戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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  テリオス視点

 毒に侵され、意識の無いアレクシオン様に付き添い公爵邸に入った。
 僕の二学年年上のアレクサンドリア様と聖女セレスティーナは学園でも有名人で、この二人のいざこざの噂も聞いていた。
 だが、戦場での聖女の行動で僕ははっきり確信した。
 アレクサンドリア様は被害者だと。そして、
「お願い、聖女が来てもお兄様と絶対二人きりにはさせないで、絶対よ!」
 案の定聖女は毎日来ては使用人達に二人は特別な関係だとアピールした。
 だが、使用人達もアレクサンドリア様の受けた仕打ちを知っている。なぜ自分の味方に出来るなどと思っているのか?
 そして一向に回復の兆しを見せないアレクシオン様。
 僕はこの人に何を望んでいるのだろう。
 出世の足掛かり?実力を認めて欲しい?それとも高潔なあなたが惨めに朽ちてゆく姿を眺め内心は喜んでいるのか?
 僕はどんな顔をしてあなたを見ている?醜く歪んでいるのではないか?この心と同じように。
 早く目覚めて下さい。
 この気持ちが何なのか。
 この涙の意味は何なのか。
 あなたが生きていないとわからないままだ。
 あなたがいないと前に進めない。
 10日目、僕は歓喜した。
 もう駄目なのかもしれない半ば諦めていた頃目覚めたのだ。
 だが、目覚めたのは元のアレクシオン様ではなく別人だと言う。
 確かにアレクシオン様では考えられない言動が見られる。
 それでもいい。とにかく目覚めてくれたことがこの上なく嬉しかった。もしかしたら何かの拍子でまた元のアレクシオン様に戻る可能性もあるだろう。
 そう思い彼(彼女)の世話をした。
 だがあの戦鬼と呼ばれた隊長が弱った身体で僕を信用し、頼りにするなんて。
 ぞくぞくする。
 筋肉が萎え、痩せ細ってもなお均整のとれた肉体は美しかった。
 身体中の傷痕さえも艶かしい色気を醸し出して。
 自由に動かす事もできない彼の身体を拭きながら自身が火照るのを感じていた。
 ああ…僕はまた醜い自分の心を恥ながらお側にいることとなるのだ。
 そんな僕の邪な本性も知らずに毎日のように感謝の言葉をくれる。
 それは他の使用人に対してもだった。
 執事を除いた使用人達には別人ではなく、単なる記憶喪失と伝えてあった。
 公爵家の侍女は貴族が多い。アレクシオン様の妻の座を狙おうとすれば出来る身分だ。
 以前のアレクシオン様ならば高潔で隙が無く、主と使用人という分別がはっきりしていたはずだ。
 だが今はどうだ?「ありがとう。」とにっこり微笑む彼を見て頬を赤らめ恥じらう勘違い女のなんと多いことか。
 僕は秘密保持のためアレクシオン様に近づく使用人は最低限にしてもらった。

 
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