戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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   リタ視点

 あの時マティアス殿下をお助けする為、馬を走らせたけれどなんて無謀だったのかしら?
 そもそもわたくしが行かずともアレクシオン様がお側にいらっしゃったから大丈夫だったのではないかしら?
 ああ…アレクシオン様。
 馬が突風に驚きわたくしを投げ出した時。
 一陣の風が舞い上がりわたくしを宙に浮かべ、そっとアレクシオン様の腕の中へ…。
 抱き止められて知った。
 儚げな佇まいとは裏腹に、見かけよりも広い肩幅に厚い胸板。
 あのような緊迫した状況でしたのにわたくしは不謹慎にも胸を高鳴らせてしまいました。
 だってしょうがないじゃない?
 わたくしの回りの殿方といったらお年を召したお父様とモヤシのお兄様しかいないんですもの!
 初めて触った殿方があんな上物なんて、もうときめくしかないじゃありませんこと?
 知ってますよ。こういうの吊り橋効果とかいうんですよね。ドキドキが恋と勘違いしちゃうんですのよね。
 ドキドキが…ああ、ドキドキが止まらない!
 聞けば先だっての戦いでまたお倒れになったそう。
 お見舞いに…いいえ、ご迷惑だわ。
 でも助けていただいたお礼になら!
 ううっ、浅ましいわ。ただお会いしたいだけの言い訳を考えるなんて。
 これが恋ってものなの?
 でもアレクシオン様はマティアス殿下の恋人よ。
 わたくしは二人の間に割って入る資格など無いわ。
 ただお会いしたいだけ。
 見るだけでもいいの。
 …って!わたくし殿下の婚約者じゃないの!
 めちゃくちゃ割って入ってますわ!
 どの面下げて会いに行こうっていうのよ!
 ああああああーー!
 なんか悶々と考えてるうちに手土産買って公爵邸に来ちゃいましたわ。
 どうしましょう。
『この薄汚いメス猫がマティアス殿下の婚約者?
 笑わせるな。
 貴様など助けるべきでは無かった。
 馬に蹴られて死ねば良かったのに。』
 なんて言われてお茶を掛けられてもしかたがありませんのに。
 あっさりと、客間に通された。
「お待たせして申し訳ございません。」
 アレクシオン様、ラフな装いもお美しい。
「突然の訪問お許しいただきありがとうございます。
 ご挨拶申し上げます。リタ・シャルドネアでございます。
 先日は危ない所を助けていただきありがとうございました。」
「いいえ、咄嗟の事とはいえ不用意にお身体に触れ、申し訳ございませんでした。」
 やだ、思い出すと顔が火照ってしまう。
 執事姿のテリオス卿が睨んでますわ。
 戦場で部下だった卿を気に入りそのままお側に置いているそう。やっぱり戦場ではそういうご関係だったのかしら?
 だってこの美しさですもの。
 やっぱりアレクシオン様×テリオス卿かしら?
 ああっ、いけないわ。いつもの癖が、
「あっ、あの。これ、お口に合えばよろしいのですが、人気のお菓子なんです。」
「ケーキですね。」
「ご存じなんですか?すっごく美味しいですよね。」
 なんでしょう?侍女達がニコニコしてますわ。
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