていく。罪悪感はあれど、時間が解決するのを待つしかない。嶺歌にできるのは彼の幸せを心の中で願うことくらいだ。

(さあ行くか)

 先輩が完全に裏庭を出ていくのを確認すると嶺歌も教室へ戻ろうと足を動かす。だが曲がり角を曲がるとそこで『ガサッ』という音と共に見知った顔の人物が目の前に現れた。

「あ……ご、ごめん」

 それは平尾だった。彼はいたたまれなさそうな顔をしながら嶺歌の方をチラチラ見やるともう一度ごめんと謝罪してきた。わざとではないだろうに構わないのだが、何だかデジャヴである。

(前は兜悟朗とうごろうさんだったな)

 そんな事を思いながら平尾に目を向け別に大丈夫だと言葉を返すと、彼は後頭部を掻きながら何かを口に出そうとしている。

 嶺歌は急かすのも何だと思い、彼が声を発するのを待つ事にした。

「あ、あのさ……見るつもりはなくて、ごめん」

「え? いや今謝ってたしもういいよ?」

 なんと平尾は三度目の謝罪をしてきた。謝るのが癖なのだろうか。

 嶺歌は不思議に思いながらそう言葉を返すと彼は慌てた様子で「あ、ありがと」と口にした。

「何か話があるの?」

 形南の事で何かあるのかもしれない。そう思った嶺歌は単刀直入に聞いてみた。

 すると平尾は図星だったのか顔を上げると「う、うん」と声を返す。

「あ、あのさ……あれちゃんも告白とか、されるのかな」

「ん?」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ユニークアイテムな女子(絶対的替えの効かない、唯一無二の彼女)「ゆにかの」

masuta
キャラ文芸
恋と友情、そして命を懸けた決断。青春は止まらない。 世界を股にかける財閥の御曹司・嘉位は、U-15日本代表として世界一を経験した天才投手。 しかし、ある理由で野球を捨て、超エリート進学校・和井田学園へ進学する。 入学式の日、偶然ぶつかった少女・香織。 彼女は、嘉位にとって“絶対的替えの効かない、唯一無二の存在”だった。 香織は、八重の親友。 そして八重は、時に未来を暗示する不思議な夢を見る少女。 その夢が、やがて物語を大きく動かしていく。 ゴールデンウィーク、八重の見た夢は、未曾有の大災害を告げていた。 偶然か、必然か……命を守るために立ち上がる。 「誰も欠けさせない」という信念を胸に走り続ける。 やがて災害を未然に防ぎ、再びグラウンドへと導く。 その中で、恋もまた静かに進んでいく。 「ずっと、君が好きだった」告白の言葉が、災害と勝負を越えた心を震わせる。 それぞれの想いが交錯し、群像劇は加速する。 一人ひとりが主人公。人生に脇役はいない。 現代ファンタジーとリアルが交錯する青春群像劇。 本作は小説家になろう、オリジナル作品のフルリメイク版です。

処理中です...