戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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「あ…所々思い出す事もあるんです。」
 そんなエピソードもあったのかもしれないな。
「シオンと呼んでもいいのか?」
「?別にかまいませんけど。」
「そうか…シオン…シオン…。」
 どうしたんだろう?
 嬉しいの?
 微笑みながら左手を肩に回し、右手は私の手を握る。常に距離感おかしいでしょ?
「知らないだろうが、私の初恋は君だったんだ。」
 いや、こんな所に連れ込んで何のカミングアウト?
「サンディが私の婚約者だと聞いて何でシオンじゃ駄目なのかと母上を困らせたのを覚えているよ。」
 これ逢い引きなの?
 握った手の指を絡めたり首筋を撫でたりされながらソファーの端まで追い詰められた。綺麗な顔がすぐ目の前に迫って…ヤバい、ドキドキする。
「あ…あの、近いんですけど。」
「嫌か?」
 嫌じゃない。皇子様にこんなことされてときめかないわけがない。
 いい匂いするし。口臭までいい匂いするしっ!
 ただ私男だし。借り物の身体だし。
 でも、
「嫌じゃないですけど。」
「そうか…。」
 ふっと顔が近づき唇が触れた。
「っ!はあっ?キスしていいなんて言ってないですけど!」
 思わず大声が出た。
「どうされました?」
 慌てたテリオス君がカーテンを開けた。
「あ、あああ何でもない!何でもないからっ!」
 クスクスと笑うマティアス殿下。
 くそっ、からかわれた?
「まあっ!お二人ともこんな所にいらっしゃったの?ダンスはなさらないの?わたくし…ファーストダンスを踊っていただける方が…。」
 聖女だ。
 ドレスのスカートをぎゅっと握りしめうつむく。また察してか。
 結局聖騎士の一人にエスコートしてもらって遅れて来たみたい。だったら聖騎士と踊ればいいのに。
 聖騎士はここまで都合のいいように扱われてなんともないのかな?
「あー…あっ!昨日足の爪を深爪してしまってね。もう、痛くて。」
 マティアス殿下、わざとらしいです。
「ごめんなさい。私はまだ歩くのがやっとで踊るのは無理です。」
 キッとテリオス君を見る。
「僕は動けないアレクシオン様を補佐しなくてはなりませんから。」
 冷たい表情で一瞥する。そんな顔されるのはわかってるじゃない。
 メンタル強すぎか。
「ご一緒された騎士の方と踊られては?」
 普通はファーストダンスはエスコートされた人とするもんじゃないの?
「ひどい…平民は平民同士がお似合いだとおっしゃいたいのね…。」
 騎士の人平民なんだ。
 平民だから嫌なのね。
 そこへファーストダンスを終えたサンディがやって来た。
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