戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 テリオス君は自分の事を語り始めた。
「侯爵家の三男に生まれた僕は自分の地位は自分で手に入れなければなりませんでした。
 幸い身体能力は高く風の加護もありました。
 それならば、戦争で手柄を挙げるのが手っ取り早いでしょう。
 まだ若いと前線に就くことは回りの人からは反対されましたが、僕は自分の力を過信していました。
 そしてそこにはあなたがいました。
 戦争が終わればまた近衛隊に戻ることでしょう。
 近衛と言えば騎士の中でもエリート。さらに僕は容姿も家柄にも恵まれていましたから、そこであなたに取り入れば側近として迎え入れてもらえると。
 案の定まんまと僕は選ばれましたよ。
 戦争中は女性のかわりに見た目の綺麗な男を側に置き、性欲の捌け口にするとも聞いていました。それでもいいという覚悟もありました。
 ですが、アレクシオン様は一切そのような事はされませんでした。
 僕は益々自惚れましたね。僕の実力を買って側に置いてもらえているんだと。
 でもその自信はすぐに粉々にされました。
 天才剣士と持て囃されてはいても所詮は仲間同士の試合。自分を殺そうと向かってくる相手にはまるで歯が立ちませんでしたよ。
 アレクシオン様はいつも先頭に立ち敵を薙ぎ倒しますが、大剣は間合いを詰められると不利になります。背中を任せていたのはマーレンさんでした。短い双剣は接近戦に向いていましたからアレクシオン様の間合いに入った敵はマーレンさんが踊るように軽い身のこなしで討ち取っていきました。
 僕はといえば他の兵士に混ざり二人が討ち漏らした雑魚を片付けることです。…雑魚なんて言い方も怒られますね。アレクシオン様は敵にも敬意をはらっておられましたから。
 戦いが終わればまず味方の負傷者を確認し、部下の治療を優先させいつも自分のことは後回しでした。薬が足りない時はたいしたことはないと、そのままにされることも。
 皆、それが当たり前だと。
 誰よりも傷ついていたのはアレクシオン様だったのに。
 …馬鹿でしたね…傷つき血を流して痛くないはずなどないのに…。」
 背中ごしに肩に手をかけ涙声で自責の告白をしている。
 でも私はなぜかアレクシオンの気持ちがわかる気がする。
 振り向きテリオス君の手を握る。
 頬を伝う涙を見て抱き締めたい衝動が込み上げたがぐっと堪えた。
「自分を責めないで。私が言うことじゃないけど、もし私に守る力があるとしたら皆を守るため傷ついた事は後悔はしないよ、だって守れなかったほうがもっと後悔するもの。
 だから、アレクシオンはあなたが綺麗な身体でいてくれて嬉しいと思う。」
 私は嬉しい。
「…そう…ですね。アレクシオン様ならそうおっしゃるでしょうね。」
 無理してちょっと微笑む。
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