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第90話・一閃の模擬戦決着1

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相手のプリーストは降参しますと短杖を捨てる。
男の子剣士は元気よく、プリーストに向かってスキルを放つ。

「ソードラッシュ!」
「ソードラッシュ!」
「ソードラッシュ!」

相手のプリーストは男の子剣士に、連続で斬られまくって倒れる。
この世界は降参した相手には、過剰にとどめを刺すのが礼儀なのか?
男の子剣士は、感極まって万歳をしようとしている。
ふー、とりあえず計画通り飛燕以外は倒しおわ・・・った。

「瞬動、一閃」

男の子剣士はニコニコした顔で万歳をしようとする寸前で、真横に現れた飛燕に斬られて倒れた。

「瞬動、一閃」

飛燕は男の子剣士を斬った後に、一瞬で支援魔法使いに接近して斬る。

「一閃」

そして、トリプルパンチプリーストも斬られた。
誰一人として悲鳴を上げることなく静かに斬られたしまった。

おいおい、一瞬で3人を斬るんじゃねえよ!
男の子剣士なんて喜ぼうとしたところを斬られたんだぞ、自信なくなるだろ!!
あまりの惨さにゼロの顔が引きつる。

「お望み通りの展開になったかな?」

「そ、そうですね」

俺の望みは飛燕をみんなで倒そう、だったけどな!

「僕の相棒だけは、決着を見ていてもいいだろう?」

僕の相棒とは、そこにいるテンプルナイトのオッサンだろう。

「問題ありません」

「魔法の準備は必要かい?」

「いえ、瞬動を3回も使用した後に時間を与えないことが重要です。
今こそ好機でしょう」

想定外の返答に飛燕が笑う。

「さすがゼロ、君は想像以上だ。
是非、僕のギルドに欲しいな」

「俺のギルドに飛燕が欲しいですよ、ということでこの話は決裂ですね」

「そうらしい」

さて、お互いに冗談を言い合ったところで決着をつけよう。
正直なところ、飛燕のスキルは瞬動と一閃だけしか見ていない。
無理ゲーじゃないか?あと何回瞬動がうてる?
一閃をもらえば俺は死ぬだろ。

お互いに目と動きだけで牽制しあう、スタミナポーションは絶対に飲ませないつもりだが、隙を見せた瞬間に瞬動で接近されて斬られるのも避けなければならない。
こちらはディレイスペルにダブルキラーウインド4発分ある。
瞬動は結構な距離を移動できるため、飛燕周辺をまとめて斬っても避けられるかもしれない。タイミングを見計らって発動しなくては。

どれくらい牽制しあっているのだろう。
まだ数分だろうけど、長時間対峙している気がする。
俺が魔法を放つという動作をした瞬間に斬られる気がするから、魔法を放つという動作をしないで発動してみるか。
なにも言わないで風の剣を発動し、杖を持ってないほうの手で爆風の剣を握る。

「へー、それは風でできた剣かい?」

「俺の隠し球ですね」

飛燕はイケメンスマイルで答える。

「牽制にも飽きてきたところだし、こちらから攻めてあげよう」

いよいよ来るか。

「お願いします」

飛燕は一瞬ぼやけたようになる、瞬動が早すぎるため残像が残るんだろう。
だが、ぼやける前のかすかな動きを俺は見ていた。
飛燕はこの状況でフェイクは仕掛けてこないと信じている、ならばここしかない!
風の剣を地面へ叩きつける。

「ダブルウインドシールド!」

――ッ!!

風の剣は地面に当たると剣を軸に強烈な爆風の渦が発生する。
この爆風の渦はキングレッドタートルをも屠った一撃だ。

飛燕は瞬動と一閃に絶大な自信を持っているのは目に見えていた、そして瞬動は場所指定型移動スキルとみた!
俺の読み通り、飛燕は一瞬で俺の前に現れると爆風の渦に巻き込まれる。
俺自身もすぐにダブルウインドシールドで守りつつ後ろに後退したが、爆風の渦はシールドを破壊し俺も爆風の渦に触れて吹き飛ぶ。

文字通り、地面を跳ねながら転がる。

「ガハッ・・・」

転がり終わると血を吐く。
深刻なダメージをもらいフラフラするが、飛燕にHPポーションを飲ますわけにはいかないめ、死力を尽くして立ち上がる。

飛燕はまともに爆風の渦に巻き込まれたように見えたが、瞬動で脱出したようだ。
だが、半身が重症という言葉がふさわしいくらいにボロボロになっている。

「ゼロ、やるね・・・
これほどの、隠し球を持つ・・なんて、みんなに・・・教えてあげたいね」

「こ、こんなの・・・特定条件下でしか・・使えないですよ」

お互いに満身創痍のため喋る事さえ辛い。
飛燕に瞬動を使わせないほどのダメージを与えられていれば、勝てそうだがどうだろう・・・
ここでも牽制し合う。
二人ともボロボロでさっきのような殺気立った雰囲気はないが、お互いに隙を見せればやられると思っている。

息だけは整えた。
さっきは飛燕が仕掛けてくれたんだから、俺が仕掛ける番だ!
俺は魔法を放つ。

「ディレイスペル解放!キラーウインドeight!」

爆風の斬撃が展開される。

「瞬動!一閃!!!」

俺は口元に笑みがこぼれる、予測していた展開通りだからだ。
飛燕なら、どれだけボロボロになろうと瞬動を使ってくると。
そして、俺が魔法を放てば確実に決めに来る。
例え、俺が自分の周囲を攻撃すると思っていても、相打ち覚悟で攻撃してくるだろうと。
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