イクメン召喚士の手記

24『青白く呼応』の書

絹の簡易ドレスをサラッと揺らし"女帝陛下"が歩み寄る。

「わたくしの剣が気になりますか？」
「不躾で申し訳ない。昔懐かしい剣と似ていたものでな」
「護身用です。この剣には、魔物が忌み嫌う効果と魔力に長けた者を呼び寄せる効果があります。
貴方は、何者？」
「一介の"召喚士"だ。"勇者候補"の育成をしている」

しがみ付くように胸に顔を埋される未来に、彼女は涼やかに笑む。

「わたくしの『剣』も世界が呼んだ"転生物"です。共に、導きの終着が待ち遠しいですね…」

踵を返し、背中を向ける瞬間の微笑。

「耳朶に黒曜石ですか。"召喚士"であり"奴隷"のピアス。"転生者"を使役する側であり何方かの所有物。…貴方は不思議な人」

彼女の腰に下げた『剣』が青白く光った。
私に魅せるかのように懐旧の紋様を空気中に描き記す。
"女帝陛下"は、それには気付かない。

『呼応』

私の胸に顔を埋させた未来の瞳にも、薄っすらと、青白く光が宿っていた。
同様の紋様が描かれていたのだが…
私もまた、それに気付くことはなかった。

＊　＊　＊

「ん、んー！」

戦闘院から離れて外の空気に当たる。
フォローアップ白糖乳を未来に飲ませながら、ベンチに腰掛けて一息吐いた。

「機嫌は回復したか？慣れない場所は疲れるものだな」

白糖乳をゴクゴクと飲みながら、器用にウトウト眠そうにする君に私は癒される。

魔王であった前世の記憶。切っ掛けに触れると本を捲るように回想を捲ってしまう。
脳裏に残像を置く金髪の"君"よ。
慕情で物悲しくなるのは話せないからか…？

勇者レベル: 1
スキル「身の守り」:＋10