戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 幼い頃はそれが恋心だとはわからなかった。
 年頃になると自分の性的対象が同性だと気づいた。
 美しい女性に目を奪われる事はあっても憧れであって恋愛対象ではなかった。
 そんな自分を認めたくなくて身体を鍛えた。
 父の前公爵が亡くなってからはさらに自分を追い込んだ。
 この恋が叶う事はあり得ないし望んでもいない。
 ただ殿下をお守りし、お側に居られればそれで良かったはずなのに。
 辛かった。
 戦場で先陣をきっていたのも多少自暴自棄になっていたからだ。
 本当は殺したくはなかったが、強さを見せつける事で怯み死に急ぐ者は減る。
 殺して、殺して、殺して。
 戦争は終結したがアレクシオンの心も死んでいた。
 もう殿下の事もどうでも良かった。
 ただ休みたかった。
 だけど平静を装う事が出来てしまうアレクシオンの異変には誰も気づかなかった。
 聖女の暗示能力も知った上で一緒に暮らしてもいいと思えるほど、楽になりたかった。
 なんてかわいそうな人。
 だけどその晩見た夢は、血だらけで泣いていたのは私だった。
 アレクシオンは…あんたまた少し綺麗になってない?
 あんまり心配そうに見てるから「大丈夫だよ。」と、そう言った声は低くハスキーで血に濡れた両手は節が太く大きな男の手。
 私はもうアレクシオンの姿を自分として認識している。
 何か言いたい事があるの?
 唇は動いているけど声は聞こえない。
 何?
 私を指差し、自分も指差す。差した指をひとつに重ねる。
 私とあなたは一人?
《そう。》
 え?頭の中に声が響く。
《やっと話せた。でも、もうすぐ私は消えます。》
 それは助かるけど、こうやって夢に出てくるって事は何か意味があるんでしょ?
《私は君がこの身体に入る前に確かに死んだのです。ここにいるのはほんの少しの魂の欠片。その欠片も、もう君の魂に溶けてしまうようです。
 お詫びとお礼を伝えたくて、話しかけるのもこれが最初で最後だから許してほしい。
 どうしてこんな事になったかは私にもわからないのですが、女性である君がこんな身体に憑依させられたことをお詫びします。
 ですが君が私として生きてくれた事で私は救われました。
 人を殺す事嫌だと泣いてくれた。
 マティアス殿下に優しくされた。
 侍女と手芸をしたり、お茶を楽しんだり。
 些細な事だけれど私はそんなふうに生きたかった。
 これからも君の生きたいように生きて下さい。
 忘れないで、君の感情は君のものだから。
 私の記憶はただの記憶でしかないのです。》
 …言いたい事だけ言って消えた。
 というか目が覚めた。
 
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