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第70話・続!鳥アパート201号室1

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さてと、レイナに全部教えよう。

「レイナ、この家の設備を教えたいと思う。
そして、ルリさんとアシュレイ様にはレイナから教えてあげてほしい。
自然に」

「はぁ、やっぱりそういうことね。
できる限りやってみるわ」

さすがレイナ、話が早くて助かる。

「まず、水浴び場とお手洗いからいこう」

風呂場とトイレがセットになったユニットバスへレイナを連れていく。

「ええ~っとまず水浴び場だが、水じゃないものがでるかもしれん」

・・・

「なにがでるのよ」

「そ、そうだよな、そうなるよな。」

とりあえず実演するためにシャワーヘッドの湯がでるハンドルを捻る。
ジャー。
シャワーから湯がでて湯気が立ちだす。

「な、なにこれ?」

「湯がでてるんだ、触ってみてくれ」

「す、すごい。
こんなの見たことがないわ」

「うん、これが水浴び場の代わりになるのだがシャワーという」

レイナは信じられないものを見たという顔で眺めている。
まあ、確かに水浴び場しかない時代に、湯がでるシャワーがでたら死ぬほど驚くだろう。
俺も驚く。

「シャワーね、分かったわ。
そのハンドルを捻れば止まるのね」

「ああ。
で体を洗うものは~、あったあった。
これがボディーソープっていうもので、ノズルを押すと液体が出るんだ。
その液体をタオルに出して泡立てて、体を擦ると汚れがとれる」

見渡せば、シャンプーも置かれている。
女神は、本当に現実の部屋を実現したってことか。
ご丁寧にタオルとバスタオルまで常設されている。

「す、すごいのね。
目が回るようだわ」

そうなるよな。
だが俺がペラペラと家の設備について、ルリさんやアシュレイ様に説明をした場合、レイナみたいに疑問を持ち女神が書き換えた仕様との混乱が生じるかもしれない。
ここはレイナに詰め込む。

「で、シャンプーのノゾルを押し込むと液体がでる。
これは泡立てたあと髪につけて泡立てて洗うと、OK?」

「う、うん。
お、おーけー」

「で、その場所が浴室っていうんだけど、その浴室が使用した後に泡とかで汚れるからシャワーから出る湯で洗い流して出てくる」

レイナがうなずく。

「そして、一番重要なポイント。
シャワーを利用したり体を洗ったり、髪を洗ったら水分が飛び散ってお手洗いや洗面も汚れてしまうだろ?
だから、ここにあるカーテンを閉める。
その時にカーテンを浴槽に中に入れた状態で使用するんだ。
そうすると汚れないだろ?」

「た、確かに。
ゼロ、あなたこんな画期的なものを扱えるなんて何者なの?」

そうなるよな。

「まあ、また話すけど説明はまだ終わってない」

あとお手洗いの使い方と換気扇は使い終わった後に、必ず使用することを教えた。

「覚えることが多すぎてパニックよ。
ゼロ、どこでそんな知識を手にいれたのよ。
さすがに聞きたいことが多すぎるわ」

「だよな。まあまだ終わってないんだ」

レイナはまだ~?っていう顔をしながら説明を受ける。
冷蔵庫とかガスコンロとか電気とかカーテンとか、家の鍵とか色々教える。

「ふー、こんなとこかな。
レイナ、分からないところはないか?」

「分からないところが、分からないわ」

仕事を習う新人のセリフだな。

「まあ、その都度こそっと聞いてくれ」

ドンドン。
誰かきたようだ。
俺が出る。

「はーい」

「ゼロさんですね、冒険者協会の者です。
もしよければ部屋の使い方をお教えします。
今までの部屋と使い勝手がだいぶ違うと思いますので」

女神は冒険者協会の人が現実のアパートを管理していることにして、他の人は現実のアパートの存在自体を知らないっていう設定に世界を書き換えたらしい。
スケールが大きいのか小さいのか、微妙なことをしてくれる。

「いえ、使い方は知っていますので大丈夫です」

「え?そうですか?
分からないことがあれば、冒険者協会にお尋ねください」

冒険者協会の人はうそだろ?みたいな顔をしながら帰っていく。

「ありがとうございました」

部屋へ戻っていくと、レイナが一人でブツブツ言っている。
多分、復習しているのだろう。

「レイナ、なにか分からないことがあったか?」

「あっ、ゼ」

レイナが振り返る時に足がもつれて後ろへ倒れそうなのになる。
自然に体が勝手に動いて、レイナの頭を抱く形で一緒に倒れこむ。

ドン!

「ふー、危なかった」

目の前に、顔が赤くなった潤んだ瞳のレイナが見上げている。

・・・

レイナが、目を閉じる。

・・・

な、なぜ。
なにがどうなった!
レイナとここまで進展していたとは思えないし、この状況もただの事故だ。
いつもならお互いにギクシャクして、事故だったねで笑いあうところなのに。

ドンドン!

あ、みんな帰ってきた。
助かった~、レイナとキスなんてしたら共同生活上、きまずくなるかもしれないしな。

チュ。

俺は目を見開く。
赤らめたレイナの顔が離れていく。
唇に柔らかな感触を残しながら。

ドンドン!

「と、とりあえず、出てくる」

「うん」

動揺して、なにも考えられないなか家の鍵を開けてドアを開ける。

「もうゼロ!遅いですわ!
家の鍵を開けておいてくれてもいいのではなくて?」

「ゼロさ・・・ん。
なにか顔色がおかしくないですか?」
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