戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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   マティアス視点

「シオンちゃんは、ずっとあんたの為に勉強して剣を覚えて、あんたの為に人を殺して。
 初めて人を斬った日、吐いて何日も食事が出来なかった事なんて知らないんでしょう?
 そして泣かなくなって、笑わなくなって。
 戦場で血を流している時もあんたは首都でのうのうと暖かい布団にくるまれていたんでしょう? あんたなんか…
 大嫌いよ。」
 あ…あ、なんという事だ。
 私は愚かだ。
 守られ皆にお膳立てされこの場にいるのに、自分だけが苦しんでいるかのように嘆いているなど。
 こんな愚かな私をシオンは想ってくれていたのか?
「…嘘よ。
 ごめんなさい。
 マティの立場じゃしょうがないのはわかっていたの。
 わたくしも同罪よ。
 自分に腹が立って、あたったわ。
 なんとかシオンちゃんの役に立って支えてあげたかったけれど、わたくしじゃだめだっただけ。
 わたくしもずっと守られてきたわ。
 自分勝手に好き放題生きてこれたのはシオンちゃんのおかげよ。
 シオンちゃんに力が無かったらきっと皇族派の貴族達に都合のいいように使われる、名前だけの公爵家になっていたわ。
 わたくしだって政略結婚するしかなかった事でしょう。
 マティとの婚約解消もシオンちゃんが前皇帝に頭を下げてくれたからよ。わたくし達がいくら嫌だからといっても皇族との婚約解消などそう簡単にはいかないことくらいわかってる。
 あんたは…リタと幸せになればいいわ。
 皮肉じゃないわよ。
 わたくし、マティもリタも本当は好きだもの。」
 サンディは言うだけ言って帰った。
 私は何も言えなかった。
 正解がわからない。
 とりあえず目の前の仕事の山を片付けねばならないのにいっこうに作業が進まない。
 常に皇族として正しくあろうとしていた。
 今も私の選択も行動も間違ってはいないはずだ。
 なのにこの虚しさは何だ?
 シオンが言ったようにいずれ一時の気の迷いだと思う日が来るのか?
 こんなに会いたいのに。
 そういえはテリオス卿がどうとかと言っていたが…どうするというのだ?
 まさかリタが書いていた物語のような淫らな行為をしているという事なのか?
 私は?
 私はシオンにそんな事は…そんな事はしない。
 ただ好きなだけだ。
 ただ好きなだけ?
 好きでいるだけなら後ろめたい事など何もないはずではないか。
 あんな…あんな…事。
 リタの話しを思い出すと身体が熱くなる。
 シオンはどんな顔をするだろう…甘くかすれた声をあげるのだろうか。
 一度だけ軽く触れた唇の感触は思い出そうとしてももう思い出せない。 
 こんな…シオンを汚すような事はしてはならないのに…右手で硬くなったものを握りしめ動かす事が止まらない。
 
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