戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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「テリオス卿からだいたいの話しは聞いたけど、信じられないわ。
 もし…もしも、辛い事が多すぎて別人のふりをしたいのなら正直に言っていいのよ?私は協力するわ。」
 この娘が元悪役令嬢?
 そんな感じはまったくしない。兄思いの優しい妹のようだけど。
「ごめんなさい、あなたの大切なお兄様の体を乗っ取るような事になってしまって。」
 首をふるふると降り、
「いいえ、お医者様の話だと生きているのが不思議なくらいの猛毒だったとか…私は目を覚ましてくれただけでも嬉しかったわ。
 それに、こんなこと言って気を悪くなさらないでね。私にはあなたはシオンちゃんに見えるの。
 昔の…幼かった頃のシオンちゃんなの。」
 そう言って子供の頃の話をしてくれた。
「子供の頃の私達はどちらが女の子かわからないって言われるくらいシオンちゃんは可愛いかったの。見た目だけじゃなくって性格も。
 私は活発で負けん気が強かったけど、シオンちゃんは優しくておとなしい子だった。  よくお人形遊びにも付き合ってあげたの。
 ええそう、付き合ってもらったんじゃなくって私が付き合ってあげたの。
 そんなシオンちゃんが変わったのは12歳の時お父様が亡くなってから。
 公爵家の跡取りとしてお母様と私を守らなきゃって、必死だったんだと思う。
 私はまだ幼かったし、お母様は… お父様の死でお心を病んでしまわれたから。
 領地経営は信頼のおける家臣がいたから経済的な心配はなかったけど、学業や剣術を人一倍学び、公爵としての立場を固めようと必死だったわ。
 そして25歳から3年間も戦場に行かされるなんて…その間にお母様もお亡くなりになってしまって、シオンちゃんはどれだけ心を痛めていたことか…。」
 声をつまらせ涙ぐむ。
 公爵といえば貴族の中でも高位のはず。
 裕福でなに不自由無く暮らしていたわけではなかったのね。
「それは、あなたも大変だったでしょう?」
 首を横に振り、
「いいえ、私には束の間とはいえ支えてくれた夫がいたもの。亡くなった今でも夫は私の心の支えだわ。」
 彼女の夫も戦に駆り出され、悲しいことに命を落とした。
 大恋愛の末、公爵家より地位の低いローサン伯爵家に嫁いだが、夫が死ぬと両親はその弟に爵位を譲ると言い出した。
 だがアレクサンドリアの美しい容姿と公爵家の後見と持参金、なにより彼女自身が持つ財産が惜しかったのだろう、よりによって弟の妻になれと言ってきた。
「夫のいないローサン伯爵家になんの魅力が?私は実家に帰らせていただきます。」
「ハッ、こぶつきの出戻りなど、どんな扱いを受けると思っているんだ?俺の妻になれば子供達も悪いようにはしないよ?まあ、後を継ぐのは俺とお前の子供だかな。」
 いやらしい笑みを浮かべ迫ってきたからキン◯◯を蹴り上げて逃げてきたのだと。
 
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