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 約束どおり次の日もベッドの上…というか、起きたらまた夕方だった。
 神様ごめんなさい。
 今日も朝のお祈り出来なかったよ。その分夕方にたっぷりお祈りするね。
 王様やバネッサを助ける力をあたしに授けて下さってありがとうございます。
 皆が幸せでいられるのは神様のおかげです。
 ベッドの横で兄様が椅子に腰掛けたまま寝ている。また心配かけちゃったな。
 兄様は優しい。
 本当の妹のようにあたしを大事にしてくれている。
 そして寝ている姿も美しい。  
 まつ毛長ーい。すうっと通った上品な鼻筋。
 いつもはキリッと引き締まった口元だけど寝ている時は無防備ね。でも涎なんか絶対垂れない。いや、垂れていたとしてもそれはそれでセクシーだろう。
 夏だけど夕暮れの山裾は冷え込む。
 毛布を掛けてあげてずっと顔を見ていた。
 まるで芸術作品でも見ているみたいに見飽きないわ。こんなステキな人が前の人生には存在していなかったんだよね。本当に助けて良かった。
 兄様は幸せになって欲しいな。
 婚約者はどうなったのかな?あれから誰かを選んだなんて話も聞かない。
 婚約者ができたら今までみたいにあたしに構ってばかりもいられなくなるんだろうな。
 それはちょっとさみしいかも。
「ん?あ…すまない眠ってしまったようだ。」
「兄様、ごめんなさい。心配かけちゃって。」
「いいんだよ。サラは優しいね。」
 優しく頭を撫でてくれた。
「僕の事より、サラはもう少し自分を大切にしなくちゃいけないよ。
 人の事ばかりじゃなくて自分の為に言いたい事を言ってやりたい事をしなさい。」
「は…い。」
 あたしのやりたい事ってなんだろう。
 人生をやり直すチャンスを単にエディにもう一度会えると喜んでいた。
 今度はエディが幸せになれるようにって。
 だけどその時隣にいるのはあたしじゃない。
 眠れない夜。
 月が明るい。
 誘われるように外にでてみる。
 目の前の湖に月が映り、真っ直ぐに道が出来ていた。
 それは妖精が夜の国へと誘っているのだという。
「あまり近づいてはいけないよ。」
 !
「びっくりした~。」
 第二王子殿下だった。
「夜の国へは一度足を踏み入れたら二度と帰ってこれない。」
「妖精王の虜になってしまうから。」
「踊り疲れて肉体が滅びても、」
「魂は「私を見て」と叫び続ける。
 妖精王の妃の一節ですね。
 意外です。おとぎ話なんて読まれるのですね。」
「不思議な話は好きなんだ。
 夢があるだろう?
 眠れないのかい?」
「あー…昼間に寝すぎちゃって。」
「父上に聞いたよ。
 秘密にするようにって言われたけど、一言お礼が言いたい。
 ありがとう、救ってくれて。」
 頭を下げられた。
 王族はむやみにそんな事をしてはいけないのに。
「臣下として当然の事でございます。」
 こちらも恭しく頭を下げた。


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