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テリオス視点
厚顔無恥とはあの女の事を言うのだろう。
マティアス殿下の婚約者でありながらシオン様に会いに来るとは。
大方マティアス殿下と何かと噂されるシオン様に探りを入れるためだろうと追い返そうとしたのに、女の子を追い返すなんて可哀想だからとお会いになるなんて。
なんの取り柄もなさそうな額の広い女。
だが、あの女のシオン様を見る目。あれは恋する女の目だ。
そういえば賊に襲われた時も見ていたな。
シオン様の戦う姿に心を奪われたか?
悟られまいとしているが、シオン様はマティアス殿下をお慕いしている。
殿下の婚約者である令嬢をどんな思いで見ているのだろう。
一見和やかにお茶を楽しんでおられるようだけれど、心中穏やかでは無いはず。
なのに、そんな目で見るな。あばずれめ。
婚約パーティーでも殿下とお揃いの衣装を着ておきながらシオン様に熱い視線をむけていた。恥知らず。
ああ、シオン様は一人になりたいのかお庭に向かわれたようだ。
早く後を追わねばならないのに、父上の話は長い!
きっとお一人で悲しみにくれていらっしゃるはず。
可哀想なシオン様をお慰めしないと。
ククッ、笑いが込み上げる。
もっと苦しめばいい。
「おい、テリオス聞いているのか?せっかくスミス伯爵家が婿にと申し出てくれたのだぞ?」
またその話か。
「申し訳ございません。その話はお断りしたはずです。主を一人にはできませんので、これで失礼いたします。」
先を歩くのはフィリップ卿。まさか殿下もこちらに?
ああ、遅かったか。
肩を落としたシオン様はきっと惨めでそそられる事だろうと期待していたのに。
馬車の中でも平然を装う。
マティアス殿下の移り香が鼻につく。
きっとまたシオン様にべたべた触ったのだろう。
「お辛いですか?」
苦しめばいい。
「何が?」
「殿下の事をお慕いしていらっしゃるかと…。」
僕の前で泣けばいいのに。
「慕っていたとしてどうにかなるものじゃないでしょう。」
それはそうだけどすました顔をやめて弱い所を晒して、僕の前だけでは他人には見せない顔を見せてくれたらいいのに。
「僕はずっとお側にいますから。僕にはあたってもいいんですよ?多少の暴力なら耐えられます。」
「そんな事しないよ?」
「殿下の悪口だって聞きますよ?」
「殿下は悪くないから。」
「どうしてそういい人ぶるのですか?」
イライラする。
「殿下には幸せになって欲しいと思っているよ。」
「…僕はシオン様が嫌いです。」
中の人が変わったはずなのに、なぜ以前と同じように高潔なのですか。
いきなり嫌いだと言われきょとんとした顔で、
「なんで?」
「そういう所です。
使用人に嫌いだと言われたら怒ればいいじゃないですか。
なぜそんなにもいい人でいようとするのですか?
シオン様を見ていると、僕はどんどん自分の醜悪さを思い知らされ、自分が嫌いになります。」
「綺麗だよ?」
「見た目だけです。
心の中では羨望と嫉妬で常に悪態をついてます。
シオン様は誰かを憎んだり嫌いに思うことはないように見受けられます。」
「そんな事は無いよ。
人は誰だって醜い心も持っているものだよ。
私がいい人に見えるのはそうあろうと、つとめているからだ。好きな人達には嫌われたくないでしょ?」
好きな人達には僕も含まれるのだろうか?
「僕の本心を知れば嫌いになりますよ。」
「そうかもね。
でもテリオス君はいつも私の気持ちや体調を察して先に動いてくれるよね。ありがたいって思ってる。
正直テリオス君がいなかったら生きていけなかったかもしれないから、君がどんな人でもきっと真底嫌いにはなれないよ。」
顔が火照る。
僕は何を喜んでいるんだ。
厚顔無恥とはあの女の事を言うのだろう。
マティアス殿下の婚約者でありながらシオン様に会いに来るとは。
大方マティアス殿下と何かと噂されるシオン様に探りを入れるためだろうと追い返そうとしたのに、女の子を追い返すなんて可哀想だからとお会いになるなんて。
なんの取り柄もなさそうな額の広い女。
だが、あの女のシオン様を見る目。あれは恋する女の目だ。
そういえば賊に襲われた時も見ていたな。
シオン様の戦う姿に心を奪われたか?
悟られまいとしているが、シオン様はマティアス殿下をお慕いしている。
殿下の婚約者である令嬢をどんな思いで見ているのだろう。
一見和やかにお茶を楽しんでおられるようだけれど、心中穏やかでは無いはず。
なのに、そんな目で見るな。あばずれめ。
婚約パーティーでも殿下とお揃いの衣装を着ておきながらシオン様に熱い視線をむけていた。恥知らず。
ああ、シオン様は一人になりたいのかお庭に向かわれたようだ。
早く後を追わねばならないのに、父上の話は長い!
きっとお一人で悲しみにくれていらっしゃるはず。
可哀想なシオン様をお慰めしないと。
ククッ、笑いが込み上げる。
もっと苦しめばいい。
「おい、テリオス聞いているのか?せっかくスミス伯爵家が婿にと申し出てくれたのだぞ?」
またその話か。
「申し訳ございません。その話はお断りしたはずです。主を一人にはできませんので、これで失礼いたします。」
先を歩くのはフィリップ卿。まさか殿下もこちらに?
ああ、遅かったか。
肩を落としたシオン様はきっと惨めでそそられる事だろうと期待していたのに。
馬車の中でも平然を装う。
マティアス殿下の移り香が鼻につく。
きっとまたシオン様にべたべた触ったのだろう。
「お辛いですか?」
苦しめばいい。
「何が?」
「殿下の事をお慕いしていらっしゃるかと…。」
僕の前で泣けばいいのに。
「慕っていたとしてどうにかなるものじゃないでしょう。」
それはそうだけどすました顔をやめて弱い所を晒して、僕の前だけでは他人には見せない顔を見せてくれたらいいのに。
「僕はずっとお側にいますから。僕にはあたってもいいんですよ?多少の暴力なら耐えられます。」
「そんな事しないよ?」
「殿下の悪口だって聞きますよ?」
「殿下は悪くないから。」
「どうしてそういい人ぶるのですか?」
イライラする。
「殿下には幸せになって欲しいと思っているよ。」
「…僕はシオン様が嫌いです。」
中の人が変わったはずなのに、なぜ以前と同じように高潔なのですか。
いきなり嫌いだと言われきょとんとした顔で、
「なんで?」
「そういう所です。
使用人に嫌いだと言われたら怒ればいいじゃないですか。
なぜそんなにもいい人でいようとするのですか?
シオン様を見ていると、僕はどんどん自分の醜悪さを思い知らされ、自分が嫌いになります。」
「綺麗だよ?」
「見た目だけです。
心の中では羨望と嫉妬で常に悪態をついてます。
シオン様は誰かを憎んだり嫌いに思うことはないように見受けられます。」
「そんな事は無いよ。
人は誰だって醜い心も持っているものだよ。
私がいい人に見えるのはそうあろうと、つとめているからだ。好きな人達には嫌われたくないでしょ?」
好きな人達には僕も含まれるのだろうか?
「僕の本心を知れば嫌いになりますよ。」
「そうかもね。
でもテリオス君はいつも私の気持ちや体調を察して先に動いてくれるよね。ありがたいって思ってる。
正直テリオス君がいなかったら生きていけなかったかもしれないから、君がどんな人でもきっと真底嫌いにはなれないよ。」
顔が火照る。
僕は何を喜んでいるんだ。
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