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第89話・一閃の模擬戦代役2

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「ゼロは言う事が、一々おもしろいやつだ。
分かった、俺が指揮をとるからな。
飛燕も本気ではこないだろうし、1対1を作り出せるはずだ」

俺はオッサンに向かって頷く。

「支援魔法使いさんは、ヘイストを使えます?」

根暗そうな支援魔法使いさんに聞いてみる。
オッサンが呼び名に笑っている。

「し、支援魔法使いさん・・・はい、使えますが」

「俺も使えるんで、どっちのほうを使うか検証しましょう。
ヘイスト!」

とりあえず支援魔法使いさんにかける。
ヘイストをかけられた支援魔法使いさんは数歩走って、崩れ落ちる。

「ま、負けた・・・」

オッサン大爆笑。
オッサンはもう少し女性にやさしくしてやれって!
俺は全員にヘイストをかける。

「こ、これは早いな。
fortuneの戦闘力を支えていたのはゼロだったか」

「ゼロさん!
どうすればここまでのヘイストが手にはいるんですか!」

オッサンのようにみんなが驚く、支援魔法使いさんは俺に詰め寄ってくる。

「秘密です」

またも支援魔法使いさんは崩れ落ちる。

「さ、そろそろ支援をちゃんとしてくれ。
作戦はさっき通達したとおり、飛燕とゼロの1対1を作る。
そのために、飛燕以外は倒しにいくぞ」

全員が頷く。
俺は魔法を準備し続けている。
ブラストカノンが最強魔法だが、飛燕には当たらないか防がれるかされると思っている。
ならば信頼のダブルキラーウインドをディレイスペルに4つ待機させておく。

「よし!戦闘開始だ!
いくぞー!」

オッサンの掛け声と共に、5人は相手ギルドへ突っ込んでいく。
前衛はテンプルナイト、剣士。
後衛は支援魔法使い、プリースト、俺という構成だ。

ウインドアイで相手を見る。
前衛に飛燕と剣士二人。
後衛に魔法使い1人とプリースト。

相手の剣士2人は装備的にそこまで強くなさそうだ。
この模擬戦は、飛燕とオッサンが流れを作りながら後のメンバーが戦うことで、対人戦の訓練を行うことがポイントなんだろう。

だが、一つだけ気になることがある。
こちらのチームは火力が不足しているように思う。
飛燕の意図だとしたら、俺に暴れてみろってことだろう。

「ファイヤーエンチャント、土の鎧!」

支援魔法使いの魔法によってテンプルナイトと剣士の剣に炎が纏い、土の鎧が出現し二人に装備した格好になった。土の鎧は対象者の体へ消えていく。
火を付与した剣になったことと、防御力アップの魔法だろう。

「さあ、飛燕いくぜ!」

オッサンがヘイストの力で、高速で飛燕へ詰め寄る。

「これがゼロのヘイスト、さすがだ!」

飛燕はヘイストの移動の早さに驚きながら、オッサンと高速で剣を打ち合う。

飛燕とオッサンの打ち合いに感化されたか、ヘイストの力に舞い上がってしまったのか、
男の子剣士も相手剣士2名に突っ込んでいく。

そ、それは無謀だから!
相手火力勢は剣士2名に、魔法使い1名っていう構成だよ!
味方のトリプルパンチプリーストが魔法を発動しようとしている。
男の子剣士を守るんだろうけど、この状況を打開はできない。

爆風の杖に風が纏う。
「ダブルウインドブレイド!」

「な、なんだぁ!!!」

相手剣士はこんな魔法見たことねえぞ!という驚愕の顔を浮かべる。
大型の爆風の刃が地面を削りながら、相手剣士1人に襲い掛かる。
相手チームもいきなり出現した大型の風魔法に呆然としていた。
飛燕がやれやれといった顔をしていた。
まあ、敵が魔法を放ってきた時に呆然としていたらやれやれと言いたくなるよな。

剣士1人が大型の爆風の刃に飲み込まれ消え去る。

「な、なにがおこったんだ」

「ゼロってあのヒモマスターだろ・・・」

「あ、あいつは雑魚じゃなかったのかい?」

相手チームが恐怖した顔でぶつぶつ言っている。
俺の悪口だろうな~、お仕置きが必要だよな~。

「ダブルサドゥンウインド!」

うわー!という叫びが聞こえる。
爆風の突風が剣士と魔法使いに吹き荒れる。
2人は爆風に耐えることしかできなくなっている。

「ホーリーシールド!」

相手チームのプリーストが魔法使いを守る盾を用意する。
じゃあ、先頭に立っている剣士はもらいますよっと。

「ダブルウインドランス!」

爆風の槍はすごいスピードで剣士を貫き消し去る。

「か、風魔法ってこんなに強いのか?」

「ヒモなのに・・・」

待て待て!
ヒモなのに・・・はおかしいから!
ヒモでないことは、この状況を見ればあきらかでしょ!
相手の魔法使いとプリーストは状況を見て呆然とする。

俺は戦わないでおこうと思ったのに、男の子剣士を守りたくて思わず魔法放っちゃったよ!
オッサンがこっちに振り向いて親指を立ててニッコリする。
してやられたか・・・
こうなったら、なんとしてでも飛燕と戦わせてもらうぜ。

男の子剣士も俺をみて呆然としていたが、
僕もやるぞ!と気合をいれて、走って行く。
そこに支援魔法使いとプリーストもついていく。

よく考えればあの男の子がCランクって本当か?見た目が男の子で中身はオッサンってこと?
この世界はアヤトという不思議な生き物がいるからありうる。
相手魔法使いはプリーストに回復を受けながら、男の子剣士に向けて魔法を放つ。
だが、男の子剣士はヘイストがかかっているため高速で魔法を避けて接近する。
魔法使いは驚愕している。
支援魔法使いさんは俺のヘイストよりもしょぼかったから、単発魔法も当たってたんだろうけど、俺のヘイストは一味違うからな。

「ドラゴンスクリュー!」

「ぐはッ!」

男の子剣士は剣と一緒に回転してドリルのようになったと思ったらドラゴンのような演出が出現し、ドラゴンは魔法使いを貫く。
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