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 月明かりの下の第二王子は二割増しイケて見える。
「君は特別な治癒能力があったんだね。」
「いいえ、治癒魔法自体は特別ではありません。
 きっと訓練すれば出来る人は他にもいるはずです。」
「以前から僕は治癒魔法に興味があったんだ。
 外傷を治すのは目に見えてわかるのに、病気の場合は見えないからと広範囲に魔法を使うだろ?だから治療費がとんでもなく高いじゃないか。
 だから君の治療方法を聞いた時、応用したらすごく効率がいいんじゃないかと思ったんだ。」
「はい、その通りです。
 だから魔力の弱い母でも治癒師としてやってこれたんだと思います。」
「君の母君も同じように?」
「はい、私は母から習いました。」
「母君に、協力してもらう事はできないだろうか?治療方法を確立して広く世に広めたいとおもうのだ。」
 こうして後にこの治療方法はローズマリー式治癒魔法として世に広められた。
 二人きりで深夜に会っていたなんて、他の人に見つかったらなんて言われるかわからないから、さっさと部屋に戻った。
 そう言えば前の人生でも第二王子だけはあたしの治療方法に興味を持ってくれていたっけ。
 べたべた体を触るふしだらな治癒師だと言われていたあたしのやり方を教えて欲しいと言ってくれた。
 でもその後すぐに追放になっちゃってそして…。
 まさか第二王子があたしに興味を持ったから殺されちゃった?
 まさかね。
 ヴァイオレットはなんであんなにあたしを恨んでいたんだろう。
 エディの事そんなに好きでもなかったのに嫉妬だけで殺すかな?
 もともとのお話はあんな殺伐とした話じゃなかった。
 平和でのんびりした国の王子様と平民のバカップルが繰り広げるほのぼのとしたお話だった。
 悪役令嬢は婚約破棄されるけど「キーッ!悔しいっ!」ってだけで別に断罪もされなければ死刑にもなってない。
 ヴァイオレットの父親はこの国の宰相をしているけど、原作は武器商人だった。それも悪役を印象付けるためだけの設定で、平和な世界じゃ武器なんてどこに需要が?って感じだった。
 宰相が代わってから、少しずつ国が変わった。
 平民の教育水準を上げるためとか医療を充実させるためとかで、税金が上げられた。
 確かに耳にしただけなら良い事なのだけど、実際はその設備はできても授業料は思ったより高いし、治療費も安くはなったと言われても、貧しい平民にしたらやっぱりまだ高かった。
 貴族は高い税金を納めているというが、それは国に対してで、領民から徴収した税の一部を納めているにすぎない。
 公共事業は増えて労働者の収入も増えたけれど、それ以上に請け負った一部の貴族のほうが儲かっている。
 そして益々選民意識が高まった。
 貴族は貴族で有ることを自覚し、その責務を果たすようにと言われるけれど、義務を果たさず、権利ばかりを主張する。
 前のバカだった私ならそんな事も貴族なんだから当たり前だと思っていた。
 卑しい平民は貧しく、貴族はお金を持っているのは当たり前だと。
 だけど本当にそうだったのかな。
 原作の物語の平民達は裕福では無いにしろ、もっと明るく豊なイメージだ。
 今のこの厳しい現実は当たり前の事なの?
 もしかしたら誰かによって世界は変えられているのではないの?
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