ふしだらな聖女と追放されて殺されたけどあたしのかわいい王子の為にもう一度やり直します

あさいゆめ

文字の大きさ
25 / 71

25

しおりを挟む
「サラ、駄目だよ。」
 サミュエル兄様にはあたしが何を考えているかわかってしまったみたい。
「治癒師に相談はしてみたの?」
「ええ、もちろん。
 だけど駄目だったの。
 とても難しいらしくて強い魔力を持っている治癒師じゃないと治せないっていわれたわ。
 私達にはそんなお金無いし。」
 バネッサの家は火事で両親も財産もすべて失ってしまって、今は叔父夫婦の家に身を寄せているという。
「バネッサ、すまないがそろそろサラを休ませないと。」
 兄様がバネッサを遠ざけようとしている。
「あっ、ごめんなさい。話こんじゃったわね。」
「待って、バネッサ!」
「サラっ!」
 珍しく兄様が声を荒げた。
 バネッサも驚いてびっくりしている。
 ベッドから起き上がり、バネッサの手を取る。
「ここに座って。」
 椅子に座らせて背中に回る。
「サラ、やめてくれ。倒れたばかりじゃないか。」
 泣きそうな兄様には悪いけど、
「だって、目が悪いなんて他人事じゃないもの。」
 母様の苦労はあたしが一番よく知ってるから。
 あざとく上目遣いで、
「ねっ、お兄ちゃん。」
「ま、まったく…言っても聞いてくれないようだね。
 仕方がない。
 その代わり、明日も1日中ベッドの上だぞ。」
 やっぱりね。
 兄様ったらお兄ちゃんって呼ばれるのに弱いんだ。
「はーい。」
 バネッサはなんの事か解らないけれど二人の言い争いが自分の事が原因という事だけは解るので困っている。
 メガネを外して両手で目隠しをする。
「ねえバネッサ、今から起こる事は秘密にしてほしいの。」
「な、何?」
 バネッサの目はとても小さな傷がたくさんあるみたいだ。
 だけど一度に治そうとすると治癒の光がまぶしすぎて目の奥がおかしくなってしまいそう。だからなるべく一つづつパチパチッとつぶすように傷に神聖魔法をあてていく。
 あれ?このソバカスも火傷の跡だったんだ。
 ついでだから治しちゃえ。
「兄様、部屋の灯りを少し落として。
 バネッサ、ゆっくりと目をあけて。」
 薄暗い部屋の中なのに眩しそうにゆっくりと目をあけるバネッサ。
「目が慣れてきたら灯りをつけるわね。」
「何?見えてる?」
 兄様が灯りを元の明るさに戻す。
「見えるわ!なんて事!」
 その目からは涙がこぼれ落ちる。
 秘密にしてほしくても、いきなり見えるようになった事をどう言い訳できるだろう。
 とくにバネッサの兄のアーサーには本当の事を言うしかないかな。
 他の人には兄様の提案で王様の治癒師に治してもらった事にした。
 あたしはまた眠くなってしまった。夜だからちょうど良かったじゃない。あのままじゃ寝れなかったもん。
 その時、あたしはまた兄様が寝ずに付き添ってくれてるなんて思いもしていなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

【完結】私は聖女の代用品だったらしい

雨雲レーダー
恋愛
異世界に聖女として召喚された紗月。 元の世界に帰る方法を探してくれるというリュミナス王国の王であるアレクの言葉を信じて、聖女として頑張ろうと決意するが、ある日大学の後輩でもあった天音が真の聖女として召喚されてから全てが変わりはじめ、ついには身に覚えのない罪で荒野に置き去りにされてしまう。 絶望の中で手を差し伸べたのは、隣国グランツ帝国の冷酷な皇帝マティアスだった。 「俺のものになれ」 突然の言葉に唖然とするものの、行く場所も帰る場所もない紗月はしぶしぶ着いて行くことに。 だけど帝国での生活は意外と楽しくて、マティアスもそんなにイヤなやつじゃないのかも? 捨てられた聖女と孤高の皇帝が絆を深めていく一方で、リュミナス王国では次々と異変がおこっていた。 ・完結まで予約投稿済みです。 ・1日3回更新(7時・12時・18時)

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...