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第二十九話①『放課後』
しおりを挟むそれからテスト期間がすぐにやってきて、嶺歌はしばらく勉強漬けの日々を送っていた。
気晴らしに魔法少女活動を行いながらも、それを終えると再び試験対策に時間を費やす。
そんな日々をようやく終え、テスト返却の日まであと一日となったところで早速形南から連絡が入ってきていた。
『嶺歌、試験お疲れ様ですの! 早速なのですが、明日の放課後平尾様と三人でお出掛けなさらない?』
「平尾君と三人で?」
嶺歌は形南から入ったレインの内容を読み上げながら頭に疑問符を浮かべる。
二人で遊んできた方がいいのではないだろうかと思いながらも、こうして声を掛けてくれる事は嬉しく、断る必要もないかと思い直しすぐに行くという内容のメッセージを送信する。
(そういえばまだ詳細聞いてないな)
形南が平尾に呼び出され彼の家へ直行した一件以降、テスト勉強に励んでいた嶺歌は彼女にあの時の事を詳しく聞き損ねていた。
あれから二週間ほど時間が経っているがあの時の詳細をきちんと聞いておきたい。
形南と平尾の二人はまだ恋人関係までには発展していないが、少しずつ進展している気がする。
客観的に見た嶺歌の主観であるが、二人が両思いである事を知っている嶺歌としてはどのタイミングで恋仲になるのかを考えるのが楽しみになっていた。
テスト返却が無事に終わり、放課後になると平尾が教室の外で嶺歌を待っていた。
お疲れと言いながら直ぐに下駄箱まで足を運び、校門の外で待っているであろう形南の元へ向かう。途中平尾にはプレゼントの件を尋ねていた。
「いや、別に特にこれといった事は……ただ、喜んでくれたあれちゃんがすごく、か、可愛かった」
「おっ、良いじゃん」
そんなやり取りをしているとあっという間に昇降口を抜けて校門の近くまで辿り着く。
途中ですれ違う友人らに声を掛けられまたねと言葉を返していると横にいた平尾はボソッと「凄いね」と声を漏らしてきた。
「? 何が?」
嶺歌は言葉の意味が分からず率直に尋ねると平尾は急にオドオドした様子で「い、いや……」と口をつぐむ。
しかし意を決したのか、そのまま言葉の補足を口に出した。
「和泉さんて、顔広いよね」
「まあ狭くはないけど」
純粋に思った事を述べると平尾は「そ、そう」と自身の頬を掻きながら不思議な事を口にする。
嶺歌自身も自分の友人は多く、恵まれている方だと思うが、それは性格ゆえな事も何となく理解していた。
コミュニケーションに関しては嶺歌の前に出るものはいない。そんな自分に誇りも持っている。
対して平尾はコミュニケーション能力が低い。それは初めて彼を認識した時から感じていたところだが、彼も彼でそれに思うところがあるのだろうか。
(あれなはそういう所も好きだと思うけど)
形南が平尾を好きな理由は、形南本人が嶺歌の前でよく口にしているため印象に残っている。
一目惚れから始まった形南の恋心は、平尾の弱々しくも守ってあげたくなるようなそんな姿に胸が躍るのだそうだ。
嶺歌には彼に惚れるポイントがどことなく分からないのだが、形南の好みと嶺歌の好みが違うのは当然の事だ。そのため形南のタイプの男性像をとやかく言う資格は嶺歌にない。
それに本人が心の底から好いているのだと最近は形南の言葉だけでなく態度からも理解できている。
平尾を前にした形南はいつも誰に対する姿勢よりもより一層女の子らしくなり、頬を常に上気させ、本当に可愛らしい姿を見せるのだ。微笑ましく思えるほどに形南は分かりやすかった。
加えて最近は平尾へ向ける嶺歌の感情が変化しているのも事実だ。
彼が形南を本気で好いており、それが行動力に出ている事を嶺歌もきちんと知っている。
平尾は自分の為なら無理でも、形南の為であればきちんと恐怖の対象にも立ち向かえる勇気を持っている。勇敢さと言うべきだろうか。
そんな平尾を知ってからは嶺歌自身も、形南と平尾の関係を心から応援していた。平尾の良さは分からずとも、形南を思う彼の気持ちだけは信頼できているからだ。
「あ、あれないるね」
嶺歌は校門の少し離れた場所で黒いリムジンを背に立っている形南と兜悟朗の姿を目にする。
兜悟朗の姿を捉えた瞬間に嶺歌は一気に心臓の音が煩くなるのを感じていたが、変に思われないよう小さく深呼吸をした。
形南は嶺歌と平尾の姿に気が付くと顔を綻ばせ嬉しそうにこちらに上品に手を振ってくる。
そしてそのまま形南たちの元へ辿り着くと彼女は開口一番に「試験お疲れ様ですの」と声を掛けてきた。
「あれなもお疲れ。今回全く同じスケジュールだったね」
「そうなのですの! 嶺歌の御校と同じ試験日程でとても助かりましたわ」
そう言ってニコニコと満面の笑みを向ける形南は平尾の方へ顔を向けると彼に対して言葉を発する。
「平尾様、本日もお会いできて嬉しいですの」
next→第二十九話②(7月21日更新予定です)
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