お嬢様と魔法少女と執事

星分芋

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第四十七話①『放課後のデート』

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嶺歌れか、好きな人いるってまじ!?」

 放課後になり、クラスの大半の生徒が下校していた所で嶺歌は詩茶しずに質問をされていた。

 平尾との噂はあの一件から大分落ち着いてはいたが、また新たな噂が出回り始めていたのだ。まあその噂自体は、嘘でも何でもないのだが。

「うん、まじ」

 そう、嶺歌に好きな人がいるという噂である。

 驚いた様子でそれを問い掛けてくる詩茶に嶺歌はその通りだと素直に肯定の声を出す。自分で言った手前、はぐらかす理由はなかった。

 それに兜悟朗とうごろうを知っている者はこの学校に平尾しかいないのだ。知られたところで何ともない。

「マジか!!! ねえどのクラスっ!? 応援するよー!!!」

 そう言ってくれる詩茶の気持ちは素直に嬉しい。彼女はずっと嶺歌に彼氏を作らないのかと催促をしてきていた。

 詩茶が冷やかしではなく良かれと思ってそう提案してくれていたのを嶺歌はよく知っている。

 嶺歌は詩茶にありがとねと笑みを向けながら「でも学校の人じゃないんだ」と言葉を付け加えた。

 すると詩茶は目を見開いて驚いた表情を見せ始める。

「マッジで!? 他校か~どこで出会ったのさ!!?」

 詩茶は恋バナスイッチが入ったのか楽しそうに嶺歌の肩を叩いてくる。友人のこのような反応は新鮮で楽しいものだが、しかし詩茶は学生という括りを信じて疑わずにいるようだ。

「学生じゃなくて、大人の人」

 興奮して妄想を始めていた詩茶にそう再三の声を上げると彼女はピタリと動きを止めて更に目を見開いた。そうして嶺歌の両肩を物凄い勢いで掴んでくる。

「まままマジのマジ!?!?!? 嶺歌大人がタイプだったの!?」

 今日一番の声を張り上げた詩茶は息を切らしながら「詳しく教えてー! 嶺歌ぁ!!」と詳細を求めてくる。

 今日は特に用事もなかったため、そのまま嶺歌は詩茶に最近あった一連の出来事を説明する事にした。

 形南と平尾以外の友達に話すのが初めてのこの感情は、詩茶に話した事で更に兜悟朗への想いが増したような気がする。

 嶺歌が兜悟朗との事を思い出す度に顔を赤らめて話すのを詩茶は終始楽しそうに見聞きしてくれていた。



 そして兜悟朗とうごろう嶺歌れかを誘ってくれた日がやって来た。

 嶺歌は朝からどこか落ち着かず、ソワソワしながら放課後になるのを待ち望んでいる。

 嶺歌の噂は昨日の今日で五月蝿いほどに広まっているものの、嶺歌にとってはどうでもよかった。平尾との噂に比べたら何十倍もマシだろう。

 友達でもない他人に好きな人がいる事の何がそんなに面白くて噂に出すのか理解ができない。

 その為嶺歌にとっては何ら支障なく、クラスメイトから質問をされても特に不満はなかった。

 ただ、詩茶しずのように仲の良い友人に兜悟朗の話が出来るのは嬉しかった。

 今までは話そうというタイミングがなかった為、形南あれなと平尾以外は誰にも話せていなかったのだ。

 そう思うと、今回噂が広がったのはいいきっかけなのかもしれない。

 そう前向きに考えられる自分に満足しながら嶺歌は今日一日の学校生活を過ごしていた。



 そして放課後になると一目散に昇降口へ向かう。

 途中途中で嶺歌れかに親しげに声を掛けてくる知り合いに言葉を返し、変にヤジを飛ばしてくる外野を無視しながら迅速に足を動かしていた。

「嶺歌さん、お疲れ様で御座います」

 兜悟朗とうごろうは校門から少し離れた先に車を停めてこちらに挨拶をしてくれた。

 今朝形南あれなに聞いた話だが、今日彼は半休を取得してくれたようで今回の兜悟朗は一度嶺歌も乗った事のある私用車を出してきていた。

 衣服は時間の関係か執事服のままであったが、それが様になっている兜悟朗は今日もとんでもない格好良さを放っている。

 嶺歌は兜悟朗の姿を視界にとらえ、自身の胸の鼓動が速くなるのを実感した。

 彼と会わなかった日もそう長くないと言うのに、毎日のように会いたいと思っている自分がいる。

「兜悟朗さん、今日は誘って下さってありがとうございます」

 そう言って小さくお辞儀をすると何やら外野が騒がしい。

 そこで嶺歌は思い出す。今、自分は噂の的になっているのだと。

(そうだった)

「嶺歌さん、それでは参りましょうか」

 すると途端に兜悟朗は嶺歌にそう告げて自身の車の置かれた方向を手の平で指してくる。

 兜悟朗は何かを察してくれたようだ。

 嶺歌は彼の配慮や洞察力に感謝と感心を示しながら小さく頷き、二人でそのまま車の方へと足を運ぶ。

 車の中に乗り込むと、彼は柔らかな笑みを向けながらそれでは参りますねと告げて車を動かす。

 嶺歌は終始、彼の表情に気持ちを高まらせながらしばしのドライブを楽しむ。今日はなんて素敵な日なのだろう。

 そう思えるほどに兜悟朗との放課後のドライブは嶺歌の心を満たし尽くし、時間の経過もあっという間に過ぎていくのであった。



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