戦鬼は無理なので

あさいゆめ

文字の大きさ
3 / 112

3

しおりを挟む
「毒のせいで記憶障害が起こっているようですね。」
 医者らしき人がそう言った。
 体が思うように動かないのもまだ毒が抜けきっていないかららしい。
「そんな…わたくしの事をお忘れになったとおっしゃるの?ひどい…わたくしの事を想って下さっているとおっしゃったのに…。」
 泣き崩れる聖女。
 えーと、つまり付き合ってたのかな?
「私達、特別な関係だったのですか?」
「そんな事実はございません!」
 すかさずプラチナ美少年が否定した。
 あらやだ、二人の間に火花が見えるみたい。まさかこっちと特別な関係?
 な、わけないか。
 この体の持ち主の記憶は無いはずなのに少しづつ何かわかるような気がしてきた。
 例えば言葉だ。聞いた事の無い言葉なのに意味がわかるし、話せる。
「すみませんが、私の名前を教えてもらえませんか?それと、あなた達のも。」
「あなた様はこのガルディバノン帝国の公爵であり、この度の戦での一番の功労者であるアンカレナ隊の隊長であり私の上官のアレクシオン・テス・セナ・アンカレナ公爵様です。」
 聖女を示し、
「こちらは、聖女のセレスティーナ様。私は部下のテリオス・ジョゼ・シェスティと申します。」
 聖女セレスティーナ?
 ここはまさか死ぬ直前に読んでいた作者不明のネット小説「聖女セレスティーナの祝福を」の世界?
 自分の事を知っている気がしたのは小説で読んだ内容だ。
 だけどおかしいな。
 確かセレスティーナは「日の光に溶けるような蜂蜜色のブロンドに朝露に濡れた若葉のようなエメラルドグリーンの瞳。少女のように可憐でいて女神のような神々しい美しさをもって、まるで地上に降り立った光の精霊そのもののよう。」って話だったけど…。あんまり輝いてないね。
 私がアレクシオンなら聖女と相思相愛じゃなかったっけ?
 そして確か、テリオス君も聖女に想いを寄せていたはず…だから私達が付き合っていると認めたくなかったのかな?
 だけど、何か変。
 中身が私だから聖女にときめかないのはしょうがないけど、それだけじゃないような違和感を感じる。気持ち悪い。
「ごめんなさい…記憶が混乱して。」
 医者が、
「あまり無理をなさらずに、まずはお体の回復からなさったほうがよろしいかと。」
 それにしても、どうしてこんな状態に?今は小説のどのあたりなのかしら?
「私はどうして毒を?」
 テリオス君の話では、
「凱旋パレードで聖女様を庇い、毒矢を受けられたのです。犯人はジグリアの残党で、傷を受けながらも追い詰められましたが、相手がまだ子供だった為か剣を振りおろすのを一瞬躊躇われたようでした。その隙に隠し持っていた短剣で刺されたのです。最悪なことにその剣にも毒が。」
 なんと、小説のエンディングの直後ですと?
 
 
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ユキ・シオン

那月
BL
人間の姿をした、人間ではないもの。 成長過程で動物から人間に変わってしまう”擬人化種”の白猫青年と、16歳年上のオッサンとのお話。 出会ったのは猫カフェ。白猫従業員としての青年と客としてやってきたオッサン。 次に再会したのは青年が人間として通う大学。オッサンは保健室の先生だった。 青年が金のためにヤバいことをしていて、あるトラブルが起こる。 そこへ見計らったかのようにオッサンが飛び込んで救出したのをきっかけに2人の距離は縮まり…… ※表紙絵は自作。本編は進むにつれてどんどん動物園と化します(笑)

生意気な少年は男の遊び道具にされる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

陥落 ー おじさま達に病愛されて ー

ななな
BL
 眉目秀麗、才ある青年が二人のおじさま達から変態的かつ病的に愛されるお話。全九話。  国一番の璃伴士(将棋士)であるリンユゥは、義父に温かい愛情を注がれ、平凡ながらも幸せな日々を過ごしていた。  そんなある日、一人の紳士とリンユゥは対局することになり…。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...